阪神JFを制して「2歳女王」の座に就いたのはサークルオブライフだった 今年も3歳春のクラシックシーズンを迎える。まずは、…

阪神JFを制して
「2歳女王」の座に就いたのはサークルオブライフだった
今年も3歳春のクラシックシーズンを迎える。まずは、牝馬の戦い。第1弾のGI桜花賞(阪神・芝1600m)が4月10日に行なわれる。
例年同様、今年も実力的に差のない有力馬が何頭かいるうえ、未知なる可能性を秘めた伏兵陣も多数控えており、激戦必至の様相だ。世代の頂点に立つのはどの馬か。それを見極めることは、非常に難解を極める。
そうした状況を鑑みれば、今年もまた、競走馬の分析に長(た)けた専門家の見解を事前に聞いておくべきだろう。
そこで今年も、元ジョッキーの安藤勝己氏を直撃。桜花賞、さらにはGIオークス(5月22日/東京・芝2400m)と、牝馬クラシックに挑む面々の実力診断を依頼した。そのうえで、独自の視点による「3歳牝馬番付」を選定してもらった――。


横綱:ナミュール(牝3歳)
(父ハービンジャー/戦績:4戦3勝、着外1回)
前走のGIIチューリップ賞(1着。3月5日/阪神・芝1600m)が、強い競馬だった。道中はスムーズではなかったし、最後の直線でも窮屈になるところがあった。それでも、前が開いてから使った脚がすごかった。
あの終(しま)いの脚は一級品。決していいレースをしたとは言えないのに、最後はきっちり差しきって勝ってしまうのだから大したもの。そのレースぶりからしても、この馬が横綱でいいと思う。
昨年末、1番人気に推されたGI阪神ジュベナイルフィリーズ(4着。12月12日/阪神・芝1600m)で負けたのは、出遅れたことよりも、前走からの間隔が詰まっていたことが要因。馬がイライラしているように見えた。
桜花賞は間違いなく勝ち負けになるだろう。距離延長も問題なさそうだから、オークスも有力視されるが、馬体の迫力が欠ける点が少し気になる。
大関:サークルオブライフ(牝3歳)
(父エピファネイア/戦績:5戦3勝、3着2回)
完成度ではこの馬が一番。阪神JFを快勝しているように、能力は確かだし、レースぶりも安定している。そうした評価から、大関より下に見ることはできない。
前走のチューリップ賞で3着に負けたのは、前に行きすぎたから。本番を前にして、鞍上のミルコ・デムーロ騎手があの競馬でどれだけ脚が使えるか、試しているという感じだった。
それで結果が出なかったので、桜花賞では同じ競馬をすることはないだろう。阪神JFの時のように、終いを生かす競馬に徹するはず。その競馬であれば、凡走は考えづらい。
ただ、血統的に見ても、この馬は桜花賞よりも"オークス向き"という印象がある。
張出大関:プレサージュリフト(牝3歳)
(父ハービンジャー/戦績:2戦2勝)
大関に挙げたサークルオブライフと比べて、能力的に甲乙つけ難い存在。よって、この馬は張出大関としたい。
何より、前走のGIIIクイーンC(2月12日/東京・芝1600m)の末脚が見事だった。あのキレ方を見ると、父ハービンジャーよりも母父ディープインパクトの影響が強く出ているような気がする。
懸念されるのは、キャリアがわずか2戦。しかも、東京コースしか走ったことがないこと。それゆえ、桜花賞でどうか? という一抹の不安がある。
しかしその一方で、そうした心配を一切問題にしない能力を秘めているようにも思う。少なくとも、先に名前を挙げた2頭よりも"奥"がありそう。
東京・芝2400mという舞台も何ら問題ないだろうから、桜花賞次第ではオークスでの楽しみが一段と膨らむ。
関脇:ライラック(牝3歳)
(父オルフェーヴル/戦績:3戦2勝、着外1回)
この時期に「クラシック候補」と言われる馬たちの評価において悩ましいのは、重賞やオープンレースを勝った馬が、本当に強いのか、たまたまハマッただけなのか、それを見極めること。この馬の前走、GIIIフェアリーS(1月10日/中山・芝1600m)は、まさしくそんな一戦だった。
同レースで、同馬は出遅れ。最後方からの競馬となった。それでも、道中で徐々にポジションを上げていって、最後は大外をブン回しながらも差しきり勝ち。この勝ち方があまりにも鮮やかだった。
それゆえ、ハマッた感が強い。その点において、信用しきれないところがあるのは確かだが、あの脚が使えることは事実。混戦で浮上するのは、こういうタイプだ。
なお、この馬もサークルオブライフやプレサージュリフトと同じく、桜花賞よりもオークスのほうが面白いと思う。
小結:スターズオンアース(牝3歳)
(父ドゥラメンテ/戦績:5戦1勝、2着3回、3着1回)
ここまで5戦して、勝ったのは一度だけ。しかしながら、すべて3着以内。それも、ナミュールやプレサージュリフトなど強い面々を戦って善戦している。能力はあるものの、勝ちきるためには、あとひと押しが足りないタイプと言える。
自分にも経験があるが、こういう馬に乗る時は「また勝てないだろう」という意識が潜在的に残っていて、騎手は無理に勝ちにいこうとしないもの。その分、無欲で、その馬の力だけは発揮させようとする。
時に、その"無欲"が波乱を起こし、思わぬ結果をもたらすことがある。この馬にも、そういうラッキーが巡ってくるかどうか。桜花賞でも、オークスでも掲示板(5着以内)に入る力はあると思うが、はたして......。
◆ ◆ ◆
今年の3歳牝馬は粒ぞろいだが、抜けた存在がいない。つまり"混戦"ということだ。
とはいえ、上位の馬たちのポテンシャルは高く、その実力は例年(の上位馬)と比べても遜色はない。とりわけ、上位3頭が強いのは明白。桜花賞では、これら上位にいる馬たちの争いとなって、個人的には"荒れない"と見ている。
翻(ひるがえ)って、オークスはどうなるかわからない。抜けた馬がいない分、(オークスを前にして)勢力図の大転換もあり得る。
その場合、現有勢力が急激に力をつけて、という可能性は低いだろう。桜花賞には出てこない別路線組から、主役として台頭する存在が出てくるのではないか。
そういう意味では、オークスではトライアル組に注視すべき。そのレースぶりをきちんとチェックしておきたい。
安藤勝己(あんどう・かつみ)
1960年3月28日生まれ。愛知県出身。2003年、地方競馬・笠松競馬場から中央競馬(JRA)に移籍。鮮やかな手綱さばきでファンを魅了し、「アンカツ」の愛称で親しまれた。キングカメハメハをはじめ、ダイワメジャー、ダイワスカーレット、ブエナビスタなど、多くの名馬にも騎乗。数々のビッグタイトルを手にした。2013年1月31日、現役を引退。騎手生活通算4464勝、うちJRA通算1111勝(GI=22勝)。現在は競馬評論家として精力的に活動している。