スマホゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」の舞台となる「トレセン学園」。人間で言うところの中高一貫校だが、実は特例とし…

 スマホゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」の舞台となる「トレセン学園」。人間で言うところの中高一貫校だが、実は特例として「飛び級」も存在する。作中で唯一、その飛び級を受けているのが「天才少女」ニシノフラワーだ。飛び級であることから、周囲のウマ娘たちと比較してニシノフラワーはまだ幼い。当然、周囲のウマ娘より体は小さく、身長135cmと、登場するなかでは最も小柄なウマ娘である。



1992年の桜花賞、1番人気に応える形でレースを制したニシノフラワー(写真左)

 アニメ作中でのエピソードはまだないが、ゲーム中ではマイル~短距離路線での強力なライバルとして登場する。なかでもサクラバクシンオーの育成シナリオ中では再三現れ、特にGIスプリンターズステークス(中山・芝1200m)などでは、ゴール前で逃げ込みを図るところにズバっと差してくる。

 史実のニシノフラワーも、4歳(旧表記、以下同)の後半からサクラバクシンオーや、作品には登場しないがヤマニンゼファーとの名勝負を繰り広げた。しかし、4歳クラシックまでは、別のライバルの存在があった。

 ニシノフラワーは、デビュー前から評価が高かったわけではなく、むしろ自身の走りで評価を高めた馬だった。デビュー戦の3歳新馬戦(札幌・ダート1000m)、2戦目のGIII札幌3歳ステークス(旧表記/札幌・芝1200m)はともに4番人気と、どちらかといえば単穴的な評価。にも関わらず、デビュー戦が4馬身差、2戦目が3馬身半差という圧倒的な走りを見せ、3戦目のGIIデイリー杯3歳ステークス(京都・芝1400m)も3馬身半差で快勝すると、いよいよ作中における「天才少女」のような存在へとなっていく。

 3戦無敗で臨んだGI阪神3歳牝馬ステークス(現・阪神ジュベナイルフィリーズ/阪神・芝1600m)では、単勝1.9倍の圧倒的支持を集めると、道中は好位追走から直線で抜け出し、3番人気サンエイサンキュー、2番人気シンコウラブリイの2頭の関東からの刺客を抑えて勝利。4戦無敗の堂々たる成績でこの世代の3歳女王となった。

 この頃になると、「この馬に敵う同世代の馬はいない」という絶対的な評価を集めるようになっていた。もちろんレースぶりもさることながら、前年リニューアルされた阪神競馬場での最初のGI馬になったことや、阪神3歳Sが牝馬限定となっての初代勝ち馬であったこと、まだ外国産馬優勢だった時代の"持ち込み馬"、しかも母の父が快速を誇る当時の名種牡馬ダンチヒということが評価の上乗せ要素となっていたことも大きかった。

 そうして迎えた4歳初戦、陣営はGI桜花賞(阪神・芝1600m)を見据えて、当時は桜花賞指定オープン特別だったチューリップ賞(阪神・芝1600m)にニシノフラワーを出走させる。今でこそ、チューリップ賞は桜花賞に向けての最も理想的とされるステップレースであるが、当時はGII報知杯4歳牝馬特別(現・フィリーズレビュー/阪神・芝1400m)が桜花賞の前哨戦としての主流だった。なので、GI馬が4歳初戦にオープン特別を選んでくること自体が異例でもあり、「オープン特別では格が違う」という先入観から、単勝1.2倍の超断然評価でレースを迎えた。

 しかし、ここで立ちはだかったのが、最初のライバルとなるアドラーブルだった。ニシノフラワーは先を見据えて馬群のなかで控える形でレースを進めたが、これが仇となり、4コーナーでは出し所を失って後方に押し込まれてしまう。その間に外から一気に進出したアドラーブルが抜け出し、ニシノフラワーもどうにか追いすがるも、3馬身半差の完敗だった。

 実は、アドラーブルとは札幌3歳Sで対戦していた。当時はアドラーブルの方が2番人気と人気では上回っていたが9着に敗戦。しかし、このチューリップ賞では3番人気での雪辱となった。

 一方のニシノフラワー陣営は、レース運びに敗因を求めた。その結果、ここまで主戦だった佐藤正雄の鞍上を、ここまで桜花賞3勝の河内洋に譲ることとなった。

 迎えた桜花賞でニシノフラワーは1番人気だったが、アドラーブルは前走がむしろフロック視され、6番人気。レース展開は、これまでと一転してニシノフラワーが先行策を取り、4コーナーで先頭に並ぶと、そこへ並びかけてきたアドラーブルを直線で突き放して、ふたつ目のGIタイトルを手にした。

 続くGI優駿牝馬(東京・芝2400m)ではアドラーブルが勝利し、ニシノフラワーは7着で敗戦。秋の4歳牝馬GI最終戦のGIエリザベス女王杯(京都・芝2400m)は、タケノベルベットの前にニシノフラワー3着、アドラーブル4着とともに敗れ、これが2頭の最後の対戦となった。

 ニシノフラワーはその後、4歳春までの実績から、短距離~マイル路線に向かい、古馬相手に「飛び級」となる勝利を経て、その中心的存在となっていくのだが、それはまた別の話。

 余談ではあるが、桜花賞ではニシノフラワー420kgに対しアドラーブル408kg、オークスではニシノフラワー428kgに対しアドラーブル410kg。作中では最小柄キャラとなっているニシノフラワーよりも、実はアドラーブルの方がもっと小さかったのである。