思い出の試合として、4位となった平昌五輪をあげた宮原知子 フィギュアスケート女子で「ミス・パーフェクト」と呼ばれた宮原知子が、4月1日、オンラインで記者会見を開き、3月26日の自身の誕生日に発表した現役引退について、自らの言葉であらためて語…



思い出の試合として、4位となった平昌五輪をあげた宮原知子

 フィギュアスケート女子で「ミス・パーフェクト」と呼ばれた宮原知子が、4月1日、オンラインで記者会見を開き、3月26日の自身の誕生日に発表した現役引退について、自らの言葉であらためて語った。

 会見場での宮原は、時折、笑顔を見せながら、とつとつと、だがはっきりとした口調で話し始めた。

「先日発表いたしましたとおり、現役引退を決意いたしました。4歳からスケートを初めて、ただただ無心に滑ってきたんですけれども、気づけば競技者として本格的にスケートをしていて、ノービスからジュニアに上がって、最初はただ楽しくスケートをしていたんですけど、だんだん結果もついてきて、自分を追い込むようになって、苦しい練習も楽しい練習も重ねて毎日を過ごしていました。

 楽しく滑る時期もありましたし、だんだんと修行のように自分を追い詰めてしまう時期もあったかもしれないですけども、自分のスケートを試合でしっかり見せることとか、いい結果を出すということが最大の目標で、自分にとって絶大な達成感をもたらせてくれるものだったので、それを目指して毎日頑張ることができていました。

 最後のシーズンは、これでダメだったらもう辞めようという気持ちでずっと本当に自分と向き合って、毎日毎日、自分のできることを、もうこれ以上はできないと思うぐらい練習をしてシーズンを過ごしたので、本当に最後まで充実したスケート競技人生を送れたと思っています」

 6日前に突然、自身のブログとインスタグラムで引退することを公表。公式ブログには、こう気持ちがつづられていた。

「今シーズン、スケート人生で一番、自分と向き合い、毎日を大切に過ごしてまいりました。これまで以上に、もうこれ以上はできないと納得いくまで練習し、試合に臨んだシーズンでした。私のなかで悔いはなく、やりきったという気持ちでいっぱいです」

 京都出身の24歳。もともとの性格はシャイで生真面目だ。2013‐14シーズンのソチ五輪シーズンにシニア転向した152センチの小柄な選手は、ミックスゾーンで記者に囲まれると、後方にいた記者は顔を見られず、マイクを通した声さえなかなか聞くことができなかった。試合後の会見場で、彼女の発するか細い声の返答に対して、何度も「もう少し大きな声でお願いします!」と、お願いしたほどだ。そういう意味では記者泣かせだったが、誰からも愛された選手でもあった。

思い出の試合となった平昌五輪

 アメリカのヒューストンに住んでいた時に、近くのショッピングモールのスケートリンクで滑ったのが楽しくて、4歳からスケートを始めたという。

 2013年にシニアデビューを果たすと、翌年の全日本選手権から4連覇を達成。ポスト浅田真央と期待され、全日本女王として2015年世界選手権で銀メダル、2016年四大陸選手権優勝など、国内外の大会で活躍が光った。武器は豊富な練習量から誇るミスの少ない演技と豊かな表現力。まさに「ミス・パーフェクト」だった。

 この日の引退会見でも思い出の試合として挙げていたが、悲願の初出場となった2018年の平昌大会では、表彰台にあと一歩まで迫る4位の好成績を残した。五輪後にはさらなる飛躍を誓って練習拠点をカナダに移して、2度目の五輪となる北京大会を目指したが、引退を決めた最後のシーズンは、なかなか思い描いた結果を出すことができなかった。それでも、納得のいく演技を取り戻すことができたという。

「だんだんとシーズンを過ごしていくうちにジャンプが安定してきて、少し自分にも自信を持てるようになっていったので、日々の練習のなかで『もうやり尽くしたな』という毎日を1日1日、感じて終えられるように、練習を繰り返していくなかで、なんかもう、満足して練習しているし、あとは試合でやるだけの状態になっている自分もいたので、もういいんじゃないかなという気持ちに変わってきたという感じです」

 会見の終わりには、同じ学年の宇野昌磨が花束を持ってサプライズ登場。世界選手権を初制覇して世界王者になった宇野は「小さいころから知子ちゃんを見て、自分も早くシニアに出たいと思いました。知子ちゃんが満足な終わり方ができていたら嬉しいです。これからもたくさん大変なことがあると思うんですけど、知子ちゃんだったらどんなことがあっても絶対にできると言いきれると思うので、これからも頑張ってください」と、盟友に別れの言葉を贈った。

 引退後のセカンドキャリアについては、プロスケーターとしての活動が最初の目標となるようだ。

「たくさんのアイスショーに出たいという夢があるので、プロスケーターとして次のスケート人生を歩んでいけたらなと思っています。これから、まだまだ自分の目標をたくさん見つけていけると思うので、新しい世界を切り開いていけるように頑張っていきたいと思います。人生においてたくさんの選択肢があると思うんですけど、これまでたくさんの壁を乗り越えてきたので、これからもたくさんの壁を乗り越えて頑張っていきたいと思います。これからもよろしくお願いいたします」
 
 プロ活動第一弾は、4月2日から始まるアイスショー「スターズ・オン・アイス」(SOI)に出演予定で、日本人としては初めてとなるSOIカナダツアーにも出演が決まっている。我らが「さっとん」の、心を揺さぶる演技をこれからも楽しみたい、ファンのひとりとして。