早実の“腕立て王子”安田権守は現在、斗山ベアーズでプレー 2010年夏の甲子園でプチブレークした早実の“腕立て王子”こと…
早実の“腕立て王子”安田権守は現在、斗山ベアーズでプレー
2010年夏の甲子園でプチブレークした早実の“腕立て王子”こと安田権守外野手は、道なき道をゆく勇敢なプロ野球選手になっていた。選んだのは日本ではなく韓国でのプロ生活。KBOリーグ史上初の7年連続韓国シリーズ出場をしている常勝軍団・斗山ベアーズに所属し、3年ぶりのV奪還を目指す。韓国へ挑戦したからこそ見えた、両国におけるトレーニング理論の違いがあった。
早大では4年間のほとんどを野球部ではなくBCリーグなどで過ごした。群馬に在籍した2014年には元巨人のアレックス・ラミレス氏、元オリックスのフランシスコ・カラバイヨ氏らと共にリーグ総合優勝へ貢献。翌シーズンは武蔵で初代主将も務めた。大学卒業後に入社したカナフレックスでは日本選手権へ出場するなど、各チームで主軸として活躍。
韓国でプロ野球選手になった2020年から2年連続で1軍スタートを切っている安田だが、「自分がこれまでやってきた野球はちっぽけだなと思わされた」と語る。「投手は日本の方が絶対にレベルが高い。だけど、打者は日本にも負けていない」。これまでの野球人生を振り返り、両国の“特徴”を実感したという。
長打力を磨くためDMで指導を依頼、原動力は“初めて”への挑戦
「日本の良さもあり、韓国の良さもありだと思いますが、まず、高卒の選手がプロ入りする時の体つきが違います。日本では自主練習として扱われがちな筋トレが、韓国では練習メニューに含まれます。なので、すでに体が作られた状態で入団してくる。走ることで土台ができるとも思いますが、トレーニングの重要性は絶対にあると思います」
そう言い切れるのは、3度のアメリカ留学で得た知識と経験からだ。「大学2年で(卒業に必要な)単位をすべて取れば、大学3年から独立リーグへ通えるという目途がついたんです。じゃあ、それまで何をしようって考え、米国へ勉強に行きました」。世界最高峰のスポーツ教育機関「IMGアカデミー」で、主に筋トレの仕方を学んできた。
アメリカ留学をきっかけに周囲より早くアメリカ式の筋トレを取り入れると、1年間で体重は67キロから16キロ増量し、83キロに。「体重が増えることで足が遅くなる不安がありましたが、筋肉が付いた分、逆に足が速くなりました。動きやすくなった」と効果を実感。それから約9年間、体重をキープさせている。
NTT西日本の日下部選手にDMを送り打撃指導を求める
韓国の選手たちは日本、米国へのリスペクトが高く、NPBのプレーも動画などを用いて何度も研究しているという。「日本では最近、外国人選手の影響でフライボール革命の意識が高まってきましたが、僕が韓国へ来た3年前には、すでにアメリカに習って韓国で取り入れられていました」と語る。
日本より高い攻撃力が求められる韓国で長打力を磨くため鍛錬中だ。「小柄な打者でも長打力が必要。長打力があるかどうかで試合に出られるかが変わる」という身長175センチの安田が参考にしているのは、意外にも、日本のアマチュア選手だった。
「NTT西日本の日下部光外野手です。韓国での教え方が合わず、どうしようもないなと感じていた時、偶然インスタグラムで見つけました。背丈が僕と変わらないのに、しっかりとホームランを打てる。最初から最後まで理論を持っていると感じて、面識は全くなかったのですが『教えてください』とDMを送りました」。
立場や年齢に捉われず意見を求める姿勢を持ち続け、2022年シーズンに挑む安田。生まれ育った日本ではなかったが、韓国で夢を果たした。
「プロ野球選手になれたことよりも、“初めて”をやってこられた喜びの方が大きい」
早実、早大、独立リーグ、社会人野球。紆余曲折がありながらも現在はプロ野球選手としてプレーする安田は今、何を思うのか。自らの手で切り開いてきた野球人生には、自信と誇りを持っている。
「プロ野球選手になれたことよりも、“初めて”をやってこられた喜びの方が大きいです。大学に通いながら独立リーグでプレーした選手は僕が初めてで、独立リーグから社会人野球へ行くのも初めてに近い。社会人野球から韓国プロ野球へ進めたのも僕が1、2番目。新しい道を切り開くことに嬉しさを感じています。その中で、プロ野球に辿り着けたよねって感じです」
韓国では現在、毎日数十万人の新型コロナウイルス新規感染者が確認されており、世界的に見ても厳しい状況が続いている。パンデミックの影響を受け、妻でアイドルグループ「アキシブproject」の元メンバー・宮谷優恵さんを含め、日本で暮らす家族は一度も韓国へ応援に来られていない。単身赴任を気遣う家族のためにも、シーズンを通して1軍で活躍し続けたい。(喜岡桜 / Sakura Kioka)