スポルティーバ足ワザファイル 第2回世界トップレベルのサッカースターたちの華麗なテクニックは、どういうカラクリで繰り出さ…
スポルティーバ足ワザファイル 第2回
世界トップレベルのサッカースターたちの華麗なテクニックは、どういうカラクリで繰り出されているのか。その詳細を解説していく。今回も、川崎フロンターレやセレッソ大阪では名ドリブラーとして鳴らし、現在は南葛SCでプレーする楠神順平選手が実演・解説。今季「覚醒した」と言われる活躍を見せている、レアル・マドリードのヴィニシウス・ジュニオールのプレーを徹底解剖する。
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今季好調なプレーを見せているヴィニシウス・ジュニオールの足ワザを解説する photo by Getty Images
【動画】楠神順平実演! ヴィニシウスの足ワザ集
相手に足を出させ、それをかわして抜き去る
今シーズンのレアル・マドリードが好調な要因のひとつに、ヴィニシウス・ジュニオールの成長が挙げられると思います。これまでもポテンシャルの高さは示していましたが、今季は2ケタ以上のゴールを決めていて得点能力が開花しました。ドリブルだけでなく、点が取れるようになったことで、相手にとってより脅威となっています。
そんなヴィニシウスの特徴を注目するときに最初に目が行くのは、そのケタ外れのスピードです。そのうえ、「ザ・ブラジル人」といったボールの持ち方をする、世界トップレベルの足元のテクニックを有しています。
スピードがある選手、足元のテクニックがある選手はほかにもたくさんいますが、その両方が世界トップレベルの選手はそう多くいません。ヴィニシウスは対面した相手を抜ききって、相手の前に入る能力という面で、世界で傑出した存在だと思います。
その相手を抜ききって前に入る能力をもう少し詳しく解説すると、ヴィニシウスは相手の横を取るのが早いんです。横を取るとは、ドリブルしながら相手と並ぶこと。これがとにかく早いんです。
スピードのある選手にとっては、相手の横さえ取ってしまえばもう勝ちなんです。横を取った瞬間に、相手が足を出してきたタイミングで先にボールを触れば入れ替わってしまう。入れ替わってしまったらあとは置き去りにするだけです。ヴィニシウスのそのスピード感と、ボールタッチの感覚はずば抜けていると思います。
相手と並んで、足を出していないときにボールを触ると相手はまだついて来ることができるんです。でも足を出したタイミングでボールを触ると、その分相手は絶対に遅れてしまい、入れ替わることになります。
ヴィニシウスは相手の反応を見ながら、ボールをわざと相手が触れそうな位置に晒したり、わざとスピードをちょっと落として、相手が食いついてきた瞬間にボールを突いてスピードを上げて置き去りにしたりします。逆に相手が足を出してこないときは、無理をしない。そうした駆け引きが抜群にうまい選手です。
今回は、そんなヴィニシウスによるブラジル人らしい足ワザを紹介しています。
ドリブルだけでなく、ゴールも決められる
最初の「軸当てパス」はまさに遊び心あるブラジル人らしいプレーのひとつです。ただ、それだけではなく、ボールタッチが大きくなってしまったのを逆手に取って、相手が食いついてきたところで逆を取れる実用的なテクニックでもあります。
足裏を使うのでコントロールもしやすく、試合のなかでも成功させる確率の高い足ワザだと思います。
2つ目の「スルートラップ」は相手の動きを見ながら、あるいは背後に感じながらプレー選択ができる、ヴィニシウスならではの足ワザだと思います。
まずは相手との距離感、背後のスペースが見えているのが重要です。そのうえで、相手はヴィニシウスのテクニックが怖いので球際に激しく寄せてきます。そこでボールを触らずにスルーすることで相手は逆を取られ、完全に置き去りにされてしまいます。

足元に止めると見せてスルーして背後を取る
「スルートラップ」。相手の動きをよく見極めるのが大切
最後の「アウトチップシュート」は、ヴィニシウスにしてはタッチが大きいなと思いましたが、抜群のスピードによってそれさえも相手を食いつかせるためのフェイントとして成立していました。
通常であれば、あれだけタッチが大きければGKのボールになるものです。ゴール前はスペースもないし、相手もかなり寄せてくる意識が高いエリアです。
ちょっとタッチが大きくなれば、チャンスを潰してしまうことになりますが、ヴィニシウスは追いつけるだけの自信や感覚があったからあのタッチになったのだと思います。なかなかマネできないですね。
そのあとのチップキックも角度がなく、GKにも詰められているのでかなり難しいシュートだったと思いますが、正確にGKの上を通して決めてしまう技術はさすがです。今季これだけゴールを決めているのも納得です。
ヴィニシウスはドリブルだけではなく、フィニッシュまで自分ひとりで行けてしまうし、それで上までのし上がっていこうという気概がある選手で、個人的にもすごく好感を持てます。
世界のトップで活躍するためには、うまいだけではなく、点も取れるというのはとても重要なことだと思います。その意味でヴィニシウスのようにゼロからゴールを生み出し、自分で完結できてしまうのは特別な選手だと感じますし、彼がレアル・マドリードでプレーできる理由だと思います。

楠神順平
くすかみ・じゅんぺい/1987年8月27日生まれ、滋賀県愛知郡出身。2005年度、野洲高校3年時に、第84回全国高校サッカー選手権大会で滋賀県勢初の全国優勝を果たす。同志社大学を経て2010年に川崎フロンターレに入団。スキルフルなボールテクニックで注目を集める。2013年にセレッソ大阪。2016年にはサガン鳥栖でプレー。2016年7月にオーストラリアのウェスタン・シドニー・ワンダラーズへ。2018年にはJリーグへ戻り清水エスパルス、モンテディオ山形でプレーした。Jリーグ通算155試合出場、13得点。2020年から舞台を南葛SC(関東リーグ)に移し、Jリーグ入りを目指すチームでプレーしている。