ダービージョッキー大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」 いよいよ春のGIシリーズがスタートします。競馬ファンにとっては、楽し…

ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

 いよいよ春のGIシリーズがスタートします。競馬ファンにとっては、楽しみな、かつ、刺激的な週末がこれから続いていきますね。今年はどのレースも混戦模様と言われているだけに馬券的な面白味も増しそうですから、僕もはや腕が鳴ります。

 まずは、GI高松宮記念(3月27日/中京・芝1200m)です。

 同レースに抱く僕のイメージは、同じ6ハロンの電撃戦、GIスプリンターズS(中山・芝1200m)よりもタフなレースになりやすい、ということ。直近10年を見ても半数の5回が道悪で行なわれていることもありますが、この時期は馬場が悪化しやすいというのがその理由です。

 事実、僕がカルストンライトオに騎乗して臨んだ2005年も良馬場でしたが、使い込まれた馬場はかなり傷んでいました。好スタートをきって、いつものようにハナに立つことができたのですが、ラチ沿い4~5mを開けてレースを運ばざるを得なかったことを今でも覚えています。

 馬場の悪いところを通ってでも距離損をなくすか、距離損を覚悟でそこを避けていい馬場を通るか、逃げ馬に乗った時にはこの選択は悩ましいところです。僕はその年、内を開ける選択をとって、結果的にそのロス分だけ差し馬の強襲に屈したわけですが、この時の経験からも「高松宮記念はタフなレース」といった印象が強いです。

 馬場の改修工事も行なわれ、当時と今とではコースも少し変わっていますが、本質的にこのレースは1200m以上のスタミナと実績のある馬のほうが有利。馬場が悪化すればするほど、その傾向はさらに顕著になるでしょう。

 現に昨年と一昨年は重馬場で行なわれ、「高松宮記念はタフなレース」ということを証明する結果となりました。一昨年は2着グランアレグリア、3着ダイアトニック、4着クリノガウディー(1位入線降着)、昨年は2着レシステンシア、3着インディチャンプと、いずれも上位に入線したほとんどの馬が初のスプリント戦で、マイル前後の距離を主戦場としてきた面々でした。

 この結果からもわかるように、タフなレースは当該距離よりも長めの距離経験があることが有利に働きやすい、と言えます。そして今年も、この週末の天気は雨予報。馬場が悪化することを想定すると、マイル実績のある馬は軽視できませんね。

 そんな今年のレースですが、人気を集めそうなのは昨年2着のレシステンシア(牝5歳)。この距離でのGI制覇はないものの、昨年のレースのあともスプリンターズS(10月3日)、海外GIの香港スプリント(12月12日/香港・芝1200m)と、ともに2着と好走。戴冠まであと一歩のところまできています。

 香港スプリントのあとはノーザンファームの外厩で調整され、ぶっつけでの臨戦にも不安はありません。マイルGIを勝っていることを踏まえれば、今年も好勝負を演じてくれるのはないでしょうか。

 レシステンシアと同じくマイルGI馬で、今回初のスプリント戦に挑むグレナディアガーズ(牡4歳)も注目の1頭です。特にこの馬の1200m戦への参戦は、個人的に待ち望んでいたこと。行きたがる気性を考えれば、むしろ1200mでこそ、さらにパフォーマンスを上げてくると見ています。

 また、中京コースでは安定感抜群の騎乗を見せる福永祐一騎手とのコンビも魅力。前走のGII阪神C(12月25日/阪神・芝1400m)ではクリスチャン・デムーロ騎手が手綱をとって後方からの鮮やかな差しきり勝ちを決めましたが、この距離ではある程度のポジションをとって、前を射程圏内に入れた乗り方をしてくるのかな、と思っています。

 マイルGI馬で、今回が初めてのスプリント戦という馬がもう1頭います。サリオス(牡5歳)です。ただこの馬に関しては、少し懐疑的に見ています。というのも、序盤でスピードを生かす馬ではないため、この距離は忙しいのではないか、と思うからです。

 実際、サリオス自身の、3歳以降のレースにおける前半3ハロンの平均タイムは36秒台。いきなりGIの電撃戦のペースについていけるか、不安が大きいです。1200m~1400mの前哨戦を一度使っていれば、馬も対応しやすかったと思うのですが、まったくの未経験ですから、なおさらです。

 一発の可能性を秘める穴馬候補を挙げるとすれば、ナランフレグ(牡6歳)。これまでずっと「左回りの芝1200mがベスト」と言われながら、なかなかこの舞台に駒を進めることができませんでしたが、今年は賞金加算に成功してようやく出走が叶いました。



高松宮記念での一発が期待されるナランフレグ

 戦績を見ればわかるとおり、近走では常に33秒台前半の上がりタイムをマーク。この馬の末脚は、現役屈指のレベルにあります。追い込み馬の宿命で、どうしても展開に左右されることは否めませんが、前崩れのハイペースになった時はかなり魅力的な存在です。

「高松宮記念はタフなレース」という話を繰り返してきましたが、そういったレースでは強烈な末脚を持つ馬が台頭しやすいもの。馬群をうまくさばくことができれば、上位争いに絡んでも不思議ではありません。

 そもそも「左回りのほうが得意」と言われながら、最近は右回りでもパフォーマンスが落ちることなく、好走を続けています。おそらく完成期を迎えているのでしょう。初めてのGI舞台となりますが、馬券圏内(3着以内)なら大いに期待できます。

 ということで、このナランフレグを今回の「ヒモ穴馬」に指名したいと思います。