プロ野球2022開幕特集谷繁元信 セ・リーグ順位予想 3月25日、今季のプロ野球が開幕する。昨季のセ・リーグでは、6年ぶ…

プロ野球2022開幕特集
谷繁元信 セ・リーグ順位予想

 3月25日、今季のプロ野球が開幕する。昨季のセ・リーグでは、6年ぶりの優勝を果たしたヤクルトと2位・阪神がゲーム差なしというデッドヒートを繰り広げたが、今季は前年以上に戦力が均衡していそうだ。

 勝敗を分けるポイントはどこにあるのか。元中日監督で解説者の谷繁元信氏に、注目の選手を挙げながら順位予想をしてもらった。

   ※   ※   ※   ※   ※



昨年は自己最低の6勝に終わった菅野智之

【1位予想:巨人】

 6球団のなかで、ジャイアンツは最も戦力補強に動きました。先発陣が少し薄いかなと思っていたけれど、メジャーリーグで実績がある(マット・)シューメーカーと(マット・)アンドリースを獲得。トミー・ジョン手術から復帰した山﨑伊織や堀田賢慎、新人の赤星優志はオープン戦で「行けるのでは」というピッチングを見せてくれました。

 昨季6勝7敗に終わった菅野智之は3月のオープン戦で打たれましたが、春季キャンプでブルペンを見た時、昨年よりいいかなという印象を受けました。ちゃんと先発ローテーションさえ回れれば、ある程度の数字を残すのではと思います。

 打線の爆発力はそんなにないかもしれないけれど、メジャーで実績のある(グレゴリー・)ポランコ、アメリカの独立リーグで2年連続MVPに輝いた(アダム・)ウォーカーを獲得。(ゼラス・)ウィーラーもいますし、打線に外国人選手がひとり、ふたりうまくハマれば、全体によくなるのではと感じています。

 昨年途中に加入した中田翔は、キャンプ後半からオープン戦まで1カ月間ずっといい状態を保ってきました。「体重20キロ増」と報じられましたが、見ていて重そうな感じはしません。昨年のような成績(※巨人移籍後は34試合で打率.154、3本塁打、7打点)に終わることはない気がします。

【2位予想:ヤクルト】

 戦力的にバランスが取れており、連覇を狙う今年もいい勝負をすると思います。ただし、昨年からの戦力アップがあまりないので、レギュラー陣の成績にチームの行方が左右されることになります。

 上積みがあるとすれば、奥川恭伸の登板間隔を狭められること。高卒2年目の昨年は中10日で先発し、18試合で9勝4敗でした。今年はどう起用するか、高津臣吾監督の采配に注目しています。

 逆に不安なのは、勝ちパターンで投げるふたりの勤続疲労です。2020年からの2年間で清水昇は52試合→72試合、(スコット・)マクガフは50試合→66試合とかなり投げています。ふたりがどのくらいチームの勝ちにつなげられるか。そうした意味で上積みとして期待されるのが、大卒2年目の木澤尚文です。ストレートの力はある程度あるので、中継ぎで起用されると思います。

 キャッチャーでは中村悠平が下半身の張りで開幕に間に合いそうになく、代役候補が内山壮真。中学1年までショートだったので、フットワークはいいものがあります。キャッチングもそんなに悪くなく、バッティングもしぶとい。正捕手を1シーズン務めるにはまだ力不足かもしれませんが、短い期間ならこなせると思います。

【3位予想:中日】

 ドラゴンズのストロングポイントはバッテリーです。正捕手には昨年123試合に出場した木下拓哉がいて、先発陣は大野雄大、柳裕也、小笠原慎之介など駒が揃っています。

 中継ぎは又吉克樹(→ソフトバンク)がFAで抜けましたが、代わりに岩嵜翔が入ってきました。ソフトバンク時代に勝ちゲームで投げていた経験もありますし、オープン戦を見ても過去の故障の影響は全然問題ないように感じます。

 昨年まで先発だった(ヤリエル・)ロドリゲスが中継ぎに回り、岩嵜、(ライデル・)マルティネスとつなぐ新しい勝ちパターンができそうです。昨年までチームを支えてきた祖父江大輔、福敬登、藤嶋健人もいますし、ふた通りの勝ちパターンができる可能性もあります。

 課題は得点力。ですが、たとえ数は少なくても、「ここで1点取れたら」というポイントで入るようになれば十分に戦えると思います。

 上積みがあるとすれば、レギュラー定着が期待される岡林勇希と石川昂弥。岡林はオープン戦でも好調でしたが、石川がどれくらい数字を出していけるか。

 石川がサードに入ることで、高橋周平をセカンドにコンバートしました。石川次第では周平をサードに戻さなくてはいけなくなるので、立浪和義監督がどこまで我慢して石川を使うか。逆に石川は、立浪監督を我慢させるようなプレーを見せ続けないといけません。

【4位予想:DeNA】

 昨年は外国人選手たちがコロナの影響で開幕に間に合わず、最下位になりました。今年は抑え候補の(ブルックス・)クリスキーを除いてシーズン頭から揃いましたが、(タイラー・)オースティンと(ネフタリ・)ソトが負傷の影響で開幕絶望となっています。

 投手陣の不安も解消されたわけではありません。先発では今永昇太が左腕前腕の炎症で出遅れ、ローテーションの頭数がそろうかも未知数です。勝ちパターンの中継ぎも、フタを開けてみないとわかりません。

 長らく抑えを務めてきた山崎康晃はここ数年、パフォーマンスが落ちてきているのか、あるいは相手バッターが慣れたのか。その両方だと感じます。見ていて、相手バッターが山崎を嫌がっている印象を受けません。三嶋一輝も同様です。

 新しいピッチャーに出てきてほしいところで、中継ぎに配置転換されたのが大卒2年目の入江大生。実績のあるところでは三上朋也がオープン戦ではしっかり投げられていたし、田中健二朗がトミー・ジョン手術から昨年最後に戻ってきました。ピッチャー陣で一番のベテランなので、まとめ役がブルペンにいるのは大きいと思います。

 攻撃面は、レギュラー陣の得点能力はかなりあります。牧秀悟は大卒1年目で打率.314、22本塁打、71打点を残しましたが、今年もやるでしょう。キャッチャー目線で見て、そんなに穴がないんですよね。インサイドはうまくさばきますし、アウトコースも逆方向に打てます。

 不安があるとすれば、レギュラー陣がひとりでも欠けた場合です。サブ的な選手では楠本泰史が伸びていますが、「台頭してきた」と言えるところまではきていません。キャッチャー陣も含めたバッテリーの不安がまだ少し大きいので、そこがどう出るかだと思います。

【5位予想:阪神】

 絶対的な抑えだった(ロベルト・)スアレスの抜けた穴が投手陣全体に歪みを作るのでは......と不安視しています。

 先発陣には青柳晃洋、西勇輝がいますが、「柱」とまでは言えません。藤浪晋太郎は「今年はいい」という声が聞こえてきますし、ポテンシャルとしてはローテーションを1年間回ってすごいピッチングをする力を秘めていますが、結局シーズンが始まるまで読めないピッチャーです。

 そこを中継ぎ陣がどれだけカバーできるかですが、昨年は勝ちゲームのパターンを作ろうとしていろんなピッチャーを試したけど、シーズン終盤になっても固まりませんでした。同じ作業を今年、シーズン最初からしないといけないのは不安要素です。

 矢野燿大監督が春季キャンプ前日に今季かぎりでの退任を発表した影響も、どう転ぶかわかりません。

 今年が最後だから「なんとか矢野さんを男にしてユニフォームを脱いでもらおう」と意気に感じる選手がいれば、逆に「今年で最後だから、次の監督が入ってくる時に向けて準備しておけばいい」と思う選手もいるかもしれません。オールスターくらいまで借金5〜10の間を行ったり来たりしているような状態になると、「もういいか、辞めるから」とモチベーションが下がる可能性もある。

 タイガースは全体的に不確定要素が強いので、5位という予想にしました。ただし、ポジティブな要素に目を向けると、大卒2年目の佐藤輝明は昨年よりいい数字を残すと思います。昨季前半はずっと打ち続けて、後半は抑え込まれた。あの経験を今年、活かしてくれるはずです。

 僕は一昨年、昨年と、タイガースの優勝を予想しました。佐藤も含め、ここで名前を挙げた選手がチームの柱になってくるようなら、優勝争いをする力を秘めていると思います。

【6位予想:広島】

 鈴木誠也が抜けた穴はかなり大きいです。オープン戦では新人の末包昇大を4番で使い続けてなんとか埋めようとしたけれど、まだ物足りない。新外国人では(ライアン・)マクブルームを獲りましたが、調整が遅れている感じです。誰かひとりでは埋められないほど大きい穴なので、何人でカバーできるかでしょう。

 今のカープは「成長期」にあります。昨年は田中広輔や松山竜平、長野久義が不調になったり、ケガやコロナにかかる選手が出たりして苦しんだなか、サードの林晃汰や外野の宇草孔基ら若い選手が次々と出てきました。ショートに定着した小園海斗を含めてゲームに対する経験値はまだ足りないですが、彼らが今年1年頑張ることができれば、チームとしての安定感はかなり出てくると思います。

 昨年リーグ2位の打率.315を残した坂倉将吾の起用法も注目されます。キャッチャーとファーストに加え、オープン戦ではサードも守りましたが、どうやって使っていくかをはっきりさせてあげたほうがいい。持ち味のバッティングで、力が出なくなるような起用法はしてほしくないですね。

 僕が監督の立場なら、キャッチャーには會澤翼を使います。4月に34歳になりますけど、まだ元気です。一方、キャッチャーとしての坂倉は年々、キャッチングもスローイングも成長しています。リードは経験をしながら常に変わっていくものなので、徐々に自分の考えを表現できるようになっていけばいいと思います。

 ピッチャー陣では、抑えの栗林良吏にどうつなぐかに不安があるなか、新人の黒原拓未、松本竜也が中継ぎに入ってくるのか。先発では昨季最多勝投手の九里亜蓮がいますが、柱となるのは大瀬良大地、森下暢仁だと思います。

 課題は4枚目以降ですが、床田寛樹、玉村昇悟、高橋昂也など、いいピッチャーはいる。いずれも調子の波があるので、悪くてもある程度投げられるようになると、先発陣はかなり充実してくると思います。

(谷繁元信氏の順位予想)
1位 巨人
2位 ヤクルト
3位 中日
4位 DeNA
5位 阪神
6位 広島