今年2月にサービス開始から1周年を迎え、まだまだその勢いが止まらないスマホゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」。その1…

 今年2月にサービス開始から1周年を迎え、まだまだその勢いが止まらないスマホゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」。その1周年を記念したアップデートで、新たに隠しイベント「王様のSMILE」が追加されたのが、キングヘイローだ。



6歳(旧表記)で初のG Iとなる高松宮記念を制したキングヘイロー

 アニメ、ゲームともにキングヘイローは、ウマ娘としても、引退後に転身したデザイナーとしても、一流である母から認められず、また周囲からも「偉大な母の娘」としか見られないことへの反発心から、自身も一流であろうとすることにこだわる。

 しかし、そうしたプライドの高さとは裏腹に、アニメ本編では主役であるスペシャルウィークをはじめ、セイウンスカイ、グラスワンダーら同世代のライバルウマ娘たちに相次いで敗れ、彼女らの引き立て役に甘んじてしまう扱いであった。

 一方ゲーム内のストーリーにおいては、敗れ続けながらも自身が「一流」であるプライドは損なうことなく、勝利に向けてあがきながら、「偉大なる母の娘」ではなく「一流のウマ娘」を目指していく。そのためメインシナリオ本編では、クラシック級では皐月賞・日本ダービーが5着以内、菊花賞が出走というクリア条件。シニア級となって、いきなり短距離GIの高松宮記念では1着が要求される設定となっている。

 モデルとなった競走馬のキングヘイローは1995年4月28日に生を受ける。父は凱旋門賞などを勝ち、80年代最強の欧州馬の呼び声も高いダンシングブレーヴ、母はアメリカでGIを7勝のグッバイヘイローと、まさに当時における世界的な名血であった。

 そして、97年のデビュー時からその主戦を託されたのが、前年の96年に騎手デビューした福永祐一であった。福永の父は、天才騎手と称されながら事故で引退を余儀なくされた福永洋一。ウマ娘のストーリーにおいて「偉大なる親」が強調されるのも、この点が反映されているのであろう。

 世界的な名血で、デビューから3連勝でGIII東京スポーツ杯3歳(旧表記・以下同)ステークス(東京・芝1800m)をレコードで制したとあって、翌年のクラシックの主役として大きな期待を集めることとなったキングヘイローだが、3歳4戦目のGIIIラジオたんぱ杯3歳ステークス(阪神・芝2000m)で2着に敗れ、そして4歳を迎えて以降は強力なライバルが立ちはだかる。そう黄金世代と呼ばれる同期のライバルたちだ。

 GII弥生賞(中山・芝2000m)では、スペシャルウィークが勝ち、キングヘイローは3着。G I皐月賞(中山・芝2000m)は、スペシャルウィークに先着を果たすもののセイウンスカイを捉えきれずに2着。GI日本ダービー(東京・芝2400m)は、スペシャルウィークが優勝し、自身は暴走もあって14着に沈んだ。

 秋のGII京都新聞杯(京都・芝2200m)ではクビ差までスペシャルウィークを追い詰めながらも2着。GI菊花賞(京都・芝3000m)ではセイウンスカイの世界レコードの前に5着。そしてGI有馬記念(中山・芝2500m)では、グラスワンダーの豪脚の前に6着と敗れた。

 5歳を迎えて、GIII東京新聞杯(東京・芝1600m)、GII中山記念(中山・芝1800m)と連勝し、今度こそGI獲りの機運が高まるが、エアジハードが優勝したGI安田記念(東京・芝1600m)では2番人気ながらも11着と惨敗。

 続くGI宝塚記念(阪神・芝2200m)ではグラスワンダーがグランプリ連勝を飾り、自身は8着に敗れた。そしてGI天皇賞・秋(東京・芝2000m)では、またしてもスペシャルウィークが勝ち、キングヘイローは7着。GIマイルチャピオンシップ(京都・芝1600m)では直線半ばで抜け出すも、エアジハードの末脚の前に2着に終わってしまう。

 その年の暮れのGIスプリンターズステークス(中山・芝1200m)3着を経て、年が明けた6歳初戦は、意地でもキングヘイローをGIで勝たせたい陣営が、母グッバイヘイローがアメリカのダートGI馬であることも踏まえ、ダートのGIフェブラリーS(東京・ダート1600m)へ向かう。

 しかし、2番枠のスタートから終始、砂を被る形になって13着と惨敗。ここで勝ったのも同世代のダート最強馬ウイングアローだった。

 ここまでGIでは10戦して未勝利。4歳の有馬記念以降はすべて他世代との対戦だったが、スプリンターズSを除くと、すべて勝ち馬は同世代。スプリンターズSも2着はその夏にフランスでGIを勝ったアグネスワールドだった。

 しかし、作中での「歩みを止めなければ、必ず栄光はつかめるものよ」のセリフのどおり、キングヘイローは挑戦を止めなかった。

 続いて出走したのが、自身2度目の芝1200m戦となるGI高松宮記念(中京・芝1200m)だった。これは決して破れかぶれの挑戦ではなく、燃えやすい気性面や、頭の高い走法を考慮して出走した2走前のスプリンターズSで見せた、4コーナー最後方、実況画面の外側からすっ飛んで来ての3着という、短距離への適性と可能性を見出してのものだった。

 レースは、ブラックホーク、アグネスワールド、マイネルラヴのいずれも短距離GIの勝ち馬に続く4番人気。しかし単勝12.7倍と、上位3頭とは水をあけられての4番人気だった。

 道中はメジロダーリングとアグネスワールドが引っ張る流れで、キングヘイローは中団でブラックホークを前に見る位置でレースを進めた。直線に入ると、先に抜け出したアグネスワールドを追ってディヴァインライト、ブラックホークが競り合うところに大外からキングヘイローがまとめてなで斬りにしてゴール。デビューから21戦目、同世代の馬たちのなかでは最も遅く、3歳時には誰もが予想しなかった短距離での勝利であった。キングヘイローは自身に適した舞台で大きな輝きをようやく放つことができた。

 ゲーム中でキングヘイローはアグネスデジタルとこう会話する。

「屈服させられた数が違う。笑われた数が違う。バカにされてきた数が違う」

「一流であると謳ったがゆえに、誰よりも地を舐め、その度に自分を変えて、立ち上がってきた」

「それこそが、このキングが永遠の一流である理由よ!」

 キングヘイローの勝利はこれが最後となり、同年末の有馬記念4着を最後に引退。種牡馬として牝馬2冠のカワカミプリンセスや、短距離GI2勝のローレルゲレイロを送り出した他、最近ではスプリンターズSを勝ったピクシーナイトや、阪神大賞典、フォア賞を勝ったディープボンドなど、母の父として、自身の現役時を彷彿とさせるように距離の長短を問わない活躍も目立っており、引退して20年を経てなお、"一流"を証明し続けている。