プロ野球2022開幕特集日本ハム・杉谷拳士インタビュー 新監督に新庄剛志を迎え、3年連続Bクラスからの脱出を図る北海道日…

プロ野球2022開幕特集
日本ハム・杉谷拳士インタビュー

 新監督に新庄剛志を迎え、3年連続Bクラスからの脱出を図る北海道日本ハムファイターズ。そんなチームにとって欠かせない選手が、生え抜き野手として最年長となった杉谷拳士だ。これまでスイッチヒッター、どこでも守れるユーティリティーとして、チームの危機を救ってきたが、目指すのは不動のレギュラーである。プロ14年目、杉谷拳士に決意を聞いた。



プロ14年目を迎えた日本ハム・杉谷拳士

去年は最悪のシーズンだった

── 杉谷選手、1年ぶりのSportivaインタビューです。昨年は『毎年、夏頃に調子が下降してしまうので、波がないようにしたい』と話されていました。

「......年間通して波すらなかったです(泣)。13年間やってきて、一番悪いシーズンでした。それこそオフにはクビになるんじゃないかと思ったこともありました。でも、こうしてまたファイターズのユニフォームを着て、野球をやらせてもらっているので、だったら楽しくやろうと思って、自主トレ、キャンプとやってきました」

── 不振の原因は見つかったのですか?

「ひと言で言うと、タイミングのとり方です。ピッチャーとの距離のとり方がダメでした。前まではもっとしっかり自分のタイミングをとれていたのですが......。よくないな、よくないなと思いながら時間だけが過ぎていくみたいな。とくに夏がきつかったですね。ファーム落ちして、いろいろ試したりもしたんです。右ピッチャーなのに、スイッチのボクが右打席に立ったり......。もう一軍で打てないんじゃないかと思ったりしたこともありました。何かやるごとに全部疑問に感じてたというか......心の底から野球を楽しめてなかったですね。メンタル最悪でした」

── 今年2月(4日)で31歳になりました。

「どうなんですかね......。でも疲れの抜け具合だったりは、ちょっと変わってきてるかなと思いますけど、年齢が増せば増すほど若い選手には負けたくないというギラギラ感は、どんどん磨かれていっています(笑)」

── 昨シーズンでいうと栗山(英樹)監督が退任されました。杉谷さんは監督とは10年一緒にやれていました。監督と闘った10年というものを言葉にするとしたら何でしょうか?

「やっぱり"感謝"という言葉が最初に浮かんできますね。監督に初めてかけてもらった言葉が『拳士は拳士らしく常に前を向いて、真っすぐに進みなさい』でした。すごく刺さった言葉ですし、今でも忘れられません」

── 栗山監督の退任セレモニー(2021年10月26日/札幌ドーム)では言葉を交わしてました。

「はい。『拳士、長かったな。おまえとは11年だな』と言われました」

── 11年、ですか?

「そうなんです。みんなは長くて10年なんですけど......僕はまだ監督じゃなくてキャスターだった時に『報道ステーション』で特集していただき、1年間ずっと追いかけてもらったんです。ジュニアオールスターも栗山さんが取材に来てくれました。その時、まさか来年から栗山さんが監督になるなんて思ってもみなかった。だから『11年だな』って言われて、ああ覚えていてくれたんだと思って、本当にうれしかったです」

── 栗山監督を漢字一文字にすると何でしょうか?

「栗山監督を漢字一文字ですか(笑)。何ですかね、うわ〜難しいな......『愛』ですかね」

── 『愛』、きた!

「どの選手に対しても、ものすごく愛情を注いでる姿を見てましたし、もちろん僕にもたくさんの愛情を注いでくれて、野球というスポーツに向かわせてくれました。なので『愛』でお願いします」

斎藤佑樹から教わったこと

── 杉谷さんとも親交が深かった斎藤佑樹さんも、監督と同じく昨シーズン限りで引退されました。

「栗山監督と違って、佑樹さんって本当に身近な存在でしたし、なにより高校時代から鮮明に覚えています。佑樹さんが早実の3年生、僕が帝京の1年生だった2006年夏に、早実が全国制覇。あの甲子園で投げる佑樹さんの姿は今でも鮮明に覚えています。佑樹さんもファイターズに入団して、あいさつに行ったんですよ。その時に『拳士、これからもよろしくな。こうやって何かと縁があるから、仲良くしようね』と言ってくれました。やっぱり覚えていてくれましたし、そこからずっと仲良くさせていただいて。ご飯も誘ってくれましたし、いろんな野球の話もしました。辞めると聞いた時は言葉もなかったです」



親交が深かった斎藤佑樹(写真左)とのツーショット

── 引退の話はいつ頃、聞いたのですか?

「佑樹さんが手術する前にだいぶ弱気になっていた時期があって、『あと1年頑張りましょうよ』と言ったことがあって。それから手術もされて、頑張るってなりましたけど、遅かれ早かれ佑樹さんのなかでは、きっとあと1年なんだろうなというのを薄々感じてました。で、夏くらいに佑樹さんから『拳士、話があるんだよね』と言われた時に、『うわ、きた。嫌だ〜』というやりとりしたんですよね」

── ついにきたか、と。

「その時に『もう今年で辞めるわ。本当にありがとね』と言われて......。もう肩が上がってなかったですし、しょうがないなって......」

── 斎藤さんにかけられた言葉で印象に残っているものってなんでしょう。

「たくさんの言葉をかけてもらいました。佑樹さんって、本当に前向きな言葉しか言わないんですよ。批判する人たちに対して僕は『クソ〜』って思ってしまう人間だったんですが、佑樹さんはいっさい悪口を言わない。そんな僕に『拳士、たしかにいろんなことを言う人がいるかもしれないけど、最後にはちゃんとこうやって応援してくれる、そういう姿勢でオレは野球をやりたいんだよね』って諭すように話してくれて『なに、この人。すげえな』ってあらためて感心しました。普通は絶対『クソ〜』とかなるじゃないですか」

── そうですよね。

「それが佑樹さんは『メディアの人にいろんなことを書かれたとしても、こうやって見てくれてるということが本当に素敵なことなんだよ』って返されて......。さらに『あとは自分が結果を残すことが一番なんだよ。だから、その人たちも仕事なんだし、取材を受けないとかは絶対ダメだから。それは拳士、これからもちゃんとやっていこう』という話もされました」

── 『クソ〜』とかならないんですね。まさに王子ですね、もしくは天使(笑)。

「まさに、です(笑)。佑樹さんと一緒のチームで過ごせたことは、すごく素敵な時間だったし、野球を通して人との接し方というのをたくさん学ばせてもらいましたね」



2022年シーズン、杉谷拳士が掲げた公約とは?

今シーズンの公約は?

── いよいよ新しいシーズンが始まります。監督も変わりましたし、ユニフォームも新しくなりました。

「生え抜きの野手では最年長になりましたし、ファイターズを心の底から応援してもらえるような、12球団で一番明るいチームにしたいですね。僕がどんどん率先してやっていきたいなと思っています」

── 新監督・新庄"BIG BOSS"はいかがですか?

「(森本)稀哲さんからも新庄さんのお話はすごく聞いていたので、思ったとおりの人でした。情熱があって、野球に対して奥深く考えられてる方だなと思います。メチャメチャ真面目ですし」

── キャンプ、オープン戦は若い選手たちが躍動している印象があります。

「みんなに『横一線』だとおっしゃっていますし、僕もここを逃したら辞めないといけないくらいの気持ちで、最後のチャンスだと思ってやっています。若い選手たちも積極的ですし、僕自身も甘く入ってきたボールはどんどんいくようにしています。今は、全員がギラギラしているような感じです。開幕の9人、誰がいくのかというところで全員が『オレがいく』という気持ちでやっているので、」

── 栗山監督は『愛』でした。BIGBOSSを漢字一文字にすると何ですか?

「一文字、出た〜(笑)。え〜......『爽』ですかね」

── なるほど! では杉谷さん、今シーズンの『公約』もお願いします。

「『オレがやるんだ!』という気持ちも込めて『ヒーローインタビュー10回登場!』にします。率先してチームを引っ張りつつ、お立ち台にも上がります! オレがオレがで10回! ギラギラでいきます!」

── 来年のオフは、またテレビの前で待ってます!

「頑張ります!」

杉谷拳士(すぎや・けんし)
1991年2月4日、東京都生まれ。帝京高校から2008年ドラフト6位で日本ハムに入団。2年目にイースタンリーグで133安打を放ち、同リーグのシーズン最多安打記録(当時)を更新。3年目に一軍初昇格を果たし、以来、ユーティリティープレーヤーとして活躍。2019年5月23日の楽天戦で史上19人目の左右打席本塁打を達成した。