2022年クラシック候補たち第11回:ダノンベルーガ クラシックのステップレースのなかでも、とりわけ注目度の高いGIII…
2022年クラシック候補たち
第11回:ダノンベルーガ
クラシックのステップレースのなかでも、とりわけ注目度の高いGIII共同通信杯(東京・芝1800m)。のちに戴冠を遂げた幾多の名馬たちが、同レースの上位にその名を刻んでいる。
そして今年(2月13日)も、この舞台から楽しみな1頭が登場した。
美浦トレセンの堀宣行厩舎に所属するダノンベルーガ(牡3歳/父ハーツクライ)である。

共同通信杯を快勝したダノンベルーガ
昨年11月の2歳新馬(11月21日/東京・芝2000m)でデビューした同馬。レースではバラけた馬群の中団やや後方を追走し、直線に入ると外に持ち出して追撃態勢に入った。
一発、二発とムチが飛んだのは、残り400mを過ぎたあたり。するとその瞬間、一気に加速して、内にいるライバルたちを次々にかわしていく。そうして、残り200m付近で逃げるバトルボーンも並ぶ間もなくかわすと、そのまま突き抜けた。
上がり3ハロンは33秒1。初戦から極上のキレ味を見せて、最終的に後続に2馬身差をつける完勝劇を披露した。
続いて挑んだのが、共同通信杯。8枠10番スタートから、再び中団やや外目にポジションをとって競馬を進めた。4コーナー手前から徐々に進出し、直前ではまたも大外から仕掛けていった。
やや重という馬場コンディションながら、ここでも鋭い末脚を炸裂。直線半ばで前方馬群をとらえ、残り200mをきってから逃げ粘るビーアストニッシドに、一緒に伸びてきた1番人気ジオグリフを振りきって、トップでゴール板を通過した。
好メンバーが集う重賞でも、33秒7というメンバー最速の上がりをマーク。世代屈指の末脚の持ち主であることを改めて証明し、一躍クラシックの有力候補へと名乗りを挙げた。
圧巻のデビュー2連勝を飾って、勇躍春の大舞台へと向かうダノンベルーガだが、実はこの馬、幼少期には危うく競走能力喪失になるほどの大ケガを負っているという。その詳細について、関東競馬専門紙のトラックマンが説明する。
「まだ牧場にいた頃、ダノンベルーガは右後脚に大ケガを負って、一時はまともに歩くことさえできなかったそうです。その後、懸命な治療によってレースに臨めるまでになりましたが、ふだんは歩様が乱れるなど、まだ後遺症が残っているとのこと。調教も軽いメニューしか行なえていないのが実情です。
それでも、競馬にいってこれほどの走りができるのは、『身体の可動域の広さと心肺機能の高さによるもの』とスタッフ。大きなハンデを背負いながらも、2連勝で重賞制覇まで遂げてしまうのですから、その潜在能力は相当なものではないでしょうか」
そうは言っても、右後脚の不安は成長とともに解消されるわけではない。陣営は先日、GI日本ダービー(5月29日/東京・芝2400m)を大目標にすると発表し、GI皐月賞(4月17日/中山・芝2000m)については「状態次第」とコメントした。これについても、右後脚の不安が関係しているとトラックマンは言う。
「右回りはどうしても右脚に負担がかかるため、陣営は皐月賞の出走に慎重になっている様子です。ここまでの(左回りの)2戦はこれといった反動は見られなかったようですが、その心配が余計に膨らみますからね。高い能力を秘めているのは間違いないので、とにかく今後も、レースでは無事に走り終えてくれることを祈るばかりです」
まるで薄氷を履むような競走生活を送っているダノンベルーガ。世代上位のポテンシャルをクラシックでも発揮し、最高の輝きを放つことができるのか。我々は期待と不安を抱きながら、同馬の走りを見守るだけである。