Mリーグ女流雀士インタビュー(7)二階堂瑠美@前編 2連覇を狙うEX風林火山でレギュラーシーズンの稼ぎ頭となったのは、今…

Mリーグ女流雀士インタビュー(7)
二階堂瑠美@前編

 2連覇を狙うEX風林火山でレギュラーシーズンの稼ぎ頭となったのは、今季から加入した松ヶ瀬隆弥(RMU)だった。エースの勝又健志(日本プロ麻雀連盟)に並ぶチーム最多タイの勝利数で、セミファイナル進出の原動力となった。

 同じく今季話題となったのは、二階堂亜樹(日本プロ麻雀連盟)の姉・二階堂瑠美(日本プロ麻雀連盟)のEX風林火山への加入だ。Mリーグ創設4年目にして実現した姉妹ふたりの共闘。21世紀の女流麻雀を牽引してきた二階堂姉妹の姉に、麻雀との出会い、Mリーグの魅力などを聞いた。

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二階堂瑠美(にかいどう・るみ)1980年9月27日生まれの41歳

---- EX風林火山の選手は『風』『林』『火』『山』の一字が記された4種類のリストバンドをつけますが、二階堂瑠美選手は何をつけることが多いのですか?

「その日の気持ちで変わりますけど、『山』が多いですかね」

---- なぜ山を?

「占い師・星ひとみさんの天星術で、私の属性は山脈なんですよ。あと、山がパワースポットみたいなこともよく言われるので。厳密に言えば星ひとみ先生の占いでは大陸なんですけど、山でもいいかなと思って。別にトップを獲れるわけじゃないですけど(笑)」

---- 勝負事にゲン担ぎもするのですか?

「基本はしないですね。寝る時間も起きる時間も通る道も、まったく同じことはできないので。でも、よく質問されるので『焼き肉を食べる』くらいに答えています(笑)」

---- まずは瑠美選手がプロ雀士になった経緯から教えてください。子どもの頃は実家が雀荘を営んでいたので、妹の亜樹選手は4〜5歳で麻雀を覚えて好きになったと聞いています。瑠美選手はいつ頃から麻雀を打つようになったんですか?

「17歳、18歳くらいです。子どもの頃からなんとなく知ってはいたんですけど、あまり興味はなくて。囲碁、将棋、花札よりは知っている程度、でしたね」

---- どんな子どもだったのですか?

「もともとパズルとかゲームが好きで、テレビゲームをよくしていました。あとはマンガや本を読んだり。本はいわゆる子どもが読むようなものは読んでなくて、推理小説やホラー小説を読んでいましたね。でも、一番よく眺めていたのは、漢字辞典と国語辞典。同じ音なのに意味の違う言葉がたくさんあることが不思議だったんですよね」

---- そんな少女が成長して、興味のなかった麻雀を始めた理由は何ですか?

「亜樹ちゃんが中学卒業後に麻雀をやっていると知ったからでした。両親が小学校低学年の時に離婚して、それからは祖母と亜樹ちゃんとで暮らしていたんですけど、私が高校1年の頃にその家がなくなってしまって。

 亜樹ちゃんは中学を卒業すると東京に行ってしまい、私はそのまま高校に在籍していたけど、生活するためにバイトに追われて、学校にはほとんど行けなくて。それで3度目の1年生をやることになった時に高校はやめて、亜樹ちゃんのいる雀荘でバイトを始めたんです。間近で麻雀を見るようになったら『おもしろいな』となって、そこからですね」

---- 亜樹選手がプロ雀士になった翌年、瑠美選手は2000年に19歳でプロ雀士になりました。雀荘で働き始めて1年くらいでプロになれた背景を教えてください。

「雀荘で働き始めてから麻雀プロになるまでは、毎日13時間くらい麻雀を打ちましたね。麻雀が打てるとなったら『ハイハイ! 私、打ちます!』という感じで。それが週6日、時には週7日やって、仕事が終わったあとも麻雀を打ったりしていたので、麻雀漬けの日々。そんな濃密な1年間を過ごしたら、プロテストに合格しました」

---- そこから二階堂姉妹として麻雀界に新風を送り込みましたが、アイドル的な脚光を浴びたデビュー当時は、どんなお気持ちだったのですか?

「麻雀プロになる前から取材を受けたりしたんですけど、『これは長くは続かない』と思っていました。ただ麻雀が好きで、ただ強くなりたくて競技プロになったので、注目されても冷めた部分はあって。

 でもよかったのは、麻雀プロになりたてなのにトッププロと同卓できる機会が増えたことです。麻雀プロになれば強い人と打てると思っていたんですけど、プロテストに通ったくらいではトッププロと同卓できるわけはなく。そんなことも知らないくらい、当時はピュアだったってことですね(笑)」

---- 所属団体には実力によって階級の異なるリーグ戦があって、麻雀プロになってもすぐにトッププロと同卓できるわけではないですが、放送対局は別ですよね。

「スーパー近道でしたよね。やっぱり安藤さん(故・安藤満プロ/二階堂亜樹インタビュー前編を参照)と知り合えたことがすごくありがたいことだったし、そこからいろんな麻雀プロの方と接したり、話したりする機会も増えたので。ラッキーでしたね」

---- 注目されることでのストレスはなかったですか?

「あまりなかったですね。もちろんバッシングはあったんですけど、麻雀の内容に関してはダメ出しをされれば精査して、次につなげるための研究材料になりましたから。それに自分にとって重要な人物以外からの声はあまり気にならないタイプなので(笑)」

---- そうして歩み始めた麻雀プロとしてのキャリアですが、今シーズンからMリーグに参戦しました。新たなチャレンジを決意した理由を教えてください。

「決意というほど大袈裟なものはないんですけど、ファンの人たちからSNSなどを通じて『なんでMリーガーにならないの?』という声をたくさんいただいて。もちろん、Mリーガーは自分がなりたいと思ってもなれるものではないんですけど、期待されている実感はあったんです。そんな時に指名を受けたので、『精一杯ベストを尽くしたい』という思いだけで、断るという選択肢は浮かばなかったですね」

---- Mリーガーになって数カ月が経ちましたが、どんな実感ですか?

「うーん、そんなに実感はないんですよね。まだあまり出場していないので(苦笑)。ただ、EX風林火山という新しいコミュニティに加わることができたのはうれしいです。

 カッちゃん(勝又健志)はほぼ同期で20年くらい一緒に麻雀界を盛り上げてきたし、別チームの人たちも長年一緒に麻雀界を盛り上げてきた仲間だと思っているので。そこに新たに加われたことで『もっと麻雀を盛り上げられるように頑張ろう』とモチベーションは上がりました」

---- よかったと感じることは?

「それは(松ヶ瀬)隆弥ちゃんと仲良くなれたことですね。チームメイトですけど所属団体が違うのもあって、これまでほとんど会ったことがなかったんですよ。それが同じチームになったことで、隆弥ちゃんの所属するRMUの人たちからも声をかけられることが増えて。交流が広がるのはうれしいですね」

---- 松ヶ瀬選手はどういう方ですか? SNSを見ていると料理上手ですけど。

「ひと言で表すなら『頑張り屋』です。たぶんA型......隆弥ちゃんの血液型は知らないんですけど、すごいA型っぽいんですよ。真面目だし、頑張り屋だし。あとは私と違ってプレッシャーや責任感を楽しめる側の人、という印象ですね。見た目はコワモテだけど、もし中身が女の子だったとしても全然不思議じゃないくらい(笑)。それくらい気遣いもすばらしい人なんです」

---- 血液型で言えば瑠美選手もA型です。A型天秤座の瑠美選手はどういうタイプですか?

「楽しいことを見つけるのは得意だと思います。麻雀にかかわらず、物事のいい面と悪い面を探すようにしています。でも、自分が楽しむだけならいいんですけど、やらかしたことで迷惑をかける状況だと責任を負いたくないから、楽しむという自分らしさを上手に出せなかったりして、という面があるかな」

---- Mリーグはチーム戦という部分で、まだ楽しむことを遠慮されているのでしょうか?

「そこがMリーグの難しいところですよね。個人の結果が自分だけの成績ではなく、チーム成績に影響するので。そこを意識しちゃうあたり、凡人なんでしょうね(苦笑)」

---- 瑠美選手が感じているMリーグならでは難しさなどを、後編でじっくり聞かせてください。

「はい。存分にしゃべらせてもらいます(笑)」

(後編につづく)

【profile】
二階堂瑠美(にかいどう・るみ)
1980年9月27日生まれ、神奈川県鎌倉市出身。妹・二階堂亜樹の影響で麻雀を始め、2000年にプロ雀士となる。日本プロ麻雀連盟所属。2021年、Mリーグのドラフト会議でEX風林火山から指名を受けて、史上初の姉妹Mリーガーとなった。