Mリーグ女流雀士インタビュー(7)二階堂瑠美@後編 Mリーグ2021シーズンから新たに加入した5選手たちにとって、初めて…

Mリーグ女流雀士インタビュー(7)
二階堂瑠美@後編

 Mリーグ2021シーズンから新たに加入した5選手たちにとって、初めてのレギュラーシーズンが幕を降ろした。

 EX風林火山に所属する二階堂瑠美(日本プロ麻雀連盟)は、妹の二階堂亜樹(日本プロ麻雀連盟)との共闘がMリーグで実現。チームはセミファイナル進出を手にしたものの、自身はMリーグでの戦いにアジャストするのに苦労した5カ月半でもあった。セミファイナル、そして2連覇を目指すチームの一員として、彼女が誓う巻き返しの秘訣とは......。

「高校中退、雀荘バイト、毎日13時間の麻雀漬け」

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二階堂瑠美(にかいどう・るみ)1980年9月27日生まれの41歳

---- 二階堂瑠美選手の感じている、Mリーグならでは難しさについて教えてください。

「自分が打っていて楽しいと思う麻雀じゃないと、見る人に楽しさは伝わらない気がしているんです。だから、まずは自分が楽しむ。でも、Mリーグではそれをするのが難しいんですよね」

---- それはスポンサーやサポーターがいて、チームを代表して打っているからですよね。

「そうですね。自分のワガママをどこまで貫き通していいか、そのバランスの取り方をまだ掴みかねています。前半戦はチームポイント的に無理してでも順位を上げる必要はないと判断して、勝負をオリることも多くて。

 だけど、後半戦は個人ポイントを上げるように言われていたので、Mリーグ以外での自分なら勝負をオリるような時でも、オリるのをためらったり、なんだったら配牌オリしたい手でもドラ・ドラがあるからテンパイまで持っていかないと考えちゃったりして。そういう心理的な部分が影響したかなと思いますね」

---- 周囲の期待に沿えるようにと、意識しすぎたということでしょうか?

「そこは関係している気がしますね。もともと責任を背負う状態はあまり好きじゃないので。だから、『期待していないよ』って言われると気がラクなんです(笑)」

---- でも、瑠美選手のMリーグ以外での実績を知っていれば、期待するのは当然ですから。打開策は見つけられているのですか?

「Mリーグに関して言えば、まだちょっと打ち方を模索中ですね。開き直ればいいというのはわかっているんですけど、なかなかその開き直りがまだできてない状態です。ただ、トータルで見た時に、Mリーグでも自分の麻雀を打っている人のほうが成績がいいと感じていて。

 よそ行きの麻雀をしても自分自身が楽しめないですし、スキルアップの点で見ても、自分の打ち方を貫き通したほうが得るものは大きいのかなと。勝つために打っていますが、そう簡単に勝てる舞台ではないので、負けるにしても自分のベストの判断を重ねたいなと思います」

---- Mリーグは連盟所属以外の麻雀プロも多いですが、初めて打つ方もいますか?

「他団体の人と打つ機会は限られますけど、男性Mリーガーは20年以上麻雀界にいる方ばかりなので、だいたいは打ったことがありますね。松本吉弘さん(渋谷ABEMAS/日本プロ麻雀協会)や堀慎吾さん(KADOKAWAサクラナイツ/日本プロ麻雀協会)は、もしかしたらMリーグが初めてかもしれないです」

---- 初対戦は影響しますか?

「それはないですね。Mリーグが誕生したシーズンから亜樹ちゃんが出ていて3年間見てきたので、この選手はこういう打ち方だと知っていたので。私はもともと、麻雀を見るのは好きじゃなかったんです。だけど、Mリーグはオジサンが出ているから。オジサンの麻雀が好物なので(笑)。やっぱり麻雀がうまい人の打ち方はすごく楽しいですから」

---- 瑠美選手が視聴者として、見るのがたまらないオジサン雀士を教えてください。

「(近藤)誠一さん(セガサミーフェニックス/最高位戦日本プロ麻雀協会)が好きですね。あと、沢崎(誠)さん(KADOKAWAサクラナイツ/日本プロ麻雀連盟)と、(鈴木)たろうちゃん(赤坂ドリブンズ/最高位戦日本プロ麻雀協会)ですね。この3人が出ている時はだいたい見ますね」

---- どういうところを見ているのですか?

「配牌から次は何を切るか、手をどういうふうに運ぶかですね。誠一さんは一番共感できる打牌をされるんですよ。あと、オジサンじゃないけど、仲がいいので高宮まり(KONAMI麻雀格闘倶楽部/日本プロ麻雀連盟)や、去年までセガサミーフェニックスにいた和久津晶(日本プロ麻雀連盟)の試合も、応援というわけじゃないですけど見ていましたね」

---- 今シーズンは結果に苦戦していますが、随所に瑠美選手らしい打ち筋は発揮されているのかなと勝手に思っています。とりわけ表情に、勝負を楽しんでいるのが伝わってくるのですが、ご自身で意識されていることはあるのですか?

「表情は勝手に出ています(笑)。ただ、私は昔から『自分の選択が合っていたか?』にしか興味がなくて。だから、間違った選択をしてトップを獲ってもモヤモヤするし、負けても正しい選択だったと思えればスッキリしていますし。そこも含めて、Mリーグで戦う時にどうしようっていうのがあるんですよね」

---- 瑠美選手が麻雀を始めたきっかけは、妹の亜樹選手が先にやられていたからでした。話を聞いていて思うのは、当たり前ですけど瑠美選手もやっぱり麻雀が大好きなんだなと。

「きっかけは亜樹ちゃんが麻雀プロになったことですけど、亜樹ちゃんのために麻雀プロになったわけではないので(笑)」

---- でも、そう勘違いしてしまうほど仲良し姉妹ですよね。

「どうなんでしょうね。自分たちが特別、仲がいいと思ったことはなく、自然な距離感なので。もちろん思春期の頃はケンカもしましたが、もうずっと一緒にいるので、これが普通なんですよ」

---- 瑠美選手と亜樹選手の関係はどういう感じなのですか?

「昔は自分が亜樹ちゃんの面倒を見るというか......。自分勝手というのとまた違うんですけど、妹は自分だけで世界が完結しているタイプだったんです。でも、『社会に出たらそれだと難しいよ』って感じで、自分がフォローして。そういう姿が世話をしているふうに見えたんだと思うんですが、自分では世話をしている気はまったくなかったですね」

---- 今の距離感はどういうものなのでしょうか?

「この数年はお互いが頼り合っている感じかなぁ。30代なかばまではやっぱり『二階堂姉妹』というセット商品で見られていたので、お互いのために......妹がどう思っていたかわからないですけど、自分としては二階堂姉妹の商品価値を落とさないような意識がありましたね。でも、そこを過ぎてからはお互いに大人ですから、勝手にやっていいじゃないって(笑)」

---- メイクにたとえると、今はナチュラルメイクな距離感なんですね。

「そうですね。もともとスッピンだったのに、アイドル的に扱われてガチガチにメイクされた状態の二階堂姉妹になって。まわりはそれがベースだと思って接してくるから、メイクを落とす暇がなくて。それが35歳前後からは気にせずに自然体になっていきましたね」

---- そうした変化は麻雀にも出るものですか?

「ありましたね。もともと手役をつくるのがうまいと言われていたので、若い頃はそっちに寄せた面もあったんです。本当は違う打ち方をしたくても、期待されているのはコッチだから、みたいな。でも、自分の打ちたいように打ったら、その評価にポジティブなものが多くて、そこから自然体で打っています」

---- 昔はロマンチストな打ち手だったのが、近年はリアリストになった印象を受けるのは、そういう違いなんですね。

「そうですね。自分はどちらかと言えばリアリストなんですよ。でも、若い頃は『三色好き』と見られていたから、その期待に応えようとしていただけで(笑)。今は手役にこだわるのは、普通に打ったらアガれないような手牌の時ですね。でも、それがアガれちゃったり、たまたま形になったりするから、ロマンチストなイメージを持たれたままですけど」

---- Mリーグはここから山場を迎えます。どう戦いたいなど、テーマはあるのでしょうか?

「開き直って自分のベスト、なるべく理想とする麻雀を打てるように。本当にそれだけですね」

---- 最後に、瑠美選手の考える麻雀の本質とはどういうものか教えてください。

「難しい質問ですね(笑)。うーん、なんだろう......鏡、かなぁ。自分が今できることが丸々返ってくるし、心持ちひとつで楽しかったり、つまらなくなったりもするし......。でも、もっとフィットするひと言がある気がするんですけどねぇ。

 あっ! 自分がより高みに行くための山。エベレストには頂上があるけれど、修験者が登るようなテッペンのない山っていう感じですね」

---- だから、リストバンドは『山』なんですね。

「なるほど!(笑)」

(第8回につづく)

【profile】
二階堂瑠美(にかいどう・るみ)
1980年9月27日生まれ、神奈川県鎌倉市出身。妹・二階堂亜樹の影響で麻雀を始め、2000年にプロ雀士となる。日本プロ麻雀連盟所属。2021年、Mリーグのドラフト会議でEX風林火山から指名を受けて、史上初の姉妹Mリーガーとなった。