プロ野球では開幕からニュートラルサイト(対戦する両チームのホームの競技場でない場所)での試合開催が相次いでいる。■日本では開幕から1か月で10試合を開催 プロ野球では開幕からニュートラルサイト(対戦する両チームのホームの競技場でない場所)で…

プロ野球では開幕からニュートラルサイト(対戦する両チームのホームの競技場でない場所)での試合開催が相次いでいる。

■日本では開幕から1か月で10試合を開催

 プロ野球では開幕からニュートラルサイト(対戦する両チームのホームの競技場でない場所)での試合開催が相次いでいる。

 一方、メジャーリーグではニュートラルサイトでの開催は日本と比べて多くない。2012年を最後に日本での公式戦開催は行われていないが、これまでも他の海外地域で試合が開催されてきた。昨シーズンはアメリカ合衆国の自治的領域ではあるが、ピッツバーグ・パイレーツ対マイアミ・マーリンズの試合がプエルトリコでの開催を予定していた。だが、ジカ熱流行の影響により中止となってしまった。2014年にはオーストラリアでオープン戦が開催され、1996年と1999年にはメキシコで公式戦が行われたように、今後も世界中で展開されていくだろう。今シーズンもロンドンでの公式戦開催が噂されていたが、結果的にはまとまらなかったようだ。

 開幕からの1か月間、プロ野球ではすでに郡山(中止)、鹿児島(2試合中1試合が中止)、熊本、静岡、県営大宮、豊橋、北九州、東京ドーム(北海道日本ハムファイターズ・楽天イーグルス)などのニュートラルサイトで10試合が組まれていた(阪神タイガースの京セラD大阪開催は省く)。一方、メジャーリーグでは開幕から1か月間、ニュートラルサイトでの試合開催は1つもなかった。

 今季メジャーでは、ニュートラルサイトでの開催が予定されている試合に、8月20日ヒストリック・ボウマンフィールドで開催されるセントルイス・カーディナルズ対ピッツバーグ・パイレーツの一戦がある。リトルリーグの聖地で行われる試合のため、一般的なチケット販売は行われず、リトルリーグに参加する子供たちや家族にチケットは配布される予定だ。

 メジャーリーグのニュートラルサイトでの試合開催は野球以上の特別な意味合いを持つことが多い。昨シーズンの7月3日には、史上初となる米軍事施設内でマイアミ・マーリンズ対アトランタ・ブレーブスの公式戦が行われた。ノースカロライナ州フォートブラッグ陸軍基地にある球場に仮設の観客席を設置して、選手会とメジャーリーグ機構が米軍への敬意を示すために開催された。

■メジャーでは陸軍基地や海軍兵学校が舞台になることも

 さらに開幕前のオープン戦では、ワシントン・ナショナルズが海軍兵学校を舞台にボストン・レッドソックスと試合を行った。今年から3年連続で行うことですでに合意しており、チケットの一般販売はせず、海軍関係者や同学校の生徒に配布されている。野球と海軍に関わる人々が、互いをリスペクトする空気が漂う特別な一戦となっていた。

 メジャーリーグでは、“ホームゲーム”の価値は計り知れないものがある。そのためワールドシリーズでのホームフィールドアドバンテージがオールスターゲームの勝敗で決められることには反対意見も多く、ついにこの制度は廃止されることとなった。81試合中の1試合でもホームゲームを失うことは開催側にとっては痛手であるはずだが、ニュートラルサイトで試合を開催することは、ホームゲームの価値を凌駕する特別な意味合いを持つ。

 ニュートラルサイトでの試合には、野球以上の意味合いが意識されて開催されている。プロ野球でもこれまで公式戦を行ってきた熊本での試合には、被災地復興支援の意味合いも込められるようになってきた。

 さまざまな地域の子供たちにプロのプレーを見せることももちろん大事だが、ニュートラルサイトでの試合開催をすることでそれ以上の価値が野球を通じて伝えられていくことも今後の野球発展に大きな意味を持つはずだ。

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

「パ・リーグ インサイト」新川諒