Mリーグ女流雀士インタビュー(6)二階堂亜樹@後編 Mリーグには総勢32名のプロ雀士が所属しているが、そのうち女流雀士は…
Mリーグ女流雀士インタビュー(6)
二階堂亜樹@後編
Mリーグには総勢32名のプロ雀士が所属しているが、そのうち女流雀士は12名いる。これほど多くの女流雀士が参戦できる背景のひとつは、二階堂亜樹(EX風林火山/日本プロ麻雀連盟)の存在があったからこそ、と言っても過言ではないだろう。
1999年に最年少女流プロ雀士としてデビューし、翌年プロとなる姉・二階堂瑠美(EX風林火山/日本プロ麻雀連盟)との"二階堂姉妹"が、男社会の麻雀界に風穴を空けたのみならず、世間の目も麻雀界に向けさせ、彼女らを追うように女流プロも増えた。女流雀士のトップランナーとして走り続ける二階堂亜樹の描くMリーグの未来像とは......。
「手痛い失恋をしても、麻雀を打っている時は忘れられる」
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二階堂亜樹(にかいどう・あき)1981年11月15日生まれの40歳
---- それまでにも浦田和子プロや渡辺洋香プロなどはいましたが、麻雀業界に劇的な変化をもたらしたのは「二階堂姉妹の登場」でした。一般メディアでも数多く取り上げられたことが、現在の女流雀士の拡大につながっていると思います。
「麻雀プロの割合で言えば、今でこそ男性と女性の比率は4対1くらいになっていると思うんですが、私たちがプロ雀士になった頃は10対1くらいでしたからね。でも、そう言っていただけるのはありがたいなと思うんですが、私たちは『引っ張るぞ』や『引っ張ってきた』という意識はなくて、ガムシャラに走ってきただけなので(笑)」
---- この20年強のなかで、男女割合が変わったことでの変化はありましたか?
「うーん、どうなんだろう。ただ思うのは、本来なら麻雀という競技において男女差はないはずなのに、男女で分かれていることには多少、違和感はありますよね」
---- インタビュー前編で聞いた、故・安藤プロの「普通だと思っていることを疑え」という発想にも通じる視点ですね。
「女性だけのタイトル戦は増えたし、男性だけのタイトル戦も増えたんですけど、自分としてはやっぱり男女混合のほうがいいなと思っています。最終的には男女半々が理想ですよね。ただ、そこに到達するためには、女流プロ全体がもっとレベルアップしなければいけないと思っています」
---- 同じ麻雀プロであっても、男女で実力差がある理由はなぜでしょう?
「そもそも麻雀界は、女性が優遇されているんですね。たとえば雀荘で働くにしても、男性プロより女性プロのほうが給与が高かったりして。アルバイトだと時給1000円だけど、プロになると時給3000円で雇ってもらえるとなれば、勉強して麻雀プロになりますよね。
でも、プロになってから雀力に磨きをかけるかと言ったら、そうじゃないケースもあって。もちろん、全員が全員ではないですけどね。ただ、男性の場合はプロ資格を取っても給料がさほど上がるわけではないですから、麻雀プロになろうという人は気構えが違うわけです。そこの差は大きいと思います」
---- Mリーグができたことで、女流雀士が活躍する場を目の当たりにできるようになりました。今後は純粋に強さを求める女流雀士が増えるのではないでしょうか?
「そうなることを願っています。プロ雀士というのは、一定基準を満たしていれば誰でもなれるものなので。プロ資格の有無がクローズアップされるのではなく、プロとして強さを求めながら壁を乗り越えていくことが評価される世界になってほしいですよね。ただ、そう思いつつも、今はまだ女流プロの数が増えればいいのかな、という気もしなくもないんですけどね」
---- プロ資格は免許であって技量を示すものではない、ということですよね。
「そうです、そうです。あくまでもライセンスなので、最低限のことはできるけれど、運転がうまいことを保証はしないのと同じです(笑)」
---- Mリーグが誕生したことでの変化は感じていますか?
「『Mリーグで麻雀を覚えました』という声をかけていただく機会が増えましたね。まったく麻雀を知らない人が、Mリーグに出ている選手がきっかけで麻雀を見るようになったという声も聞きます。ただ、基本的にまだ箱推しではなく、単推しなんですよね。
プロ野球やJリーグのように、選手は応援するけどあくまでチーム推しになっていければ、Mリーグが本当に浸透したって言えるのかなと思います。あと、もっとチームが増えるのも面白いと思うんですよね。Jリーグのように1部と2部で入れ替え戦をしたり」
---- 麻雀普及のために生まれたMリーグですが、まだ手を入れる余地はたくさんありそうですね。そのMリーグで亜樹選手が心がけていることはありますか?
「見ている人が納得できる麻雀を打つのか、それとも自分が打ちたい麻雀をするのかは、難しい問題ですよね。自分が納得する麻雀を打って勝ち負けを決めたいプライドはあるのですが、それをMリーグでやることは果たしてエンターテインメントとして成立するのか、と悩んだりします」
---- 半荘1回は個人の勝負だけど、それがチームの結果を左右する難しさもあるんでしょうね。
「Mリーグはチームを優勝させる目的に向かって、みんなで力を合わせて戦う。そのドラマを見てもらうことも意識していますね。だから、自分が納得する麻雀を打って、優勝が遠のいたりするのは本末転倒な気もするし。
ただ、麻雀は細工なんてしなくても、みんなが一生懸命打てば絶対にドラマが生まれるものなので、ゲームを壊すような打ち方だけはしないように心がけています。自分が『麻雀は強い』と、Mリーグだけを見る人には思われなくてもいいやって割り切っています(笑)」
---- Mリーグでの4年間は、攻守のバランスを模索された4年間でもあったと感じます。初年度はガチガチに守っていましたが、最近は出る時は出ていますよね。
「もともと守備寄りの打ち手なんですけど、チーム戦に慣れてなかった初年度は、どれくらい踏み込みの強さを出しながら打てばいいのか迷っていましたね。『チームに迷惑をかけたくない』とかゴチャゴチャ考えて、最終的におとなしくなっちゃうみたいな。Mリーグのルールはトップが超偉いのに、頑張ればトップになれる時でもラスにならないような選択をして......。
だから1年目が終わったあとにディスカッションして、チーム戦に対する考え方をチーム内で統一しました。今は初年度よりも、ルールにアジャストできているんじゃないかって思っています」
---- 今シーズンのMリーグはここから大詰めを迎えます。EX風林火山には2連覇の期待もかかっています。セミファイナル、ファイナルへの意気込みを教えてください。
「まずはファイナルに進むことを目標に、セミファイナルに全力で挑みます。それでファイナルに進めたら、連覇できるのはウチのチームにしかない特権なので、全力で優勝賞金5000万円を狙っていきます。でも、Mリーグは2位や3位にも賞金が出るので、『優勝以外に意味はない』なんて言えないと思っているので、状況によってはそこも見据えてシフトしていくと思います」
---- 昨年もファイナルまでの戦いを経験していますが、レギュラーシーズンとは打ち方なども変わるものなのでしょうか?
「登板した時の点数状況によりますね。だけど、ファイナルはめっちゃ腕を振っていくかもしれないですし、そこも楽しんで見てもらいたいです」
---- 優勝賞金5000万円は昨年も手にしていますが、2連覇したら1億円。
「優勝しても全部が私に入ってくるわけじゃないんで(笑)。やっぱり賞金というより、支援していただいているチームやスポンサーやサポーターの方々と一緒に喜びを分かち合いたいのが一番ですよね。それに優勝したという事実は、ひとつの自信になりますし、これから先も続いていくMリーグという歴史に名前が残るので。それが自分にとって、すごく価値のあることだと思っています」
(第7回につづく)
【profile】
二階堂亜樹(にかいどう・あき)
1981年11月15日生まれ、神奈川県鎌倉市出身。雀荘を営む実家で育ち、幼少期から麻雀に親しむ。1999年に史上最年少でプロ雀士デビュー。日本プロ麻雀連盟所属。2018年にEX風林火山からドラフト指名を受けてMリーガーとなる。姉は同じチームに所属する二階堂瑠美。