皇治インタビュー 年明けの冬眠宣言から約3カ月。RIZINの榊原信行CEOのラブコールに応え、皇治(TEAM ONE)がリングに戻る。舞台は、今年初のRIZINナンバーシリーズ『RIZIN.34』3月20日/丸善インテックアリーナ大阪)。地…

皇治インタビュー

 年明けの冬眠宣言から約3カ月。RIZINの榊原信行CEOのラブコールに応え、皇治(TEAM ONE)がリングに戻る。舞台は、今年初のRIZINナンバーシリーズ『RIZIN.34』3月20日/丸善インテックアリーナ大阪)。地元・大阪で、昨年6月のRIZIN KICK ワンナイトトーナメント1回戦でバッティングによりノーコンテストとなった梅野源治(PHOENIX)と、再びキックボクシングルールで対戦する。物議を醸した一戦を清算へ。皇治が胸の内を語った。



RIZIN.34で梅野源治と再戦する皇治

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【「本当に、謙虚な気持ちでいます」】

――今回は、冬眠中に無理やり起こされた感じですか?

「ホント、もうちょっと冬眠するつもりだったので、5回くらい断ったのに無理やり起こされて。榊原さんは『いつまで寝てるの』って言ってましたけど、俺はRIZINのナンバーシリーズに3大会連続で出ることになるんです。だから、誰よりも冬眠してないと思うんですよ。それで休もうかなと思ってたんですが、やっぱり熱意に押されてね」

――榊原CEOが『TRIGGER』(2月23日)の際に、皇治選手に参戦を呼びかけていましたね。

「いきなり『RIZINのために男気を見せてほしい』と。あそこまで言われて、今まで"漢"のあり方を語ってきた俺が出なかったらカッコ悪いと思いましたし、何より格闘技愛と"RIZIN愛"があるので。『ここでひと肌脱がないと漢じゃない』と思いました」

――昨年6月以来の地元・大阪での大会になります。

「でも今回は、『オープニングファイトでいいくらいだな』と思っていたんです(実際はメイン前の15試合目)。格闘技はなんだかんだで結果が一番。その点で俺は、結果が残せてませんから。昨年の大阪大会では、自分からお願いしてキックのトーナメントを作ってもらったのに、ぶち壊してしまったし(1回戦の梅野戦はバッティングでノーコンテスト。負傷の梅野に代わって出場した決勝は判定負け)。だから本当に、謙虚な気持ちでいます」

――冬眠を宣言して以降、練習はしていたんですか?

「マジで、フィットネス感覚でやってました。あと、運転免許を持ってなかったんで教習所に行って、隣におっさんの教官を乗せてましたよ。今までは時計を買ったり、豪遊したりする姿を見せてましたけど、今度はスーパーカーでも買っちゃおうかなって思って。今はまだ仮免許なんですよ」

――これからという時に、出場を打診されたんですね。

「そうです。なんで仮免で大阪大会に出なあかんのかと(笑)。授業もみっちり入れてたのに、試合が決まったらそんな場合じゃないじゃないですか。試合が決まったのも20日前でしたから、急ピッチで練習を再開しました」

「バッティングしてしまう可能性は大いにある」

――魔裟斗さんを育てたトレーナー陣、飯田裕トレーナー(ボクシングトレーナー)、土居進トレーナー(フィジカルトレーナー)らとの練習ですか?

「そうですね。ガッツリやってます。あとは古巣の『SFKキックボクシングジム』の寒川(慶一)代表も。 K-1に上がるまでずっと見てもらってたので、そこでは『昔の動き』をするために見てもらってます」

――昔の動きというのは?

「昔ね、俺はアウトボクサーやったんですよ。試合後も顔に傷がないくらいだったのが、最近はボロボロなんで。もちろんファンが激闘を見たいのはわかってるし、そういうスタイルに変えて戦えたからここまで来させてもらったんだけど、殴り合いをし過ぎやなと。やっぱり勝たないといけませんからね。昔のスタイルと、今のスタイルを掛け合わせた新しい戦い方を作ってます」

――飯田トレーナーがついたのは、前回の梅野選手との試合のあとですよね?

「去年の10月からスタイルを作ってる最中で、『普通はそんな早く完成しない』と言われているから、今回の出場は反対されてます。でも、そこで挑むのも俺らしいなと。バッティングしてしまう可能性は大いにありますよ(笑)。これね、『開き直ってる』ってよく言われるんですが、そうじゃないんですよ。それを改善するために冬眠してたのに、無理やり起こしてきたんやから。1回のバッティングはアリ、くらいにしてもらわないと(笑)。ホンマにわざとじゃないし、改善しようと必死で頑張ってます」

――会見で顔を合わせた、梅野選手の印象は?

「まぁ、ひょっとこ(皇治は梅野のことを"ひょっとこムエタイ"と呼んでいる)は、『俺に感謝せぇよ』って感じですよ。『ヒジ有りのルールで』とか言ってましたけど、そもそも俺が出る決断をしなかったら彼は試合ができないし、RIZINのリングにも上がれないわけだから。『身の程をわきまえろ』と思ってます」



ひょっとこの仮面をかぶってインタビューに答える場面も

――昔は皇治選手が上の選手に挑む立場でしたが、近年は狙われることも増えましたね。それに皇治選手も応えていますが......。

「(昨年末に戦った)YA-MANくんの時もそうだったけど、『ボランティアしすぎやな』って。でも自分は、RIZIN のチャンピオンじゃないし、K-1のチャンピオンでもないから上の人とやる権利があるはず。チャンピオンは下からの挑戦を受ける義務があると思うんですけど、俺は本来、挑戦者でいる権利があると思うんですよね。

 それなのに、挑戦を受けて試合することが増えて、あまりモチベーションも上がらない。本音は上の選手とガンガンやりたいけど、いかんせん最近は成績が残せていないですからね。そこは素直に悔しいなと思っているし、しっかり結果を出してから、また発言しようと思ってます」

――梅野選手との試合は、結果にこだわる?

「そうですね。去年の大阪大会の時に初めて......あんまりこんな言い方はしちゃダメですけど、ホンマに『死んだ方がマシ』と思ったんです。それくらい自分に失望しました。表に出る時は相変わらずヘラヘラしてますけど、あの時はマジで悔しくてどうしようもなかったです。だけど、そんな日々をたくさんの人に支えられて、またリングに上がれる。いい加減に恩返しをしないと漢じゃないですね」

究極の負けず嫌い「ボロボロ涙が出る」

――追い込まれても諦めない皇治選手の生きざまも含めて、応援してくれるファンが多いんじゃないですか?

「誇れることかどうかわからないですけどね。去年に出した自分の本(『凡人の勝算 最後に勝つヤツの思考法』/宝島社)でも書いたんですけど、世の中は、凡人のほうが多いと思うんですよ。天才で一気に上がっていく人よりも、俺みたいな人が多いはず。少しでも、そういう人たちの力になれるように気張らんと、といつも思ってます。こんな波瀾万丈のファイターはいないですよ」

――K-1とRIZINで皇治選手を知った人は多いと思いますが、実は、K-1に出るまで11年かかっているんですよね?

「11年? いや、もっとちゃうかな......15歳で始めて26歳でK-1出たから......11年で合ってました(笑)。RIZIN に出てから俺を知ってくれた人もいると思うけど、そういう人たちからしたら訳がわからん存在でしょうね。結果を残せていないのに、いい扱いをしてもらって試合ができているから。さっきも言ったけど、そういう人たちに認めてもらえるような結果を出せていないのは悔しいです。だから諦めたくない。逃げたら絶対に楽だけど、そうしたくないんです」

――冬眠を宣言してから休んでいた期間はいかがでしたか?

「『こんな楽なことはない』と思いましたよ。コロナ禍で気をつけながらですが、遊びたい時に遊んで、女の子ともご飯に行って。シンドイことをせずに自由にできる。でも、やっぱりどこかで引っかかるものがありました。『このままじゃ死ねない』と」

――これまで、いろんなものを手に入れてきたと思いますが、今は結果がほしい?

「究極の負けず嫌いなんです。32歳になって、表ではその部分を見せないようにもなったけど、ひとりになったりしたらボロボロ涙が出ますね。マジで孤独感がある。そこでチャラけて逃げることは簡単です。俺の夢は『有名なって、お金を手にすること』だったから、『もう果たしたわ!』とも言えるし、次の人生に挑んでもいいとも思う。でもやっぱり、結果を出すまではなかなかそっちにはいけないんですよ」

――皇治選手が、陰で泣いているイメージを持っている人は少ないでしょうね。

「『女の子の腕の中で泣いてる』とか、冗談で言ったりしますけどね(笑)。でも、去年はホンマに悔しかったなぁ......。大晦日のRIZINも、まあ全選手がそうだろうけど、『敗けるわけがない』と思ってやってたんで。お金、期待、命も懸けてリングに上がってるから、背負うものが多くなったからこそ悔しさも倍増したのかもしれませんね」

「白黒はっきりつけます」

――オファーから試合までの期間がかなり短いですが、試合までに仕上げられそうですか?

「準備期間が20日間だから、みんな不可能やと思うでしょうね。ぶっちゃけ、本来は5月頃に復活しようかなと思ってたんですけど、『それが2カ月早まっただけでしょ』と今は思ってます。大会も俺が出ることによって、おそらく話題になってると思うんでね。

 今回、お客さんを呼べるのは萩原(京平)選手くらいだったんじゃないかな。プロの世界は強いのはもちろんだけど、集客力も大事。プロは両方ないとあかん。俺はお客さんを呼ぶことはできると思うんで、あとは結果ですね」

――前回と同じ61キロ契約。一度休んでから短い期間での減量はきつくないですか?

「いやー、あっちが『減量せぇ』と言ってきてね。せめて62キロくらいにしろと言いたいですよ。そっちはずっと練習してたかもしれないけど、こっちは教習所に行ってたんやから(笑)。でも、もちろん選手として、梅野選手を認めている部分はある。だからこそ今回も戦うわけですし。ホンマに白黒はっきりつけますよ」

――ところで、皇治選手は武尊選手、那須川天心選手の両者との対戦がありますね。6月の対決が注目されていますが、どんな展開になると思いますか?

「なんで自分の試合の前に、その2人の話をせなアカンの。同じようなオファーも断ってきたし、ここでお開きということで」

――そこを、男気を見せていただく形でなんとか......。

「......その言葉はズルいわ(笑)。20日の試合より話題になっても困るから、そのあとに記事を出すと約束してくれるならコッソリ教えますよ」

――ありがとうございます!

「ちゃんと試合見てくださいよ?(笑)読者のみなさんも応援よろしくお願いします!」

(取材協力:TEAM ONE)

【プロフィール】
■皇治(こうじ)
1989年5月6日生まれ。大阪府出身。
日本拳法の師範であった父の影響を受け、4歳から始めた日本拳法、空手の大会でも好成績を残す。プロ転向後、初代HEATキックルールライト級王座、ISKA K-1ルール世界ライト級王座を獲得。2016年より主戦場をK-1に移して人気選手に。地元・大阪での2018年12月の大会では、メインイベントで武尊と壮絶な殴り合いを演じた。2020年7月、RIZIN参戦を発表した。