チャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント1回戦第2戦の第2週。マンチェスター・ユナイテッド対アトレティコ・マドリー…

 チャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント1回戦第2戦の第2週。マンチェスター・ユナイテッド対アトレティコ・マドリード、アヤックス対ベンフィカ、リール対チェルシー、ユベントス対ビジャレアルの4試合のなかで、順当な勝利を収めたチームは、チェルシーだけだった。

 他の3試合は、前評判が低かったチーム(アトレティコ、ベンフィカ、ビジャレアル)が勝利を収め、ベスト8に進出することになった。

 思わぬ大差となったのは、第1戦を1-1で折り返したユベントス対ビジャレアルだった。第2戦はビジャレアルが0-3(合計スコア1-4)でユベントスを撃破した。といっても、試合を60対40の関係で押し気味に進めていたのはホームのユベントス。支配率、決定機の数で上回った。だが、ゴールが決まりそうな気配は最後まで漂わなかった。

 そのほぼすべてがビジャレアルのゴールに正面から向かっていったことと深い関係がある。ビジャレアルのGKヘロニモ・ルジは、ユベントスFW、ドュサン・ブラホビッチ、アルバロ・モラタらが放ったシュートに、その少し前のタイミングで身構えることができていた。

 サイド攻撃はサイドハーフにより単独攻撃だけで、クロスはプラスの角度のボールばかり。センターバック(CB)やGKが難しい対応を迫られるマイナスの折り返しは、ほぼゼロだった。ユベントスは攻めあぐんだわけではない。試合を優勢に進めていた。しかし、ビジャレアルを慌てさせることができなかった。

 正直な攻撃をくり返しているうちに、後半の半分が経過。強者ユベントスにとって嫌な展開になっていた。そのタイミングで登場したのが、ジェラール・モレノ。故障明けでベンチスタートとなったビジャレアルのエースが後半29分にピッチに現れると、流れは一変。その4分後に先制点を奪うと、後半40分、さらにアディショナルタイムにも得点を加え、0-3とした。



前評判の高かったユベントスを下したビジャレアルのジェラール・モレノ

 ユベントスは3年連続でベスト16に終わった。準優勝した2014-15シーズン、2016-17シーズン当時の勢いはもはや失われている。

久保建英の元同僚たちが躍動

 イタリア勢全体にも同じことが言える。ミラン、アタランタはグループリーグ落ち。ユベントスとともにベスト16入りしたインテルも、リバプールに完敗した。ベスト8の内訳は、イングランド、スペインがそれぞれ3、ポルトガル、ドイツがそれぞれ1。UEFAリーグランキングで、イングランド、スペインに次いで3位につけるイタリアにとって、これはいささか残念な結果と言わざるを得ない。ユベントスならびにイタリアのこれからに注目したい。

 ビジャレアルといえば、日本人には2020-21シーズンの前半、久保建英が在籍していたクラブとして知られている。2019-20シーズンにスペインに渡り、レアル・マドリードのレンタル選手としてまずマジョルカでプレーした久保。その翌シーズン、同じくレンタルとはいえ、ビジャレアルでプレーすることは選手としての格が上がったことを意味した。

 そのシーズン、ヨーロッパリーグに臨んだビジャレアルは快進撃を続け、見事優勝を遂げる。だが、シーズン前半でチームを去った久保はその美酒を味わうことができなかった。その後、ヘタフェ、マジョルカとレンタル移籍をくり返す久保に対し、ビジャレアルは今季、CL本大会に出場。ユベントスを破りベスト8入りしたことで、久保にとっていっそう敷居の高いクラブになった。

 1シーズン前、ビジャレアルで久保とポジションを争い、勝利した格好のサミュエル・チュクウェゼ(ナイジェリア代表)は、ビジャレアルで今季も出場機会を確実に得ている。ナイジェリアは、日本がW杯ベスト8を目標に据えるのなら、ライバルのような存在だ。久保がチュクウェゼに遅れをとる姿は、代表チーム強化という観点からも好ましくない。

 そして、第1戦を2-2で折り返したアヤックス対ベンフィカは、終始押し気味だったアヤックスが、後半32分、ダルウィン・ヌネスにゴールを許し、まさかの敗退を喫した。下馬評で優勢が伝えられていたアヤックスは、攻撃が慎重になりすぎてしまった。強者を相手に戦うと強さを発揮するが、同等以下だと「負けられない戦い」に陥り、チャレンジャー精神を失う。好チームが陥りがちな呪縛にハマるパターンを演じてしまった。

日本のライバル国の選手たちが活躍

 マンチェスター・ユナイテッド対アトレティコは、後者のしぶとさが勝った。アトレティコらしい勝ち方だった。ただ、サッカーそのものはかつてよりさらに守備的になっている。5バックで守りを固めることに罪悪感を抱かない、恥も外聞もないサッカーを展開する。このスタイルのサッカーに幸せな未来が待っているとは思えない。ジョアン・フェリックスをはじめ好選手が多くいるのだから、もう少し正攻法で戦ってほしいと考える。

 日本人のチャンピオンズリーガーは南野拓実ただひとりに終わった(ただし決勝トーナメント1回戦の出場はなし)。決勝トーナメント1回戦を戦った各チームの顔ぶれを見ると、チュクウェゼのような、W杯本大会で倒さなければベスト8を狙えないライバル関係にある国、具体的にいえば、W杯本大会の抽選で第3シードに入りそうな国々の選手が多くいる。ビジャレアルでは、チュクウェゼに加え、セルジュ・オーリエ(コートジボワール)、ペルビス・エストゥピニャン(エクアドル)がそれに該当する。

 リール対チェルシー戦に出場した選手では、ジョナサン・デイビッド(カナダ)、ティモシー・ウェア(アメリカ)、ゼキ・チェリク(トルコ/以上リール)、クリスティアン・プリシッチ(アメリカ)、ハキム・ジエク(モロッコ)、エドゥアール・メンディ(セネガル/以上チェルシー)になる。

 アヤックス対ベンフィカでは以下がそうだろう。セバスティアン・ハラー(コートジボワール)、エドソン・アルバレス(メキシコ)、ノウセア・マツラウイ(モロッコ)、アンドレ・オナナ(カメルーン/以上アヤックス)、アデル・タラブト(モロッコ)、オデッセアス・ヴラホディモス(ギリシャ)、バレンティノ・ラザロ(オーストリア/以上ベンフィカ)。

 マンチェスター・ユナイテッド対アトレティコ戦でも、アトレティコ側にヤン・オブラク(スロベニア)やジョフレイ・コンドグビア(中央アフリカ)がいた。

 CL決勝トーナメントの舞台に立った日本人選手がゼロであることに、もう少し危機感を持つべきではないか。CLベスト16の戦いを見ていると、カタールW杯が心配になるのだった。

 そこで、決勝トーナメント1回戦第2戦に出場した16チームの選手の国籍(国籍と異なる国の代表チームでプレーしている場合はそちらを優先)を、以下のようにランキング化してみた。

1)スペイン=25人 
2)ブラジル=22人 
3)ポルトガル、フランス=21人 
5)イングランド=18人 
6)ドイツ=14人 
7)イタリア、アルゼンチン=13人 
9)オランダ=12人 
10)ウルグアイ=7人 
11)オーストリア=6人 
12)クロアチア、モロッコ=5人 
14)ベルギー=4人 
15)デンマーク、ポーランド、セルビア、トルコ、アメリカ、カメルーン、スロベニア、セネガル=3人 
23)コロンビア、コートジボワール、ナイジェリア、スウェーデン、メキシコ、ウクライナ、スコットランド、アルジェリア、チリ=2人 
32)エクアドル、カナダ、ギリシャ、ガーナ、モザンビーク、モンテネグロ、中央アフリカ、マリ、スイス、エジプト、スロバキア、ギニア=1人

 国の数は43に及んだ。このなかに日本の名前がないのは大問題と言うべきではないか。CLの決勝トーナメントを戦う選手が複数いないと、W杯の決勝トーナメントで強国相手に番狂わせを演じることは難しい。