Mリーグ女流雀士インタビュー(5)瑞原明奈@後編 いよいよポストシーズンに突入するMリーグ2021。3月21日からのセミ…
Mリーグ女流雀士インタビュー(5)
瑞原明奈@後編
いよいよポストシーズンに突入するMリーグ2021。3月21日からのセミファイナル、4月18日からのファイナルでは、優勝賞金5000万円をめぐる次なる戦いが待っている。
2019年はレギュラーシーズン6位から巻き返して初優勝を遂げながらも、昨年はレギュラーシーズン敗退の憂き目にあったU-NEXT Pirates。今シーズン、チームを牽引してMVPにも輝いた瑞原明奈(最高位戦日本プロ麻雀協会)に2度目の優勝への意気込みを訊いた。
ふたりの子どもを育てながらMリーガーを続けられる理由「お金は説得力になる」」
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瑞原明奈(みずはら・あきな)1986年11月19日生まれの35歳
---- 瑞原選手は今シーズン、ずば抜けて高い連対率(2着以内に入ること/レギュラーシーズン終了時=85.7%)を誇っています。今季から何か戦い方を変えたのですか?
「1年目と2年目では麻雀の細かい打ち方は変えましたけど、2年目と今季(3年目)ではあまり変えていないですね」
---- 2年目の変更点はどういうところでしょうか?
「たとえば、鳴き仕掛けをする時の基準をちょっと高くしました」
---- なんでもかんでもポンやチーをするわけではない、ということですね。
「そうですね。あとは愚形リーチを減らして、好形になるように道中の手組みを変えたり。そういう細かいところでいろいろありますね」
---- デジタル思考な打ち手が揃うチームにあって、そこが瑞原選手とほかのメンバーで違うところなんですね。
「けっこう違うと思います。肩身が狭いです(笑)」
---- 雀風が違うことでのメリットやデメリットはありますか?
「私にとってはプラスに働いていることが多いですね。私はけっこう押しすぎちゃうところがあるんです。たとえば、親リーチに対して危険牌が2個も3個もあるのに攻めようとするとか。
さすがに私もそこまではしないですけど、冷静になって客観的に見れば『もう無理だよね』っていう状況でも、前に出たくなってしまうんですね。でも、押そうとすると、脳内でチームメイトの『もういい加減やめとけ』って声が聞こえて(笑)」
---- ほかにもありますか?
「門前(鳴いていない状態)にこだわりすぎるというのもよくないところ。門前にして高打点を狙いたくなるんですけど、『やっぱりここを鳴かないとアガりは厳しいよね』という牌が出た時に、脳内でみんなが『鳴け!』って言うから鳴いたり。その声を無視することもあるんですけど(笑)。脳内チームメイト3人から同時に言われると『わかったよ、鳴くよ』ってなります(笑)」
---- その取捨選択が今年は抜群にいいわけですね。
「そうですね。自分のよくない癖が出そうな時に、雀風が違うチームメイトたちの声が聞こえて、バランスを取れるようになっているなと感じています」
---- 今季の対局で会心の一局があれば教えてください。
「いくつか思い浮かぶんですけど、去年の12月23日の対局ですかね」
対局者はEX風林火山の二階堂瑠美選手(日本プロ麻雀連盟)、セガサミーフェニックスの近藤誠一選手(最高位戦日本プロ麻雀協会)、渋谷ABEMASの多井隆晴選手(RMU)。オーラス開始時の展望状況は、多井選手が43600点、近藤選手が27100点、瑞原選手が15500点、二階堂選手が13800点。瑞原選手は親番を連荘できれば点数を上乗せできる反面、テンパイノーテンだと二階堂選手にまくられて4着転落の可能性もあるなか、勝負はスタートした。
---- オーラスは2着目の近藤選手が役牌をポンして仕掛けてきましたよね。
「そのすぐあとに近藤選手のロン牌の3ピンを持ってきちゃって。3ピンは自分の手牌では使えなかったんですけど、手牌にとどめて形を崩して、最終的にテンパイできたというのがあって。
私はいろいろ考えはするけれど、ベースが直線的なタイプなんですね。少し前までなら『この牌を止めたところで、連荘ができなくなるから押すしかないだろう』と考えていたと思うんです。でも、3ピンの危険度だったり、まわりの状況だったりを考えて止めて。以前までよりも視野を広く、冷静に見られるようになっているかなと感じた一局でしたね」
---- それはMリーグというステージに慣れてきた、というのもあるんでしょうか?
「それも少しはあると思います。私は放送対局を見て麻雀を覚えたので、1年目は特にその番組に出ていた有名プロの方々に混じって闘うことへの緊張はやはりあって。冷静になるために『この人はジャガイモ』とか、対局者のことを野菜に見立てたりしていました」
---- 適応するための努力が実を結んでいるのが今季なんですね。
「2年目、3年目と経るごとに、ほかのMリーガーの人たちとの同卓回数も増えてきて、相手の気配的な情報が入りやすくなってきましたね。クセや傾向をピンポイントでわかっているわけではないんですけど、無意識下で入ってきているものがあって。そういうものを冷静に捉えられるようになったのは、それだけ落ち着いて打てるようになったんだなということでもありますよね」
---- 3年目の今季、瑞原さんの表情も豊かになっていますよね。
「悪い意味での緊張感がなくなって、素で打つようになっちゃったら、対局中に変な顔を......(苦笑)」
---- 勝負としてはポーカーフェイスのほうがいいのでしょうが、麻雀に精通していない視聴者にとっては、プロ雀士が思わず変顔になるくらい大事な局面なんだというガイドラインになると思います。
「ただ、あとで映像を見返して、ビックリするぐらい変な顔をいっぱいしてましたからね(笑)。前半戦は特に。なので、最近は反省して表情も気を抜かないように打っています(笑)」
---- お子さんはMリーグを見たりするんですか? お母さんがテレビに出ていたら喜んでいるんでしょうね。
「麻雀は知っているし、テレビで麻雀を打っているのは認識しているようですが、まだゲームの内容はまったくわからないみたいですね」
---- 「ママ、今日は勝ったの?」と聞かれたりするんですか?
「しますね。私はMリーガーになる前にプリンセスリーグというタイトル戦で優勝したんですけど、その時に『優勝したらオモチャを買ってあげるよ』って約束をしちゃって。それから願掛け的な感じで『勝ったらオモチャを買ってあげる』という約束をするようになっていて。だから、子どもたちは私が勝ったら喜んでいます」
---- 今季は7回トップで勝っているので、だいぶオモチャを買われましたね(笑)
「でも、1勝ごとにではなくて、5勝したらっていう約束なんで。それは今シーズンは果たせました。あとはMVPを獲ったら、またオモチャを買うという約束をしています」
---- MVPはレギュラーシーズンの個人スコアトップの選手に与えられるタイトルですが、瑞原選手は現在トップに立っています(※取材日はレギュラーシーズン終了前の2月21日)。ただ、2位以下には沢崎誠選手(KADOKAWAサクラナイツ/日本プロ麻雀連盟)、堀慎吾選手(KADOKAWAサクラナイツ/日本プロ麻雀協会)、滝沢和典選手(KONAMI麻雀格闘倶楽部/日本プロ麻雀連盟)、松ヶ瀬隆弥選手(EX風林火山/RMU)と錚々たる顔ぶれが並びます。MVPに向けた意気込みを教えてください。
「『MVP』と子どもたちに言ったのは、5勝の次の目標を立てるのが難しかったからで(笑)。私が平日夜という少し特殊な時間に仕事に出ていることで、子どもたちも多少は寂しい思いをしているので、それに対して『ごめんね』と『応援してくれてありがとう』の気持ちを込めたものなんですよね。
もちろんMVPが獲れたら身に余る光栄ですし、言うまでもなくうれしいですが、変に意識しすぎず、常にチームファーストの精神を忘れずにいたいです」
---- 目標は優勝だと思うんですが、セミファイナル、ファイナルというポストシーズンに向けた抱負を教えてください。
「パイレーツは今年もファイナルに進めないと、来シーズンはルールでチーム編成を変えなきゃいけないんですね。だから必ずファイナルに残って、最後まで4人でしっかり戦い抜きたい気持ちがとても大きいです」
(第6回につづく)
【profile】
瑞原明奈(みずはら・あきな)
1986年11月19日生まれ、長崎県佐世保市出身。早稲田大学を卒業後に一般企業に就職するも、結婚をきっかけに退職。2014年に日本プロ麻雀協会でプロ雀士となる。翌年、妊娠・出産を経て、2017年に最高位戦日本プロ麻雀協会に移籍。2019年、Mリーグのドラフト会議にてU-NEXT Piratesから指名を受けてMリーガーとなる。