チャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント1回戦の第2戦。今週は全8試合中、バイエルン対ザルツブルク、リバプール対イ…

 チャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント1回戦の第2戦。今週は全8試合中、バイエルン対ザルツブルク、リバプール対インテル、マンチェスター・シティ対スポルティング、レアル・マドリード対パリ・サンジェルマン(PSG)の4試合が行なわれた。

 バイエルン、リバプール、マンチェスター・シティ。英国のブックメーカー各社から優勝候補の上位に推されていた3チームがベスト8に進出することは、戦前からあらかた予想できた。難しかったのは、レアル・マドリード対PSGだ。

 初戦の結果は1-0でPSG。試合内容でも競っていた。キリアン・エムバペの決勝ゴールが決まったのは後半48分。アディショナルタイムに起きた出来事だった。

 第2戦。苦しい立場に置かれていたのは、フェルランド・メンディ、カゼミーロの2人が累積警告で欠くホームのレアル・マドリードだった。一方のPSGは、第1戦では故障明けということで大事をとり、後半28分からの交代出場にとどまっていたネイマールが先発に復帰。自慢の3トップ(MMN)を編成し、準備万端の構えでこの試合に臨むことができた。

 PSGのユニフォームを着たメッシを生で見るのは初めてだったと思われるサンティアゴ・ベルナベウに詰めかけたマドリディスタは、その姿を見てどのような印象を抱いただろうか。開始10分後、少なくとも20分後には、恐れるに足らぬと判断したのではないか。この試合を分けたキーポイントのひとつだったと思われる。



レアル・マドリードに敗れたパリ・サンジェルマンのリオネル・メッシとネイマール

 開始早々から意地を見せたのは、1点を追いかけるホームのレアル・マドリードだった。高い位置から激しいプレスをかけ、PSGの混乱を誘おうとした。光ったのは、左ウイングのヴィニシウス・ジュニオールとカリム・ベンゼマ。ヴィニシウスがPSGのDFを向こうに回し堂々と仕掛け、縦にボールを運べば、ベテランCFベンゼマも気合いを漲(みなぎ)らせ、可能性のある動きを見せていた。ヴィニシウスのみならず、ベンゼマも左に流れる傾向がある。左サイドから、ゴールに対し斜めに侵入していくプレーに一日の長がある。レアル・マドリードはしたがって、左からの攻めが冴えた。

昨季まで違った1点の重み

 メッシが右ウイングとして構えたこともその傾向を後押しした。なによりメッシに、守備に加わる意思を感じなかった。PSGは右インサイドハーフのダニーロ・ペレイラが、メッシのカバーに回り、右SBアフラク・ハキミと2人でヴィニシウス、ベンゼマの動きに対応したが、メッシの存在が足枷になっていたことは確かだった。

 だが、ほどなくするとPSGも反撃に転じた。こちらも攻撃は左に偏った。主役は左ウイング、エムバペになる。この選手が左サイドを爆発的なスピードで駆け抜けると、レアル・マドリードは途端に慌てることになった。お互い、左から攻め、右で守ることになったため、ピッチには時計回りの流れが生まれた。

 前半39分、レアル・マドリードの右SBダニエル・カルバハルは、対峙するエムバペを向こうに回し、頑張って高い位置を取ったものの、ボールを失ってしまう。そして背後をエムバペに爆発的なスピードで走られ、シュートも決められた。

 これでレアル・マドリードは合計スコアを0-2とされた。アウェーゴールである。昨季までならダメ押しゴールに値した。ここからレアル・マドリードが2点を奪い通算スコアを2-2としても、軍配はアウェーゴールルールに基づきPSGに上がる。しかし、それが撤廃された今季、エムバペのゴールは付加価値のない単なる1点にとどまる。1点の重みは昨季までと大きく違っていた。

 この違いに敏感に反応したのはレアル・マドリードで、鈍感だったのはPSGだった。これがショッキングな失点ではないことにいち早く気づいて、レアル・マドリードはラッキーを実感することになったのではないか。対するPSGは事態を実感できぬまま、フワッとした気持ちでプレーしてしまった。そんな感じだ。

 ホームであることもレアル・マドリードにとってはラッキーだった。スタンドを埋めた観衆と一緒になってその事実に認識したことで、自らのラッキーを共有することができた。それが相乗効果となってピッチに反映されたと見る。

エムバペのワンマンチームに

 加えてメッシだ。試合のスピード感についていけない様子が、観衆には手に取るようにわかったはずだ。スピードスターであるエムバペと同じピッチに立ったことで、その事実はより際立って見えた。ボールを縦に運ぶ力、すなわちアタック能力において、両者に著しい差があることが、白日のもとに晒されることになった。

 冴えのなさという点では、ネイマールも負けていなかった。間の悪いプレーを頻繁に露呈し、足を引っ張った。ケガから復帰して間もなくで、単に試合勘を取り戻せていないという理由ならいざ知らず、もともとMMNと称されるほどのスーパースターだったのかと疑いたくなる、残念なプレーも目についた。

 メッシとネイマールは元バルサの一員だ。両者の不出来は、サンティアゴ・ベルナベウを埋めたマドリディスタをいっそう勇気づけることになった。PSGはエムバペのワンマンチームと化していた。

 後半16分、GKジャンルイジ・ドンナルンマのミス絡みでトータル1-2とされると、PSGの楽勝ムードは一転する。お尻に火がついた状態となった。浮き足だったと言うべきだろう。後半31分の同点弾。その直後のキックオフから生まれた逆転弾(後半33分)には、そうした意味で必然があった。

 ベンゼマ、ヴィニシウス、ルカ・モドリッチらは、強かった頃のレアル・マドリードを想起させるワンランク上のプレーをした。しかしここでは、当代随一の金満クラブPSGの情けなさを、それ以上に強調したくなる。

 この試合でメッシ、ネイマールは結局、フル出場した。マウリシオ・ポチェッティーノ監督は、選手を3人しか代えられなかった。負け方として問題あり。先行きに不安を感じさせるPSGの敗退劇だった。これでもし来季、エムバペにチームを去られたら、CL優勝の夢はしばらく遠のくに違いない。