吉田優利インタビュー(前編)2018年に日本女子アマと日本女子ジュニアというアマチュアのビッグタイトルを手にし、2020年に大きな期待を背負ってプロデビューを果たしたのが、2000年に生まれた『ミレニアム世代』のひとり、吉田優利だ。およそ1…

吉田優利インタビュー(前編)

2018年に日本女子アマと日本女子ジュニアというアマチュアのビッグタイトルを手にし、2020年に大きな期待を背負ってプロデビューを果たしたのが、2000年に生まれた『ミレニアム世代』のひとり、吉田優利だ。およそ1年半に及んだデビューシーズンでは、昨年7月の楽天スーパーレディース、同9月のゴルフ5レディスと計2勝を挙げた。いよいよ大輪の花を咲かせようとしている彼女に、プロツアーで戦う手応えと、飛躍が期待される2年目のシーズンへの意気込みを語ってもらった――。



2021年の楽天スーパーレディースでツアー初優勝を飾った吉田優利

――12試合に出場した2020年は、最高順位が19位タイ。賞金ランキングは57位でした。コロナ禍によって2021年と統合されたシーズンとなり、終わって見ればシーズン2勝を挙げ、賞金ランキングも22位までジャンプアップ。充実の一年を送れたのではないですか。

「2020年を終えた段階で、"フィジカル面の絶対的なアップ"というのが大きなカギでした。もちろん、戦えない身体ではなかったと思うんですけど、毎週しっかり戦える体力と、一日18ホールを回っても翌日にちゃんと疲労回復できるような体力が(当時は)まだありませんでした。そこを、2020年のオフに強化できたと思います」

――トーナメントを転戦する生活のリズムをつかめた、ということでもあるのでしょうか。

「なんとなく、どういうふうに移動して、どういう生活をすれば、疲労を残さずに戦えるか知ることができたのは大きいです」

――昨年もこの時期にお話をうかがったのですが、「波のない選手になりたい」とおっしゃっていたのが印象的でした。

「そうですね。ただ、昨年の後半戦は調子を落としていて......。そして、最終戦まで完全に復調するまでには至りませんでした。そこは、悔いの残るシーズンでしたね。今年は後半戦も活躍できるようにしたいです」

――初優勝は昨年7月末に行なわれた楽天スーパーレディースでした。そこに至るまでに、何かターニングポイントはありましたか。

「その約3カ月前のKKT杯バンテリンレディスで優勝争いができたこと。結局、勝てなかったんですけど、調子が上向いてきて『(近いうちに)勝てそうだな』と思えた試合でした」

――それまでの最高順位となる4位タイで戦いを終えた試合ですね。

「そうです。その試合までは、セカンドショットでそこまで大きなミスをしているわけではないのに、パーオン率が上がってこなくて。そのことがスコアを落としていく原因になっていました。逆に、ショートゲームは1年間ずっと安定していたんですよね。とにかくショットを洗練していけたら、上位で戦えると思えた試合でした」

――初優勝は、ちょうど東京五輪のゴルフ競技が行なわれている日程とかぶっていました。男子とはいえ、大きな注目を集める東京五輪の裏舞台で戦う心境はいかがでしたか。

「私はオリンピックに出ることができなかったので、JLPGAの試合に集中すべきと思っていました。ですから、東京五輪のことを気にすることはなかったというか、自らがプレーしている舞台に集中していました」

――首位と1打差でスタートした最終日は後半の5連続バーディーを含め、トータル8つのバーディーを奪う圧巻の逆転優勝でした。

「追いかける立場でしたから、優勝を意識するよりも『自分がいいプレーをすれば、結果がついてくる』と思ってプレーしていました。とにかくいいスコアで回れるように、と。

 ラウンドしていて、なかなかスコアボードで順位を確認することができなかったんですよね。それで後半に入って、前の組が伸ばしているんだなと把握したところから、私自身のエンジンがかかったような状態でした」

――初優勝がかかった試合では、追われる立場よりも追う立場のほうが気持ちに余裕があるのでしょうか。

「私はトップで最終日を迎えたことがないので、そこはまだわからないですね。ただ、トップにいようが、追いかける立場であろうが、自分がいいゴルフを続けられれば、結果がついてくるのは当たり前なので。自分のゴルフを貫けるかどうか、ではないでしょうか。追われる立場の戦い方というのは、今後勉強していきたいです」

――最終日はティーショットのほとんどがフェアウェーを捉えていました。それも勝因のひとつだったのではないでしょうか。

「それより何より、パーオン率がよかったのが大きかったです。セカンドがピンに寄っていたので、安定していいスコアが出せたんじゃないかと思います」

――2020年にプロデビューして、統一された同じシーズンとはいえ、"2年目"に初優勝。ご自身で、初優勝までの時間は長かったなと思う部分はありますか。それとも、順調なキャリアだと思っていますか。

「いえ(笑)、長かったとは思っていませんよ。いいタイミングで優勝できたんじゃないかな、と」

――初優勝を決めた瞬間の率直な感想を聞かせてください。

「優勝したことはもちろんうれしかったんですけど、初優勝を喜ぶというより、『この興奮をもう一度味わいたい』という感覚のほうが大きかったような気がします。ですから、すぐに『早く2勝目を挙げたいな』と思いました」

――実際、初優勝から1カ月あまりの9月上旬、ゴルフ5レディスで2勝目を挙げました。

「よく『2勝目が1勝目より難しい』と言われるのは、初優勝した時の記憶とか、うれしい感情が先行して、プレーが疎かになるんじゃないかなと考えていました。楽天スーパーレディースの翌週は東京五輪の女子が行なわれた週だったので試合がなかったんですけど、初優勝後はとりあえず、一打一打に集中することだけを考えてプレーしていましたね。

 そうしてゴルフ5レディスを迎えたのですが、その時は調子が完璧という状態ではないなかで、優勝することができました。1勝目とは違うことを学べたし、勝ち方もぜんぜん違ったので、大きな財産になりました。そうやって、結果としていろいろな経験ができて、充実したシーズンになりました」

――調子がいいから勝てるわけではないし、悪いから勝てないわけでもない。

「そういうのも含めて、これがゴルフだな、と学びましたね」

(つづく)

吉田優利(よしだ・ゆうり)
2000年4月17日生まれ。千葉県出身。2019年、プロテストに合格。2020-2021シーズンにツアー本格参戦を果たし、いきなり2勝をマーク。賞金ランキングも22位とルーキーシーズンに堂々たる結果を残す。「黄金世代」に続いて、女子ツアーで話題を振りまく「ミレニアム世代」のひとり。身長158㎝。血液型O。