プロ野球2020開幕特集ヤクルト奥川恭伸インタビュー(後編) 昨年7月26日、公式戦の五輪中断期間中に奥川恭伸(東京ヤク…

プロ野球2020開幕特集
ヤクルト奥川恭伸インタビュー(後編)

 昨年7月26日、公式戦の五輪中断期間中に奥川恭伸(東京ヤクルトスワローズ)は、二軍の楽天戦に先発登板。この試合、マスクを被ったのは星稜高校の1年後輩でもある内山壮真だった。結果は3回を投げて2安打、2三振、1四球、1失点。ボールが先行する奥川らしくない内容だった。

 試合後、奥川はプロの世界で後輩とバッテリーを組んだことの喜びや感傷を口にすることはなかった。

「僕も内山のことを理解しないといけないですし、内山も僕のことを理解しないといけない。そうしないといいピッチングはできないので......」

 インタビュー前編では「先発投手」をテーマに語ってもらったが、後編では奥川が考える「バッテリーの相互理解」「ライバルの存在」について話を聞いた。



昨シーズン、チーム最多タイとなる9勝をマークしたヤクルト・奥川恭伸

バッテリー理解度の重要性

── ピッチャーは唯我独尊が許される存在ですが、奥川投手が以前言っていた「ピッチャーはひとりだけではいい投球はできない」という言葉が強く印象に残っています。この考えはいつ頃からですか?

「プロに入ってからです。僕は小中高とずっと同じキャッチャー(山瀬慎之助/巨人)に受けてもらっていて、プロで初めて違うキャッチャーに受けてもらったのですが、考え方などに差があることでリズムにうまく乗れないというか......。それまで自然とできていたことが、そうならなくなったというか。その時に、お互いが相手を知ることこそが必要なんだと思いました」

── そのためにどのようなことを?

「キャッチャーの方と話す機会が増えました。どういう意図でその球を要求したとか、自分はどういう意図をもってそこに投げたとか。去年はそういうふうに進めていって、投げていくなかで自分の考えているサインとキャッチャーから出てくるサインがすごく合うようになってきたんです。去年成績がよくなっていったのも、そのことが関係しているんじゃないかなと思っています」

── 昨年は中村悠平選手、古賀優大選手とバッテリーを組みました。複数のキャッチャーを知ることで、自分のピッチングに与える影響はありましたか。

「はい、ありました。中村さんと古賀さんとでは同じタイミングでも出るサインが違いますし、僕はそのサインの意図を考えることで理解も深まります。そのことで、自分のピッチングの引き出しの数がひとつだったものが、2つ、3つに増える可能性があります」

── 今年の春季キャンプ、2月8日のブルペンでは古田敦也臨時コーチが見守るなか、内山選手と組みました。低めのボールを内山選手がうしろに逸らすと「キャッチャー、しっかり止めろよ!」と、古田臨時コーチから檄が飛びました。

「あれはいいボールじゃなかったので......。自分がいい球を投げていればキャッチャーも捕りやすいですし、投げていてもいい感触があります」

高津監督、中村悠平が語る奥川

 こうした奥川の考えについて、高津臣吾監督はこんな話をしてくれた。

「基本的にピッチャーはわがままなので、キャッチャーのことを思って投げることってあまりないんです。逆に言えば、キャッチャーはピッチャーのことを思い、リードしていくところが強いのかなと。なので、やっぱり理解ということでは、キャッチャーの役割がすごく大きいと思っています。

 僕は古田さんと長くやってきて、古田さんのことをよくわかっていますけど、古田さんはその何倍も僕のことを理解してくれていたと思います。奥川がキャッチャーのことをどこまで理解しようとしていたかは、頭のなかのことであり、目に見えるものではないのでよくわからないですが、お互いのことを理解しあうことはすごく大事だと思います」

 正捕手の中村は「能力が高いと言ってしまえばそれまでなんですけど......」と前置きしたうえで、奥川についてこう語る。

「キャッチャーとして、たとえばここで勝負したい、カウントをとりたい、ボール球にしたい......といった意図をピッチャーに汲みとってほしいという思いはすごくあります。奥川はその意図を汲みとるレベルが非常に高いですね。ベンチで話していても、僕らの考えを理解しようとしてくれていることが伝わってきます。それに意図したところに投げられる能力の高さがあるので、僕らとしても助かります。その球で勝負が決められるわけですから。

 僕自身は、今は奥川中心のリードを意識しています。どうすれば彼がのびのび投げられるのか。ただ、いずれはチームを背負う投手になっていくので、そのことで責任感も出てきます。そういった時に、また手助けできればなと思っています」

 再び、話を奥川に戻す。

同級生の存在は気になる

── 奥川投手は1年目から「投げることは楽しい」とよく言っています。キャンプ初日も「ユニフォームを着ての全体練習は久しぶりだったので、あらためて投げる楽しさというか、野球をしている感じがして楽しかったです」と話しました。

「緊張もあれば、不安な気持ちもあったりするのですけど、楽しさというのはまだ消えてないですね。それがこれからどうなっていくのか。今は自分でもわからないです(笑)」

── 今シーズンの目標について教えてください。

「まずは1年間をケガなく健康であることを目指しています。数字では、昨年できなかった2ケタ勝利(昨年は9勝4敗)と、規定投球回到達を目標にしています」

── 同級生の宮城大弥投手(オリックス)や佐々木朗希投手(ロッテ)の存在は気になりますか。奥川投手を含め、3人とも日本を代表するエース候補として期待されています。

「もちろん結果は見ますし、気になる存在です。『いいピッチングしたんだ』と刺激を受けるというか、『じゃあ、次は自分も』という気持ちになります。僕が勝手に思っているだけかもしれませんけど、そうやって高めてくれる存在というか......僕はそう思っています」

*     *     *     *     *     *     *

 今年のキャンプで奥川の練習する姿を見て感じたのは、プロ3年目にして「特別なピッチャー」という存在感を醸し出していることだった。誰もが認める絶対的エースへ、今年はどんな成長曲線を描いてくれるのか楽しみでならない。