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■1試合5時間を超えるスポーツ、野球

 MLBでは今季から「敬遠申告制」が導入されていることをご存じだろうか。審判に申告すれば、その時点で打者を一塁に歩かせることができ、投球せずとも敬遠を実行できるというルールだ。MLB機構はこの施策を試合時間短縮の一環としているが、仮にNPBでも採用された場合、果たしてどれくらいの時間を短縮できるのだろうか。そこで今季のNPBで敬遠1回あたりに要した時間を算出すると、どれも1分弱となっていた。これを長いと捉えるか、短いと捉えるかは人それぞれかもしれないが、そもそも敬遠自体が昨季6.5試合に1回程度しか起こらなかった珍しいイベント(MLBは約2.6試合に1回)。このことを踏まえると、採用されたとしてもシーズン全体の平均試合時間に大きな影響を与えるとは考えにくいだろう。
 それでは「試合時間」とは、一体何に左右されているものなのか。今回は、野球の試合時間に関するデータを見ていきたい。なお、このコラムで取り扱う試合はすべてコールドゲームを除外している。

 まず、今季の試合時間トップ3を長短の双方でまとめたのが表1だ。最短は西武・ウルフが7回をわずか69球で投げきり、そのまま継投で白星を挙げた試合。最長試合は開幕して間もない4月1日の広島-阪神だった。この一戦は、先発・岡田明丈(広島)が4回を投げて7四球、一方の岩貞祐太(阪神)も5回で5四球の乱調。9回終了時に両軍合わせて26四球を与え、プロ野球タイ記録となった試合だ。結果的には9-8で広島がサヨナラ勝ちを収めるが、決着までには5時間24分を要した。これは、すでに昨季の最長試合である6月7日のオリックス-中日(5時間13分)を超える長さだ。

■短い試合と長い試合は、何が違うのか

 次に9回裏で終了した試合に限定し、試合時間の短いものと長いものの上位を抽出。それぞれに試合時間と関連があると思われる4つの項目を付け加えたのが表2だ。やはり短い試合は投球数や打者数が少なく、長い試合では多いという傾向が出ている。得点に関してもおおむね短い試合はロースコア、長い試合ではハイスコアだが、4時間2分かかった4月11日の巨人-広島は3点のみで、少なからず例外もあるようだ。ちなみに9回裏で終了した最短試合のひとつ、4月2日の日本ハム-西武もウルフが先発していた。

 各項目と試合時間の関係性をもう少し詳しく知るために、表3では昨季の試合を対象に四球や失策など、さまざまな項目と試合時間の相関係数を求めた。これが「1」に近い項目ほど、試合時間との結びつきが強いことになる。想像に難くないが併殺打や本塁打など、試合の中で発生回数がそれほど多くない項目は、試合時間とほとんど無関係に近いといえる数字が出ていた。一方で非常に強い相関を見せたのが、やはり投球数や打者数だった。中でも投球数との相関係数は0.900となっており、ピッチャーがボールを投じるという動作の回数と、試合時間の間には大きな関係がありそうだ。

■投球数から試合時間を推定する

 上のグラフは、各試合の投球数を横軸、試合時間(分)を縦軸にとったものだ。これを見ても、投球数と試合時間には一定の関係性があるのがよく分かる。全体の傾向として、投球が10球増加すると、試合時間は平均で約7分長くなるようだ。そして、グラフから導き出されるのが、

試合時間(分) = 投球数 × 0.6781 - 10.0123

という数式だ。これを用いれば、投球数からおおよその試合時間を推定することが可能となる。

 試しに、5月3日に行われた6試合をサンプルとして抜き出し、推定試合時間を算出したのが表4だ。すると、最も差が大きかったのはヤクルト-阪神の約13分で、ソフトバンク-西武と巨人-DeNAに関しては現実の試合時間との差が2分ほどとなっていた。2016年の試合時間と投球数から導き出されたこの数式だが、17年の試合に関しても同じように推定できるということが分かる。

 最後に余談となるが、この投球数を増やす打者といえば、真っ先に思い浮かぶのが中島卓也(日本ハム)だろう。得意のファウル打ちで粘り、相手投手により多くの球数を強いていく。ファウルは見逃しやボールなどの通常の投球に比べ、次の投球を行うまでにかかる時間が長く、1回あたり約30秒待たなくてはならない。中島の場合も例外ではなく、実際にファウルを打ってから次の投球までの時間を計測すると、平均で30秒ほどかかっていた。これを中島が1年間に打ったファウル数759と掛け合わせると、6時間以上という計算になる。中島のファウルだけで、長編映画がつくれるかもしれない。

 今回は最も関係性の強い投球を中心に試合時間の話をしたが、他にも継投、イニングインターバルなど、さまざまな要素で野球というゲームは構成されている。プレーそのものだけでなく、プレーごとの「時間」を意識の片隅に置きながら野球を見ていくのも、今季の楽しみ方として提案してみたい。

※データは2017年5月4日現在

文:データスタジアム株式会社 小林 展久