試合間隔の短い連戦で、顔ぶれもがらりと変わっている。昨季上位同士の対戦ながら、開始前は疑問符も浮かんだ横浜F・マリノス…
試合間隔の短い連戦で、顔ぶれもがらりと変わっている。昨季上位同士の対戦ながら、開始前は疑問符も浮かんだ横浜F・マリノスとヴィッセル神戸の対戦だったが、ふたを開ければ希有なほどの好ゲームとなった。これほどまでの素晴らしい試合となった理由を、サッカージャーナリスト・大住良之がひも解く。
■連戦の中で生まれた好ゲーム
3月2日に日産スタジアムで行われたJリーグ第10節、横浜F・マリノス対ヴィッセル神戸は、まれに見る好ゲームだった。両チームがともにアグレッシブに攻め合い、放たれたシュートは計38本。その多くが相手ゴールを脅かし、両チームのGKが再三にわたって好セーブを連発。スタジアムは最後の最後まで緊迫した時間が続いた。
昨年度の2位(横浜FM)対3位(神戸)。実力派同士の一戦であったのは間違いない。だがともにAFCチャンピオンズリーグ(ACL)への出場を控え、4月下旬に集中開催で予定されているグループステージに向け、その間に予定されているJリーグ第9節と第10節の試合を、他のクラブがルヴァンカップ予選リーグを戦う2月23日とこの3月2日に組み込んだ。
Jリーグが開幕して他のクラブがリーグ戦を2節しか消化していない時点で、横浜FMと神戸、そして同じようにACLに参加する川崎フロンターレと浦和レッズはこの日が4試合目。いわば「連戦」の疲労が重なるなか、なぜこのような好ゲームが生まれたのだろうか。
■懸念された横浜FMの陣容
この試合に向け、大きな懸念は横浜FMにあった。3日前、2月27日に行われた柏レイソル戦でDF畠中槙之輔とMF岩田智輝が退場処分を受け、この試合は出場停止。連戦のなか故障者も多く、チーム編成が苦しいのではないかと予想されたのだ。
実際、発表された横浜FMのメンバーは、直前の柏戦から8人が変わり、まるで「ターンオーバー」してルヴァンカップの予選リーグに臨むチームのようだった。柏戦に続く先発はGK高丘陽平、DFエドゥアルド、FWアンデルソン・ロペスの3人だけ、DFラインは、右から松原健、實藤友紀、エドゥアルド、小池裕太が並び、ボランチに藤田譲瑠チマと山根陸の若いコンビ、そして前線には、右から宮市亮、西村拓磨、アンデルソン・ロペス、そして仲川輝人。このうち、實藤、山根、宮市の3人は今季初出場。小池裕、藤田、西村の3人は今季初先発だった。
一方の神戸も「連戦対策」で臨まざるをえず、攻撃ラインに若い選手がはいった。GK前川黛也、DF山川哲史、槙野智章、小林友希、酒井高徳、MFは扇原貴宏と山口蛍をボランチに置き、右に佐々木大樹、左に郷家友太、そしてFWに武藤嘉紀と小田裕太郎。だがベンチにはMFセルジ・サンペール、アンドレス・イニエスタ、そしてFW大迫勇也ら試合を変える力をもった選手たちが並んでいる。
■三浦監督が「ポジティブ」に評価した生え抜き
予想どおり、試合は神戸の攻勢で始まった。今季初先発のFW小田がスピードを生かして強引に突破を図り果敢にシュートを放つ。2001年8月12日生まれ、淡路島出身、神戸のアカデミー育ちの20歳のストライカーは、後半24分にブラジル人FWリンコンと代わるまで69分間プレーし、5本ものシュートを放った。決めきることはできなかったが、そのスピードと決断力はこの試合でも光っていた。三浦淳寛監督も試合後に「ポジティブにとらえている」と評価した。
横浜FMがペースをつかむのは15分を過ぎたころだった。牽引したのは、昨年夏に欧州から戻ってきたFW宮市亮である。中京大中京高を出てJリーグを経ずに欧州に渡り、1年目の2011年にはオランダのフェイエノールトでセンセーショナルな活躍を見せ、日本代表にも選ばれたが、ケガが多く、その後は大きな活躍はできなかった。だが29歳を迎えた宮市のスピードに衰えはなかった。