ダービージョッキー大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」 ようやく寒さも和らいで、春のクラシックの足音が近づいてきました。本番…
ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」
ようやく寒さも和らいで、春のクラシックの足音が近づいてきました。本番へ向けてのトライアル戦も本格化し、今週は東西で注目の前哨戦が行なわれます。
関西では桜花賞トライアルのGIIチューリップ賞(3月5日/阪神・芝1600m)が、関東では皐月賞トライアルのGII弥生賞(3月6日/中山・芝2000m)が行なわれます。
弥生賞と言えば、僕は25年前にサニーブライアンで挑戦。結果は3着でした。当時「西から強いのが何頭もやってくる(デビュー戦を圧勝し東上してきたサイレンススズカもいました)」と話題になって、サニーブライアンはそれらを相手に「どこまで戦えるんだろう」とワクワクしたことが思い出されます。
今年の弥生賞も2歳王者のドウデュースをはじめ、関西の重賞ウィナーがこぞってやって来て、本番と同じ舞台で"予行演習"を行ないます。これらがどんな走りを見せるのか、要チェックですね。
さて、ここでは弥生賞ではなく、その1日前に行なわれる古馬短距離重賞のGIIIオーシャンS(3月5日/中山・芝1200m)を取り上げたいと思います。月末に行なわれるGI高松宮記念(3月27日/中京・芝1200m)を睨んでの前哨戦ということもあって、僕はこのレースにも強い関心を寄せています。
本番となる高松宮記念で上位人気が予想される馬、レシステンシアやグレナディアガーズは、やはり昨年末のレースからの直行、ぶっつけといったローテーションでくるようです。ノーザンファームのクラブ馬は、こういったパターンが多くなってきましたね。
そうした有力馬に挑戦状を叩きつける馬を決めるのが、このオーシャンSです。今年のメンバーは上がり馬と実績馬が程よく顔をそろえ、上位人気は4~5頭で割れそうな雰囲気。馬券的にはどこからでも狙えて、とても面白い一戦になりそうです。
上がり馬の代表格となるのは、スマートクラージュ(牡5歳)。好位でレースを運べる点からして、展開的には一番向きそうな気がします。
2走前から芝1200m戦を使い出して2戦2勝と底を見せておらず、この条件が合っている印象もあります。直線に坂があるコースも問題なく、ここで3連勝を決めることになれば、本番でも楽しみな1頭になるでしょう。
ディープインパクト産駒はこれまで、芝1200m戦で活躍するイメージはなかったのですが、一昨年のGIスプリンターズS(中山・芝1200m)でグランアレグリアが快勝。昨年のこのレースでもコントラチェックが勝利を飾って、そうしたイメージが払拭されました。
いずれも、中山・芝1200mの重賞を制覇。同じ産駒のスマートクラージュにとって、そうした状況も追い風となるでしょう。実際、僕もこの馬は上位を争う1頭だと見ています。
実績馬で注目度が高いのは、快速馬ビアンフェ(せん5歳)でしょうか。今回のメンバーのなかでは、同じ舞台の昨秋のスプリンターズSで最先着を果たしています。しかも、スプリント重賞3勝。その実績はここでは頭ひとつ抜けています。
ハンデ戦だった前走のGIIIシルクロードS(1月30日/中京・芝1200m)では、最重量の57.5kgを背負って9着に敗れましたが、今回は別定戦で、斤量56kgで出走できるのはプラス材料。典型的な逃げ馬だけに、戦績にムラが出てしまうのは仕方がないことで、今回も同型との兼ね合いひとつ。すんなりいければ、勝ち負けを争うことになるのではないでしょうか。
重賞タイトルにはなかなか手が届きませんが、ナランフレグ(牡6歳)も実績馬では注目の1頭です。良績が残っているのはこれまで左回りばかりでしたが、最近は右回りでも結果を出せるようになって、だいぶ安定感が増してきました。重賞を勝てる力も十分に秘めています。
追い込み一辺倒という騎乗スタイルゆえ、どうしても展開に左右されますが、上位争いが計算できる末脚の持ち主。ハマれば、初の重賞制覇を遂げてもおかしくありません。
上位人気が予想される面々のなかでは、これら3頭にチャンスがあるように思います。一方、人気薄で僕が気になっているのは、キルロード(せん7歳)です。

オーシャンSでの大駆けが期待されるキルロード
3歳から4歳までは芝の中距離やダート戦を使って、鳴かず飛ばずの戦績でした。それが、5歳になってから芝の短距離戦線で一気にブレイクしました。
転機になったのは、4歳夏に去勢手術を決断したこと。その後、復帰戦では芝1200m戦を選択し、ブリンカーを装着して臨むとあっさりと逃げ切り勝ちを決めました。父ロードカナロア×母父サクラバクシンオーという快速馬同士の配合らしく、ここからスプリント性能が目覚めて快進撃を披露します。
昨夏には骨折明けながら、オープン特別を連勝。これは、マグレでできる芸当ではありません。そして今が、ちょうど本格化を迎える時期なのかなと思っています。
芝1200m戦に限れば、6戦4勝。負けた2戦も明確な敗因があって、スタートで落馬したものと、ゲートでヨレて大きく出負けしたものですから、これらは度外視できます。
これまでにさまざまな条件を使ってきた経験もあって、「絶対にハナでないとダメ」といった精神的な脆さもなく、好位でもうまく立ち回れる馬です。ここはビアンフェを筆頭に逃げたい馬が多いですが、激しい先行争いから少し引いた2列目のポジションをとれれば、流れにも乗りやすいでしょう。
2走前のオープン特別・福島テレビオープン(7月18日/福島・芝1200m)を勝った時が、離れた2番手からの競馬でした。その競馬ができれば、ここでも一発への期待が膨らみます。
ということで、今回はこの馬を「ヒモ穴馬」に指名したいと思います。