Jリーグ2022開幕特集ヴィッセル神戸/セルジ・サンペールインタビューヴィッセル神戸の攻守の要として奮闘するセルジ・サン…
Jリーグ2022開幕特集
ヴィッセル神戸/セルジ・サンペールインタビュー

ヴィッセル神戸の攻守の要として奮闘するセルジ・サンペール
Jリーグでのキャリアも、今年で4シーズン目に突入したヴィッセル神戸のセルジ・サンペール。2019年3月の加入から過去3シーズンで出場したJ1リーグは82試合。なかでも昨シーズンは、アンカーのポジションを主戦場としてチームに不可欠な存在として輝きを見せ、自身最多の32試合のピッチに立った。
「昨シーズンは自信を持って楽しみながらプレーできた1年でしたし、これまでで一番いいシーズンを過ごせたと思っています。ヴィッセルに加入した当初はヨーロッパとは違うJリーグのプレー強度、戦い方に慣れるのに時間を要しましたが、ここ1〜2年はコーチ陣の信頼も得ながら、Jリーグの戦いをしっかり理解してプレーできています。
僕はもともと選手のプレースタイルを分析するのが好きなこともあり、今ではJリーグでプレーするほとんどの選手の名前、プレースタイルを理解しています。それを試合のたびにしっかりと頭に入れて臨んでいることも、よりスムーズに自分のパフォーマンスを発揮できることにつながっているのだと思います」
事実、昨年のサンペールは守備では抜群のポジショニングで相手の攻撃の芽を摘みとり、ボールを奪ったあとは、長短のパスを生かして攻撃の起点になるなど、攻守に存在感を示した。以前に比べて前線に顔を出す回数が増えたのも、特筆すべき変化だったと言える。
彼自身もそうしたパフォーマンスが、クラブ史上最高順位となるリーグ3位という結果に直結したことに手応えを口にする。
「勝負を決めるうえで、チームとしての守備力はすごく重要な意味を持ちます。その部分で1年を通して安定感を保ち、大きく失点数を減らせたことは結果につながる大きな成果だったと思います。
ただ、失点というのは守備に回った時間だけで語れるものではなく、攻撃の時にいかにボールを長く保持することができるか、前線からのいいプレッシングができるか、といったチームの総合的な動きが関わってきます。そう考えると、攻守に連動した戦いができたシーズンだったと言えるのではないでしょうか。
そしてもうひとつ、チームとして年間を通して偏りなく勝ち点を積み上げられたことも過去のシーズンにはなかった部分だと思います。夏にチームで最も得点を挙げていたキョウゴ(古橋亨梧/セルティック)が移籍をし、シーズン終盤にはホタル(山口蛍)がケガで離脱するといったアクシデントもありましたが、チームにとって"特別な選手"である彼らがいないなかでも、チームはそれまでの流れを継続して戦うことができました。
そのことは、優勝争いに踏みとどまることにもつながりましたし、チームに大きな自信を植えつけました。この2つは今シーズンも継続したいと思っています」
そうして、自信と手応えを積み上げて迎えた2022年シーズン。サンペールは、J1リーグ開幕戦から3試合続けて先発のピッチに立った。
残念ながら、いずれの試合も白星はつかめなかったが、「今は自分たちに何ができて、何ができていないのかを明確にして改善していく時期」とサンペール。試合を戦いながら戦術を成熟させ、結果に近づきたいと前を向く。今シーズンも攻撃の起点となる彼への対策を講じてくるチームが多いと予想されるなかで、それを上回って結果を求める術もイメージできているようだ。
「昨年も自分へのマークが厳しくなったり、対策をされているなと感じる試合はありましたが、相手がどんな対策をしてきたとしても、チーム、組織として対応すれば問題ないと思っています。僕へのマークが厳しくなるのであれば、他の選手を経由して攻撃を組み立てればいいですし、そうしてチームとして相手を上回る術を考えながらプレーすることもサッカーの面白さだと思っています」
また、今年はクラブにとって2年ぶり2度目のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)を戦うこともサンペールの熱を高めている要素だ。実は、ヴィッセルがクラブ史上初のACLを戦った2020年。外国籍選手の登録枠から外れてしまった彼は、いまだACLの舞台に立ったことがない。つまり、今回が彼にとっては初めての"アジア"へのチャレンジとなる。
「2年前、僕は登録の関係でACLに出場できず、外からチームを全力で応援していました。もちろんチームと一緒に戦いたい、ピッチでチームに貢献したいという気持ちと折り合いをつける難しさはありましたが、チームのすばらしい活躍に僕自身も勇気づけられました。
ただ、個人的に残念な気持ちが残っていたのは正直なところ。だからこそ、今年は仲間とともに初めてのアジアを戦えるのがすごく楽しみです。まずはしっかりとプレーオフを勝ち抜き、目標であるアジアナンバーワンを目指したいと思います。
もっともチームが描く目標に照らし合わせても、ACLに限らず、出場する全試合にハングリー精神を持って立ち向かわなければいけないと思っています。そうして、すべての試合に勝ちにいくことでチームにいい流れを生むことが、目標の実現にもつながっていくと信じています」
そんな彼の戦いを支えているのが、日本での穏やかな暮らしだ。「性格的にも日本の空気感がすごく合っている」と話すサンペールは、日本の文化や伝統への関心も高く、2019年から週に1度のペースで学んできた日本語もずいぶん上達したと聞く。そのなかで積み上げてきたJリーグでの経験も、一プロサッカー選手としての成長を求めるうえでかけがえのない財産になっているようだ。
「Jリーグでのプレーはサッカー選手として、人として成長する時間になっています。プレー面ではJリーグのスタイルへの理解を深めながら、守備面やゴールに直結するプレーにも磨きをかけることで、より"総合的にプレーできる選手"になるきっかけを与えてもらっていますし、僕自身、そうしたプレーをとても楽しめています。
また、神戸での暮らし、日本で見聞きすることのすべてが、僕にはかけがえのない経験です。正直、来日したばかりの頃は、ここまで日本に馴染めるとは想像していませんでした。日本に対する知識も『バルセロナの遠征で一度だけ来日したことのある国』という程度で、ほとんど持ち合わせていなかったと考えれば当然かもしれません。
ですが、日本で過ごすうちに、日本の文化や考え方、習慣、日本人が備えている礼儀正しさへの理解も、愛着も深まりました。以前から落ちついた生活を好む僕は、性格的にも日本の空気感がすごく合っているように感じています。
そんなふうにオフ・ザ・ピッチで穏やかな生活を送れていることも自分の活力にしながら、今シーズンもヴィッセルの勝利に貢献できるよう最大限の力を注ぐとともに、さらなる成長を求めていきたいと思っています」
クラブの目標であり、彼自身も実現を目指す"アジアナンバーワンクラブ"に輝くためにも、サンペールは高みに向かって歩み続けていく。
セルジ・サンペール
1995年1月20日生まれ。スペイン出身。スペインの名門バルセロナの下部組織で育ち、2014-2015シーズンにトップデビューを果たす。その後、トップチームでの出場は限られ、2016-2017シーズンはグラナダへ、翌シーズンはラス・パルマスへ期限付き移籍してプレー。そして2019年3月、ヴィッセル神戸に加入。攻守で高い存在感を示すミッドフィルダー。