ロコ・ソラーレ吉田夕梨花インタビュー(後編)カーリング女子日本代表のロコ・ソラーレが北京五輪で銀メダルを獲得。その快挙を記念して、かつてのインタビュー(取材は2020年7月。掲載は2021年1月~2月)を改めて紹介している。ここでは吉田夕梨…

ロコ・ソラーレ
吉田夕梨花インタビュー(後編)

カーリング女子日本代表のロコ・ソラーレが北京五輪で銀メダルを獲得。その快挙を記念して、かつてのインタビュー(取材は2020年7月。掲載は2021年1月~2月)を改めて紹介している。ここでは吉田夕梨花が、自らが理想とするリード像を語っている――。



――チームメイトの鈴木夕湖選手のインタビューでは、吉田夕梨花選手についての話も聞かせていただきました。

「そうなんですね。確かに夕湖さんとは、ふたりでいる時にはいろいろな話をします。昨年の夏も"ガトキン"で......」

――"ガトキン"とは何でしょうか。

「えっ、ガトキン、知らないんですか? 札幌にある『シャトレーゼ ガトーキングダム サッポロ』というリゾートホテルです。温泉やプールだけの日帰り利用もできるので、夏合宿の合間にリラックスするためにちょっと行ったんですよ。軽くウォータースライダーを楽しんだあと、プールで浮かびながら1時間くらい、夕湖さんとゆっくり話ができたのはよかったです」 

――その鈴木選手から「夕梨花は社長夫人になってほしい」といった話を伺いました。

「大森(達也トレーナー)先生と話をしていることですよね? あのふたり、それ、ずっと言っています。"社長夫人"というイメージがざっくりしすぎて、よくわからないんですよね(笑)」

――確かに「根拠はない」と鈴木選手も言っていました。一方で、鈴木選手はご自身のことについて、結婚など今後の人生設計について、何ら予定は「ない!」と即答していました。盟友の夕梨花選手から見て、鈴木選手のパートナーはどんな方がいいと思いますか。

「なんだかんだ、夕湖さんは真面目なんですよ。だから、聞き上手でうまく相槌を打ってくれる人。夕湖さんが気を遣わずに、自由に話す空気を作ってくれる人がいいんじゃないですかね」

――夕梨花選手ご自身の人生設計についてはいかがでしょうか。

「私もない!(笑)。子どもは好きですし、仲のいいご夫婦とかを見ると『素敵だな』とは思います。ただ、現状では結婚という形には縛られたくないという気持ちもあるんですよね。自分のタイミングで幸せを見つけられたら、と思っています」

――こういう人ならあるいは......という男性を、好きな漫画のキャラクターに例えてもらってもいいですか?

「(『スラムダンク』の)水戸洋平。ごちゃごちゃ言わないけれど、困ったら助けてくれて、そっと見守る感じがカッコいいです。目立つ人より、目立たない人が好きかもしれない」

――夕梨花選手のポジション、仕事や役割とリンクするところがありますね。ところで以前、「決して目立たないリードというポジションに誇りを持っている。世界一のリードになりたい」と発言されています。その目標に近づいている実感はありますか。

「まだまだやることはたくさんあります。あるんですけれど、理想のリードから遠ざかってもいない、とも思っています。わりといいペースで近づけているかな」

――夕梨花選手が考える「理想のリード」とは、具体的にどんなリードなのでしょうか。

「表現が難しいので、伝わるかわかりませんが、『規律はあるけれど、自由でいて、しっかり仕事をする人』みたいなイメージです」

――日本でも男女ともに技術の高いリードが増えてきて、それが近年の好ゲーム増加につながっているように思います。そんななかで、夕梨花選手が意識している部分がありましたら、教えてください。
                   
「狙ったところに(石を)置くのが仕事なので、それをしたうえで、エンドをどう展開していくのか。そのイメージは大切な要素だと思っています。その石を何のために置いているのか、あとでどうやって使うのか、どのタイミングで効いてくるのか。

 よくモロさん(両角友佑/TM軽井沢)や雄太さん(松村/コンサドーレ)は、投げた時はなんてことのない石でも、のちのち効いてくる、といった意味で『光る石』なんて言い方をするんですけれど、その光は考えて狙っていないと見えない。なかなか競技者以外には伝わりにくいポイントなんですが、私の投げる石が光っていればいいな、と常に意識しています。同時に、私の伸びしろもまだそこにあると思っています」

――日本選手権がまもなく開幕します。そこで、夕梨花選手の"光る石"を見極められればと思っています。さて、同大会への抱負、意気込みを聞かせてください。

「変則的で、なかなか試合ができないシーズンではあったのですが、不安よりも今は早く試合がしたい。大会が始まるのが待ち遠しいです」

――そういえば、シーズン前のオンライン会見で変則的な今季のキーワードとして「柔軟性」を挙げていました。

「そうですね。大会の有無やスケジュール面で、すごく不安定なシーズンであることは始まる前にわかっていたこと。私たちだけがそういう状況なら混乱していたかもしれませんが、世界中、どのチームも同じように難しい状況にあったので、メンタルの部分でいちいち一喜一憂していたらキリがありません。(さまざまな変化、変更について)柔軟に対応しなければいけないと思いました。

 逆に言えば、何かが変わったとしても、同じパフォーマンスができるように、柔軟性を要するシーズンだとも思いました。ただそれは、今季のことだけに限ったことではなく、カーリングというのは変化を捉えるスポーツなので、(柔軟性を要することは)継続していかないといけない。そうとも感じています」

――国内の公式戦という意味では、日本選手権は今シーズン唯一の試合となってしまいました。緊張感や、戦いへの高揚感といったものはいかがでしょうか。

「実は、これまででいちばん落ち着いて迎える日本選手権のような気がしているんですよ。闘争心がないわけではなく、ワクワクしかない状態です。難しい状況の1年ではありましたが、もし昨年よりもうまくなっていたら、それはすごい強さになるのでは? というチームに対する期待もあります」

――特に今大会は北京五輪につながる大切な試合でもあります。

「そうですね。全チームが勝ちにくる真剣勝負。そんな大事な大会を迎えることができるのが、まずうれしいです。日本選手権は本当にレベルが高くなっているので、『絶対に勝てる』と思って臨めるような試合はひとつもありません。勝つことも、負けることもあると思っています。むしろ負けたあとにチームの強さが測れるケースもあるので、負けても次にくるゲームで高いパフォーマンスに戻す――そのあたりが、大切になるんじゃないかと思っています」

(おわり)


吉田夕梨花(よしだ・ゆりか)
1993年7月7日北海道北見市生まれ。幼少の頃からカーリングを始め、2010年のロコ・ソラーレ結成時からオリジナルメンバーとしてチームを支えている。2014-2015年シーズンからリードのポジションを担い、高いデリバリー技術や正確なスイープで2016年の世界選手権銀メダル、2018年の平昌五輪銅メダルなど、日本カーリング史上初の国際大会でのメダル獲得に貢献した。2021年の目標は

「なるべく献血をしようと思っています。まだ1回しかしてないけど」