孤高の格闘家・青木真也選手と、元PRIDE戦士・大山峻護さんによる対談第二弾!噂されるRIZIN参戦や因縁の秋山成勲戦など、38歳の今、格闘技にかける思いを語った。・今すぐ読みたい→青木真也が説く「老い」との向き合い方、「能力…

 孤高の格闘家・青木真也選手と、元PRIDE戦士・大山峻護さんによる対談第二弾!

噂されるRIZIN参戦や因縁の秋山成勲戦など、38歳の今、格闘技にかける思いを語った。

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青木真也が説く「老い」との向き合い方、「能力が伸びなくなってからがおもしろい」青木真也×大山峻護スペシャル対談1https://cocokara-next.com/athlete_celeb/shungooyama-shinyaaoki-01/

自分が狙う層に向けてやっていかないと、結局ぼやけていいものが作れない


大山:青木真也vs秋山成勲戦ってところは格闘技ファンみんな期待しているところだけど、この因縁の試合を青木選手はどう感じていますか?

青木:試合としてはあまりおもしろくならないですよ。だって、僕が勝ちますから。40後半の人と、まだトップ戦線張れる人じゃ明らかじゃないですか。ただ、注目されたりとか、キャッチーな試合であることは確かですよね。盛り上がるならやればいいんじゃないかなという使命は感じます。けれど、単純な競技者としてもう一歩上に行けるのかってなると、違った相手になってきますよね。

大山:2021年10月の「Road to ONE」では、青木選手が秋山選手をマイクで挑発する場面があったけど、一格闘技ファンとして純粋にすごいなって思いましたよ。秋山選手とのやりとりがすごくよかったんですよ。しびれましたね。格闘技の選手ってマイクがうまいイメージがそんなにないけど、青木選手はずっとそれをやり込んできているから、さすがだなって。

青木:格闘技のマイクで、一人で完結した素晴らしいマイクは過去に色々あるけど、一人でやるマイクはそんなに難しくないんですよ。ある程度自分の言いたいことを伝えることはできますし。ただ、二人でやる場合、難しいです。相手の空気によって、どのくらいの尺で終わらせて去るかが重要で、ダラダラしちゃダメなんで。インパクトだったり間合いだったり、難しいですけどね。まさに総合格闘技ですよ。

大山:青木選手の言葉、特に過激な発言とかは一人歩きしちゃいがちだけど、その言葉の後ろ側には、青木選手のクリエーターとしてもっと格闘技を盛り上げたいって思いだったり、優しさだったりを感じるんですよ。

青木:自分の商売が何万人、何百万人を相手にしていると思っていないし、メジャーになりたいとも有名になりたいとも思っていないですから。自分の客がいて、そこに対していいモノをしっかり作って、それで成り立っているものがあるんですよ。場末のスナックみたいな感じで、それでいいと思っています。ずっとそんなことやっていると過疎が進んで限界集落になるって言う人がいるけど、そんなに長くまで生きないし、やってないから。だからやっぱり、自分が作りたいものを、自分が「ここだ!」って思う層に狙ってやっていかないと、結局ぼやけていいものが作れないですよね。

大山:青木選手の言葉のおもしろさって、格闘技の話しをしているようで、生き方とか仕事とかいろんなものに通じるところだと思うんですよね。だから、ビジネスマンの方々とかも青木選手の言葉に惹かれるんだろうなって感じます。

人間なんて離れてくっついての繰り返し。一回一回の揉め事は気にしない


青木:大山さんってマッチメイクの時、毎回用意された相手の名前を言われて、それに対して「はい」って返事して終わりでしたか?

大山:僕の場合はそうでしたね。青木選手はマッチメイクどうしているんですか?

青木:僕は毎回揉めていた印象ですね。嫌がっていたわけじゃなくて。

大山:青木選手といえば、柔術世界王者のビトー・『シャオリン』・ヒベイロとの一戦が印象的ですけど、あの試合はどういうマインドだったんですか?
(柔術世界王者のシャオリン選手に寝技で勝負すると宣言していたにもかかわらず、試合では終始スタンドでの攻撃を続け、青木選手が判定勝ち。会場からブーイングが起きた試合)

青木:あれはもうこのカードでいくからって言われて、激揉めしましたけど、やりましたよ。本当にやりたくなかった試合でしたね。だって、僕が勝つならおもしろくならないから。尚且つ、グラウンド戦になったら僕が不利だから。あの時は試合前から運営側に対して「絶対におもしろくならないから!」って言いましたよ。

大山:そんなエピソードがあったんですね!青木選手のすごいところは、俯瞰力なんですよ。現役時代からそれができるって尋常じゃないこと。僕は自分が勝つことしか頭が回らなかったけど、自分の試合を客観して見ることができるってすごいこと。

青木:試合終わって控え室に戻ったら、運営側の人が血相を変えてやってきたから、「だからおもしろくならないって言っただろ!」って言ってやりましたよ。向こうも怒ってきましたけど、それがやりたかったんですよ。「だから言っただろ!」「ほら見てみろ!」みたいなことをやりたくて格闘技をやっていたので。

大山:青木選手だけですよ、そんなこと言えるの(苦笑)。

青木:そうですか?俺は何とも思わないです。スタッフと揉めて日本離れたけど、2年後くらいに会った時は普通に「こんにちは」って挨拶して、普通に話しましたよ。人間なんてそんなもんですよ。結局、離合集散なので、離れてはくっついての繰り返し。お互いのメリットが一致したらまたやるって、そのくらいの話なんですけど、みんな人間関係をナーバスに捉えすぎていますね。だから、一回一回の揉め事はそんな気にしない方がいいですよ。

試合に負けても、感情を揺さぶったもん勝ち

大山:青木選手の人生ストーリーを見ているとおもしろいですよね。早稲田大学の柔道部から学生のうちにプロ格闘家になって、卒業後は静岡県警行ったのにすぐ辞めて、プロ一本。修斗、PRIDE、DREAM、ONE Championship、RIZIN行って、DDTプロレスリングもやって、本当におもしろいなぁって思いますよ。いい意味で裏切ってきます。

青木:コンテンツのおもしろさって、落差なんですよ。ずっと出しているとおもしろくないので。あとは感情の揺さぶり、アップダウンですね。喜ぶ、怒る、悲しむとか、悪くてもいいんですよ。「青木が負けた」とかで悲しんでくれるのでいい。どれだけ感情を揺さぶれるかが重要ですね。

大山:感情の揺さぶりっていうのは青木選手のキーワードですよね。以前、青木選手がインタビューで、ベストバウトはK-1王者だった長島☆自演乙☆雄一郎戦って言ってたんですよ。ミックスルールの試合で、青木選手有利のMMAルールのラウンドで自分がKOされた試合をベストバウトって言えるのはすごいなって感じたんですよ。

青木:いまだにあの試合は感情の揺さぶった度合いでいうと一番かなと思いますね。あの時、僕が負けたことに喜んで、魔裟斗さんが解説席から絶叫したんですよ。他の観客もみんなそう。それだけ観客は僕に感情を揺さぶられているから、僕の勝ちだなって。大山さんのベストバウトは何ですか?個人的にはハイアン・グレイシー戦が最高でしたね。

大山:引退してから一番ほかの人に言われるのがピーター・アーツ戦ですね。大晦日の試合で、超有名選手相手に僕が一本勝ちした試合なので。でも実は、負けた試合だけど「ハイアン戦印象的でした」と言われると嬉しいですね。

青木:当時のハイアンってスパイス効いているんですよ。ああいう選手がいるから、格闘技やりたいと思いましたね。血気盛んじゃないですか。大山さん、腕折られた上に、暴言吐かれていましたよね?

大山:その前の試合で僕がヘンゾ・グレイシーに判定で勝ったんですけど、そのリベンジで弟のハイアンがきて。一族の執念を感じましたね。自分の腕を折られる音が聞こえました(苦笑)。

日本でやるなら1・2回。調和せずにずっと対極に立っていたい


大山:あの当時のPRIDEは熱量がありましたよね。青木選手は今の格闘技をどう見ていますか?

青木:逆に、大山さんはどう見ていますか?

大山:僕は一ファンとしておもしろいなって思っていますよ。今までフィーチャーされなかったジョシカク(女子格闘技)が放送されるようになって、軽量級がアツく盛り上がって、僕的にはすごくおもしろい。でも、世間一般的にはどうなのかなって?って気になりますね。

青木:僕的には、競技になっていて全くおもしろいと思わないですね。運動の得意な人が集まってやっている感じ。だから、わざわざ見たいと思わないのが正直なところです。マスコミも含めて、文脈を伝え切れていないから、ストーリーラインが雑ですよね。僕がこういうこと言っちゃうこと自体が老害なんでしょうけど、小さくまとまっていて、僕が夢見た格闘技じゃないんですよ。今の格闘技見て、やりたいと夢みますか?

大山:僕としては、桜庭和志さんとか山本“KID”徳郁さん、魔裟斗さんとかが格闘技の最前線からいなくなって、その後には朝倉兄弟(未来・海)とか新たなスターがまた出てくるんだって思いましたね。ちゃんと循環していくんだって。ここで青木真也という劇薬を入れた時に何が生まれるのかって、それはみんな望んでいると思いますよ。

青木:それはよく言ってもらえますね。それで盛り上がるなら、って思いますけど、やるとしても1回、2回ですね。飽きる。中入ったら調和しちゃうんで、ずっと対極に立っていた方がいいのかなって思います。

無理しないから大怪我はしない。でも、見えないからこそ体のダメージが一番怖い

青木:大山さんの最近の活動としてはどんな感じですか?

大山:2014年に格闘技を引退して、今は企業研修とか社会貢献活動をしています。格闘技とは全然違うことをやっているけれど、それが僕のなかではすごく楽しいですね。

青木:大山さん、格闘技の最後の方は楽しそうじゃなかったですからね。

大山:あの頃は体がボロボロだったっていうのもありますけど、ずっともがいていて、他の選手に対して嫉妬していましたね。DREAMの時とか、青木選手に対してもそれはありましたよ。「青木真也はすごいな~。クソ~!」って。今は格闘技の時のマインド、「よしやってやろう」っていう気持ちを違う方向に全振りしていくのが楽しいですね。

青木:大山さんは今をすごく楽しんでいるのがわかりますよ。実はもっと早く引退できたのかもしれないですね。

大山:それはありますね。正直言うと、今体がボロボロなんですよ。首も膝も年中痛くて。長くやることがアスリートとして称賛されるところもありますけれど、長い目で見るとそうじゃないところもあるなって感じますね。

青木:それ聞きたいです!誰もそういう話をしないので。体のダメージってどうですか?

大山:こんなにダメージって来るんだ、って思っています。引退して筋量が落ちて、支えていたものがなくなったからかもしれないけれど、首の痛みは夜になると出てくるし、膝の痛みはずっとある。普通に歩くのも足を引きずるし、階段の上り下りもきついですよ。人工関節入れるかどうかというレベルで、生活に支障が出ています。現役中は自己暗示をかけているところもあったから、そこまで感じなかったですけれどね。

青木:大山さん、それもっと言った方がいいですよ!みんなアスリートのセカンドキャリアとか言うけれど、そんなのどうにでもなるから、体のことは絶対言った方がいいです。僕は今38歳だけど、この歳までやっていた人がいなくなってくるので、そういったアドバイスがないからわかんないんです。

大山:周りの人たちも長くやることはすごいって応援してくれるんですよ。それが嬉しいから頑張ろうとするんだけど、でもその人がその後ずっと支えてくれるわけじゃないですからね。

青木:大山さんたちの世代みんな体悪いところだらけって言うから、本当怖いですよ。ダメージ蓄積って見えないじゃないですか。それが一番怖い。「いつ死んでもいい」みたいなことを言っていた時もありましたけど、やっぱり格闘技を続けたいし、悪あがきしながらでも勝ちたいし、生き延びていたいですからね。

大山:でも青木選手は大きい故障とかはないですよね?

青木:僕はあまり無理しないので大きい怪我とかはないけど、何度かぶっ飛んでいるので。関節とか肉体のダメージとは別に、脳的なダメージも感じるんですか?

大山:最後の方は脳に倒れ癖もついていましたからね。後から来ますよ。普段話していて、今呂律が回っていないなって自分の中で感じることがありますからね。あと1、2試合やっていたら壊れていたんじゃないかなっていう感覚があります。

プロ選手から一格闘技ファンに戻れる幸せ

大山:体のダメージで言うと、青木選手はプロレスの試合で有刺鉄線とかやっていますよね。

青木:プロレスに対しては、格闘技の試合が終わったら、「じゃあプロレスできるなぁ~。また楽しいことできるな〜」ってテンションなんですよ。もう、なんか趣味ですね。

大山:青木選手の試合を見ていると、本当にプロレスのことを理解して、愛がないとできない試合をしているんですよ。ハードなものもできるし、コミカルなものもできる。2021年の大晦日も、ももいろクローバーZの「ももいろ歌合戦」に出てやっていましたけど、電流爆破とか有刺鉄線とかどんな心境なんですか?

青木:電流爆破って言えば大仁田厚さんですけど、僕は大仁田さん直撃世代なので、やっぱ嬉しいですよ。大山さんって何に影響されていました?

大山:僕はやっぱりアントニオ猪木さん、長州力さん、藤波辰爾さん、前田日明さん、高田延彦さんとか、全盛期でしたからね。

青木:大山さんも引退してから1回だけプロレスに挑戦していますよね?プロレスやった時どうでした?

大山:僕も小学校の時から本当にプロレスが大好きだったんですよ。UWFが出現して、こういうプロレスがあるんだって。そこからリングスとかUWFインターナショナル、パンクラスとか出てきて、PRIDEに流れていってだんだん格闘技が好きになっていきましたからね。元々がプロレスから入ったから、僕の中で夢が叶いました。初めてのプロレスは僕とKUDOさんで、高山善廣さんとディック東郷さんと対戦させてもらったので、本当に宝物ですね。

青木:高山さんとディック東郷さんだったら上手くなりますよね。もっとやればよかったじゃないですか!

大山:いやいや、体が…。本当に思ったのが、ダメージがすごく大きいんですよ。やってみて、改めてリスペクトしましたね。総合格闘技をバリバリやりながら、電流爆破している人って、たぶん世界で青木選手一人だと思いますよ。

青木:両方やりたかったんですよ。僕らが憧れていた藤田和之さんもケンドー・カシンさんも両方やっていたから、憧れなんです。だから、夢叶ったなって思っています。それ以上はないですよね。

大山:少年の頃に見ていた人たちの近くで今やっているわけですもんね。青木選手は根っこからプロレス少年ですよ。

青木:プロレスファンってすごく豊かで、ストーリーを楽しんだり、選手を応援しようって気持ちがありますよね。大山さんは一ファンに戻れているからすごいし、うらやましいです。

大山:プロレス少年だった頃と一緒で、想像するんですよ。僕は完全に今の仕事に全振りして、一格闘技ファンでいるので、今のRIZINに青木真也選手が来たらおもしろいだろうな~とか、考えるのが楽しいわけですよ。大好きな格闘技もプロレスも選手としてリングに立たせてもらえて、今はまたファンとしてリングの外からワクワクさせてもらったり、心を奮い立たせてもらったりしているので、人生がすごく楽しいですよ。

青木:それは本当すごいですね。みんな無意識にしがみついて、関係者から抜け出せない、戻れないですもん。業界を離れた人もいっぱいいますけど、どこか斜に構えたり、恨み節になっているんですよ。だからある種、大山さんは勝っていますよ。ファンとしてチケット買っていた時のワクワクした楽しい気持ちに戻れているって、すごくいい成功例だと思います。離れてスポーツに関わるいい形を見せてもらいました。

大山:青木選手にそう言ってもらえると嬉しいですね。青木選手ならではの考え方を聞けてよかったです!青木選手は永遠のプロレス少年で、その純粋な思いが今も生きていると改めて思いました。今日はありがとうございました!

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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大山峻護(おおやま・しゅんご)

5歳で柔道を始め、全日本学生体重別選手権準優勝、世界学生選手権出場、全日本実業団個人選手権優勝という実績を持つ。2001年、プロの総合格闘家としてデビュー。同年、PRIDEに、2004年にはK-1・HERO‘Sにも参戦。2012年ロードFC初代ミドル級王座獲得。現在は、企業や学校を訪問し、トレーニング指導や講演活動を行なっている。著書に「科学的に証明された心が強くなる ストレッチ」(アスコム)。ビジネスマンのメンタルタフネスを高めていくための本「ビジネスエリートがやっているファイトネス~体と心を一気に整える方法~」(あさ出版)を出版。