昨シーズンのプロ野球界では、共に前年最下位の両チームが日本シリーズで熱戦を繰り広げた。前年最下位どうしが日本シリーズを…

 昨シーズンのプロ野球界では、共に前年最下位の両チームが日本シリーズで熱戦を繰り広げた。前年最下位どうしが日本シリーズを戦うのは長いプロ野球の歴史の中でも史上初のこと。多くの野球ファンが予想していなかったこの結果の裏には、どうやら両チームに共通する部分が見えてくる。共通点は最下位からの逆襲Vだけではなく、ドラフトでの指名の結果にも表れているようだ。

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時は2015年のドラフト会議までさかのぼる。この年は関東一高のオコエ瑠偉(楽天)や、仙台育英高の平沢大河(ロッテ)などの選手たちがドラフトで大きく注目を集めていた。

そんな年に指名された両球団選手の活躍が大きく優勝に貢献したと考えられるのだ。

まずは、オリックスから振り返ってみたい。

1位 吉田正尚(青学大)
2位 近藤大亮(パナソニック)
3位 大城滉二(立大)
4位 青山大紀(トヨタ自動車)
5位 吉田凌(東海大相模高)
6位 佐藤世那(仙台育英高)
7位 鈴木昂平(三菱重工名古屋)
8位 角屋龍太(ジェイプロジェクト)
9位 赤間謙(鷺宮製作所)
10位 杉本裕太郎(JR西日本)

・育成選手
1位 塚田貴之(白鷗大)
2位 赤松幸輔(四国IL/香川)

育成を含めて12人の指名を行ったオリックス。

1位に指名した吉田正尚は1年目から1番DHで開幕スタメンを勝ち取ると、怪我に苦しみながらも19年にはベストナインと首位打者を獲得、昨年は東京オリンピックで日本代表の3番として金メダル獲得に貢献するなど日本を代表する選手となった。

3位の大城も1年目から122試合に出場を果たした。昨年は8月に怪我で離脱するまでは自慢の俊足と高い守備力でチームに貢献した。

さらに5位の吉田凌は20年に1軍昇格を掴み取ると、昨シーズンは18試合に登板して1勝1敗4ホールド、防御率2・12と安定した成績を残し、チームを支えた。

そして何といっても、下剋上優勝を可能にしたのは「ラオウ」こと杉本の活躍も大きいだろう。10位指名で入団した杉本は、恵まれた体格から繰り出されるパワーこそ定評はあったものの、なかなかチャンスをものにできずにいた。そしてその才能は二軍監督時代から目をかけられてきた中嶋監督の抜擢もあり、2021シーズン一気に開花した。レギュラーの座を勝ち取ると、32本塁打をマークしパ・リーグ本塁打王にも輝き、ベストナインも受賞と遅咲きの大ブレイクを果たしたのだ。

入団時から温めてきた座右の銘、人気漫画「北斗の拳」のラオウの名ゼリフ「我が生涯に一片の悔いなし!」と打ったときの「昇天」ポーズもすっかり野球ファンの間でおなじみとなった。


次に、ヤクルトの2015年ドラフトを振り返ってみる。

1位 原樹理(東洋大)
2位 廣岡大志(智辯学園高)
3位 高橋奎二(龍谷大平安高)
4位 日隈ジュリアス(高知中央高)
5位 山崎晃大朗(日大)
6位 渡邉大樹(専大松戸高)

6人のみの指名と、少なく感じるもののまさにその後の歩みは「少数精鋭」を地でいく活躍を見せた。

1位の原は、1年目から登板を果たすも、その後は故障などに泣かされ、中継ぎにコンバートされた時期もあった。21年シーズンは一軍初登板は7月と出遅れたものの、9試合に投げ、3勝1敗防御率2・30の安定した成績を残した。特に日本シリーズの大一番では第3戦で先発を任され、打球を右手に受け途中降板するアクシデントがあったものの、第5戦に再び先発。6回途中2失点と試合を作り、チームの日本一に貢献した。

2位の廣岡は、18年に開幕スタメンに抜擢されるもシーズンを通しての活躍はできず、45試合出場という結果にとどまった。21年に田口麗斗とのトレードで巨人に移籍し、移籍先で活躍を見せている。

そして3位の高橋は18年に1軍デビューを果たしたものの、コンディションも整わず苦しい日々が続いた。しかし21年シーズンには高津監督の登板間隔を空ける「ゆとりローテーション」により、活躍の場が生まれた。14試合に登板し4勝。特に勝負の後半戦にしっかり結果を残し、CSファイナルステージでは6回無失点の好投、日本シリーズでは完封勝利を飾るなど、日本一の立役者となった。

5位の山崎は、打率こそ高くなかったが自慢の俊足を活かした広い守備範囲で、守備固めや代走などスーパーサブとして活躍。昨シーズンは自己最多の114試合に出場しチームに貢献した。

ここ数年成績の振るわなかった両チーム。プロの世界ではすぐに結果が出る選手もいれば、時間がかかる選手もいる。結果が実を結ぶまでの時間には違いはあれど、ついにその手で優勝を掴んだ選手たちには、これから先もチームを引っ張って行く姿を期待したい。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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