ダービージョッキー大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」 いよいよ今年もGI戦がスタートします。 まずは「砂のマイル王決定戦」…

ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

 いよいよ今年もGI戦がスタートします。

 まずは「砂のマイル王決定戦」となるGIフェブラリーS(2月20日/東京・ダート1600m)です。毎年のことながら、最初のGIというのは心躍りますね。

 混戦模様が続いていた古馬のダート路線ですが、昨年末のGIチャンピオンズC(12月5日/中京・ダート1800m)で4歳馬のテーオーケインズ(現5歳)が6馬身差の圧勝。頭ひとつ抜けた印象があります。しかし、同馬は海外遠征のため、フェブラリーSは不参加。ここは再び横並びの面々による対戦となり、人気も読めないほどの大混戦となっています。

 さて、2000年まで遡(さかのぼ)って計算してみたところ、フェブラリーSの勝ち馬の平均年齢は4.86歳でした。やはり、一番脂に乗った明け4歳、5歳馬が強いということが、データからも示されていました。

 そうなると、基本的には勢いのある若い馬を狙うのが鉄則と言えるでしょう。ただ、今年はダート重賞で実績のある4歳馬が1頭もいません。それは、ちょっと残念な気がしますね。

 こうして若い世代の底上げがない分、今回の出走メンバーは高齢化が目立っていて、平均年齢は6.69歳とこれまでで最も高いとか。そのことも混戦に拍車をかけている要因かもしれません。

 抜けた存在がおらず拮抗した争いになるということならば、結果を左右するのは、展開や馬場、枠順といったところでしょうか。週末は天気が崩れそうな予報もあるので、その点も加味する必要があるでしょう。

 下馬評から上位人気が予想されるのは、昨年の勝ち馬カフェファラオ(牡5歳)、前走を叩いてここを目標としてきたソリストサンダー(牡7歳)あたり。いずれも前走では大敗を喫していますが、実績あるこの舞台に照準を合わせてきている印象は十分にうかがえます。これらについては、どれだけ変わり身が計算できるか、中間の動きなどもしっかり見て判断していきたいところです。

 また、安定した成績を残しているレッドルゼル(牡6歳)も人気の一角。この馬については、昨年の当コラムでもとり上げましたが、当時初めてのマイル戦にもきっちり対応して4着と善戦しました。あれだけ走れれば、距離は守備範囲と見ていいでしょう。今年も上位候補の1頭と考えています。

 ワンターンの1600m戦となれば「まだ見限れない」と判断して、今回2度目のダート戦となるソダシ(牝4歳)も人気しそうです。

 ただ、チャンピオンズCの際にも触れましたが、僕はソダシについてはダート向きの印象は持っていません。確かにチャンピオンズCよりは条件がよくなりますが、ここでも変わらずに懐疑的な目で見ています。

 というのも、スピード任せにいく馬で脚が溜まらないため、最後のひと押しが利かないからです。気分が乗らないと途中でパタッとレースをやめてしまう気ムラな点も相変わらず。よっぽど脚抜きのいい馬場になれば違ってくるかもしれませんが、そうなったとしても個人的には、押さえまで、といった評価です。

 こうして上位人気が予想される馬を見ても、それぞれ一長一短があって、馬券予想は難解を極めます。最終的には、一番マイナス要素が少ない馬、あるいは消去法で本命馬を選ぶ、といったアプローチになるかもしれません。こんなGIは本当に珍しいと思います。僕もギリギリまで悩むことになりそうです。

 そんななか、穴馬候補として注目している馬が1頭います。古豪のエアスピネル(牡9歳)です。



昨年のフェブラリーSでも2着と好走したエアスピネル

 ダート路線に転向後は善戦しているものの、いまだ勝利はありません。そして、今年は明け9歳。「さすがにもう厳しいだろう」と考える人も増えて、一段と人気が下がりそうな気がしています。

 だからこそ、今回が狙い目ではないかと思っています。

 この馬は、まるで東京・ダート1600m"専用機"といった感じで、この条件では馬券圏内(3着以内)を外したことがありません。昨年も2着に好走していますし、他の条件では結果が出なくとも、東京・ダート1600mが舞台となれば、絶対に見直しが必要です。

 加えて、今回は早くから鞍上にミルコ・デムーロ騎手を確保。陣営も「ここがラストチャンス」くらいの気構えで挑んできているような気がします。

 同馬については、チャンピオンズCの時も「ライアン・ムーア騎手を確保して勝負気配」といった話をして「ヒモ穴馬」にとり上げました。結局、ムーア騎手は本人の都合で急きょ短期免許をとり下げて帰国してしまいましたが、陣営のGI獲りにかける意気込みは当時から感じていました。

 デムーロ騎手にしても、2016年、2017年とこのレースで連勝を飾っているように、勝ち方を知っているジョッキー。頼もしい乗り替わりと言えます。条件的にも今回のほうがいいですから、激走があるとしたら、ここをおいて他にはないでしょう。

 ちなみに古い話ですが、エアスピネルの叔父にあたるエアシェイディは、"ほぼ9歳"と言える8歳暮れのGI有馬記念で3着と好走。年が明けて、9歳になった初戦のGII日経賞で2着と奮闘しました。年齢不安を払拭する実績を残しており、近親のエアスピネルも年齢を嫌う必要はないと踏んでいます。

 今回のフェブラリーSでは、同馬を改めて「ヒモ穴馬」に指名したいと思います。