いまでは多くの日本人選手が海外でプレーする。その姿が日常となって久しいが、私たちは選手がヨーロッパでプレーする意味を正…

 いまでは多くの日本人選手が海外でプレーする。その姿が日常となって久しいが、私たちは選手がヨーロッパでプレーする意味を正しく理解しているのだろうか。サッカージャーナリスト・大住良之が語りかける。

■驚くべき冨安の飛躍

 中田や中村は、中小クラブとはいえ、欧州のトップリーグのクラブへのJリーグからの移籍だった。だが近年では、とりあえず欧州のクラブに移籍し、そこで活躍してトップリーグへの移籍を勝ち取ろうという形が多い。オランダ・リーグ、ベルギー・リーグ、ポルトガル・リーグ、さらには、ドイツ・ブンデスリーガ2部などへの移籍である。

 冨安健洋は2018年1月に当時J2のアビスパ福岡からベルギーのシントトロイデンに移籍、2019年7月にイタリア・セリエAのボローニャに、さらに2021年8月にはイングランド・プレミアリーグアーセナルへと、まるで「三段跳び」のようにビッグリーグのビッグクラブにステップアップし、そのたびに評価を高めている。驚くべきことだ。

 遠藤航も2018年に浦和レッズからシントトロイデンに移籍、1年後にはブンデスリーガのシュツットガルトに移籍して、以後、クラブで欠くことのできない存在となった。

■日本人選手がはいりやすい欧州のクラブ

 2017年に日本の企業が経営権を獲得したシントトロイデンは、ベルギーの1部リーグで良くて中位という、小さな町の「中小クラブ」。現在FIFAランキング1位のベルギーだが、国の小ささがネックとなって代表選手の大半は「ビッグリーグ」でプレーしており、国内リーグは経営規模も小さく、アフリカ系などの「非欧州」の選手たちの「欧州への足掛かり」のようになっている。

 なかでもシントトロイデンは日本人選手がはいりやすい環境にある。現在では、GKシュミット・ダニエル、DF橋岡大樹、DF松原后、MF香川真司、FW林大地、FW原大智と、6人もの日本人選手がプレーしている。チーム内では、ベルギー人選手(10人)に次ぐ「第2勢力」である。日本から有望な選手を獲得して欧州での次のステップに進ませることがこのクラブの方針のひとつであり、今後もこの流れは続くと見られる。

 シントトロイデンと同じようなケースを、ポルトガルのポルティモネンセでも見ることができる。こちらは日本になじみの深いブラジル人エージェントがクラブを運営しており、現在は、中島翔哉を筆頭に複数の日本人選手を擁している。

■オランダで先鞭をつけた本田圭佑

 少し前には、オランダの中小クラブがこうした役割を果たしていた。オランダでは、2001年から2005年にかけて小野伸二がこの国のビッグクラブのひとつであるフェイエノールトで活躍、UEFAカップ優勝に貢献した。しかし近年では、「欧州への足掛かり」としてこの国の中小クラブが使われることが多い。

 先鞭をつけたのが本田圭佑だった。2008年1月に名古屋グランパスからVVVフェンロに移籍、いちどは2部に落ちたクラブを1部に引き上げる活躍を見せ、2010年1月にロシアの名門CSKAモスクワに移籍、UEFAチャンピオンズリーグなどでの活躍で2013年12月にイタリア・セリエAの強豪、欧州のビッグクラブのひとつであるACミランに移籍した。ただここではポジションを確保することができず、以後は世界各国のリーグを転々としている。

 現在も、オランダ・リーグには、堂安律PSVアイントホーフェン)、中山雄太(ズヴォレ)、菅原由勢(AZアルクマール)、前田直樹(ユトレヒト)などの選手たちがいるが、シントトロイデンを中心にしたベルギー・リーグには10数人の選手が在籍しており、ビッグリーグへのステップアップを虎視眈々(たんたん)と狙っている。

 こうした「ビッグリーグへのスプリングボード」として最近急速に注目を集めているのがスコットランドのセルティックだ。

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