Jリーグ2022開幕特集22チームがシーズン42試合を戦うJ2は、カタールW杯開催の影響で過密日程となり、例年よりもハー…
Jリーグ2022開幕特集
22チームがシーズン42試合を戦うJ2は、カタールW杯開催の影響で過密日程となり、例年よりもハードな連戦となる。そのなかでどのチームがリーグを引っ張っていくのか。日本屈指のJ2ウォッチャーである平畠啓史さんに、注目チームの見どころを紹介してもらった。
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22チームの過酷な戦い、J2を勝ち抜けるのはどこか
【6チーム入れ替わりでリーグの色が変わるかも】
――今年のJ2はどんな感じになると思いますか?
J1からの降格が4チーム、J3からの昇格が2チームで、6チームが入れ替わります。22分の6が変わるので、リーグの色が変わるかもしれないぐらいに思ってます。「それでもJ2の色は変わらないな」となったら、それも面白いですよね。
単純に、試合で移動する場所も前年とは変わります。今シーズンはカタールW杯があるので、スケジュールがすごくタイトで連戦も多い。それに、プレーオフがまた始まるので、3位から6位に入ることに対する価値が復活します。リーグ終盤は、戦い方がいろいろ出てくるでしょうね。
――J1から落ちてきた4チームに対して、どう感じていらっしゃいますか。
徳島ヴォルティスは正直言って、これだけ主力がごっそり入れ替わるとわかりません。面白いサッカーが見られるんだろうという期待はありますが、ここ数年で作ってきた徳島の骨格がかなり変わってしまう。ただ、そこを楽しみにしたい。
J1を経験した選手たちがどう変わっていくのかですね。渡井理己選手など、J2になってまたどういうプレーを見せてくれるのか期待しちゃいますね。新加入ですと、去年相模原でプレーしていて、今回は名古屋から完全移籍した児玉駿斗選手が注目ですね。テクニックがあるので、スペイン人監督のやりたいサッカーに合うかなという気はしてます。
あとは昨年、水戸ホーリーホックでプレーしていて、セレッソ大阪から期限付き移籍で来た藤尾翔太選手は点をとるんじゃないかと思ってます。もっともっと大きくなってほしい選手のひとり。
ボランチは岩尾憲選手、鈴木徳真選手、藤田譲瑠チマ選手、小西雄大選手の4人の主力級がいなくなってるので、誰が出てくるのか。ファジアーノ岡山から来た白井永地選手は攻守にハードワークできる選手なので、パッと収まれば面白いですね。
それに昨年それほど試合数は出ていないんですが、ヴィッセル神戸から来た櫻井辰徳選手。出た試合では結構インパクト残していたんで、出場機会が増えたら面白い選手になるんじゃないかと。
【ポゼッション率で勝てるとは限らない】
――大分トリニータはいかがでしょう?
大分流のJリーグのなかで戦っていくひとつの流れみたいなものが、僕は昨年の天皇杯やリーグ戦の終盤の戦い方で出てきたのかなと感じています。
そのなかで移籍する選手の数を抑えられたのは大きい。どうしても降格するとアウトする選手が増えてしまうけど、大分はインもアウトも少ない。それがすごく大きい。残ったメンバーは昨年の戦いを知っていて、大分の新しいDNAみたいなものをつないでいく選手になるかもと期待してます。
結局チームスポーツなので、いかにエンブレムに対して戦うか、みたいなところが大事だと思うんです。残ってる選手は、そういう気持ちも強いでしょうし、応援する人の思い入れも強いでしょう。
あとエドゥアルド・ネット選手が入ってきたのは大きいですよね。昨年は相手にボールを持たれてというか、持たせてしっかりと守りながら戦う部分があった。今年はもうちょっとボールが持てると思うんです。
ただ、ここがJ2の戦いの肝で、ポゼッション率が高いから勝てるとは限らない。J2で戦ってるチームは、ポゼッション率は低いんですが、終わったら勝ってる、みたいな試合が結構多い。ボールを持ってるチームはいいサッカーをしてたけど負けて、それが続いたら、「結局勝ち点とれてないやん!」ということが往々にしてあります。
いいサッカーってじゃあ何なんですか、というのがJ2の面白さでもあります。そこでチームがブレてしまうこともありますよね。
――続いてベガルタ仙台はいかがでしょうか。
仙台はGKのヤクブ・スウォビィク選手、西村拓真選手が抜けたのはかなり大きい。それでも意外と骨組みが残った印象です。それほどイチからチームを作り直すみたいなことではないと思います。
梁勇基選手がまたチームに来たのは大きいし、鹿島アントラーズから遠藤康選手が来たのが楽しみ。攻撃の際に時間を作れる選手ですから。
聞くところによると財政的には厳しくて、経営面でも頑張らないといけないシーズンなんでしょうね。仙台は応援されてるから2022年にすぐJ1に上がることが望まれてると思います。仮に昇格できなくても、いずれは絶対にJ1に上がってくるクラブ。
チーム力だったり、街の大きさ、サポーターの方の熱心さみたいなところがありますから。上がった時にまた仙台としての色が出せるチームになっていけばいいなと。
【東北内の戦いは見どころのひとつ】
――横浜FCはいかがでしょうか。
大注目ですね。どうしても大分みたいに動きが少ないよりは動きが多いほうが、シーズン前は楽しみになる部分はありますが。
まず、四方田修平監督になったのが楽しみです。それと新加入選手に面白いタレントが多い。FC東京から中村拓海選手、川崎フロンターレから長谷川竜也選手、東京ヴェルディから山下諒也選手が来ました。ちょっとびっくりですね。いい選手が集まってます。
あとは外国籍選手。勝ち点を持ってこれる選手たちですよね。GKのスベンド・ブローダーセン選手は勝ち点に直結する選手です。
――J1から降格してきた以外の昇格候補はどのあたりのチームになりそうでしょうか。
V・ファーレン長崎は昨年のベースが残ってますし、松田浩監督になってからの昨年の戦い方を見ると強い。ゲームをコントロールできるチームはJ2でそんなに多くないと思うんですが、長崎はそのひとつです。
そのベースが残ってるなかで、クリスティアーノ選手が来た。これはもうJ2では止められない(笑)。カイオ・セザール選手、エジガル・ジュニオ選手含めて、長崎は外国籍選手の使い方もうまい。
毎熊晟矢選手が抜けたけどちゃんとそこに高橋峻希選手、奥井諒選手とかJ1でも戦えるような選手を連れてきた。予算規模から見ても強さを感じます。
――ほかの昇格に絡みそうなクラブはどこでしょうか。
ジェフユナイテッド千葉ですね。長崎と同じで昨年のベースが残ってる。昨年は見木友哉選手が攻撃で非常によかったのと、櫻川ソロモン選手の存在感が出てきた。そこに風間宏矢選手と高木俊幸選手が入ったのは面白い。昨年も終盤戦の攻撃が面白かった。シーズン序盤でうまく戦えれば、J1昇格はあると思います。
――もう1チーム、昇格に絡みそうなところを伺いたいです。
うーん、あと1チームとなるとモンテディオ山形かな。昨年のサッカーも、見ていて面白かった。山田康太選手がチームに完全移籍で残ったのは大きい。
ただ、昨シーズンは勝てなくなると、何試合か続くみたいなことがありました。攻撃は面白いんですが、どうやって攻守のバランスを取るか、そのさじ加減が一番難しい。それでも、ピーター・クラモフスキー監督もJ2で戦ってみて、多分いろいろ掴んでると思います。
山形はホーム開幕が仙台戦なんですよ。みちのくダービーで勝ってスタートすると、火がつくでしょう。僕も大好きなダービーのひとつです。今シーズンJ2で東北のチームが4チームになったので、東北内での戦いも僕は今年の見どころのひとつだと思っています。
【夏の移籍がすごく大事】
――今年のJ2の残留争いという点では、どの部分に注目されていますか。
優勝争いとか、プレーオフ圏内争いもそうなんですけど、ベタな言い方すると全チーム優勝目指してますよってなるんでしょう。ただ、戦ってるうちにだんだん現実が見えてきますよね。
優勝を狙えるチーム、優勝は無理だけどプレーオフを狙いに行ったほうがいいチーム。プレーオフは無理だけど残留をしっかり勝ち取らないといけないチーム。シーズン中でいかに現実的なところに切り替えらえるかが、僕はすごく大事だと思います。
選手から「可能性はあるので」と、よく聞きますが、数字上はもちろん可能性はありますし、それを言うのがすべて悪いとは言いませんが、可能性があることに気持ちを持っていきすぎて現実を見失うと痛い目にあうと思うんです。
そう考えると、クラブも指揮官も選手もいかに切り替えられるかが大事かなと。シーズンの始まりから言うのもなんですが、J2は夏の移籍で選手を抜かれる可能性もあるわけで。そういうところにも現実的にちゃんと補強をできるか。そこにアンテナを張っていられるか。クラブとしてのアラートの意識が問われるかなと思ってます。
――J3から上がってきたロアッソ熊本、いわてグルージャ盛岡が残留に必要なものはどういったところでしょう。
まだどういう戦いをするかわかりませんが、熊本もいわても、監督さんも変わってないですし、選手も基本は昨年のベースでやると思うので、多分、昨年の戦い方をやっていくと思います。
それが通用する可能性は、十分あると思ってます。それがあまり通用しなかった時に、いかに現実的に切り替えて、勝ち点を少しでも重ねていく戦い方に変えていけるのか。ピッチ上の意識もそうですが、クラブとしての部分はすごく大事だろうと思ってます。
夏の移籍はすごく大事になるかと。Jリーグ内の移籍だけじゃなくて、特別指定選手や、J1のトップのチームのアカデミーから上がってきた、1年目でゲームに出てない選手をうまく拾ってくるなど、そういうアンテナの張り方がすごく大事になると思います。
平畠啓史
ひらはた・けいじ/1968年8月14日生まれ。大阪府出身。芸能界随一のサッカー通として知られ、サッカー愛溢れる語り口が人気。サッカー関連番組の出演も多く、著書には「平畠啓史Jリーグ56クラブ巡礼2020 日本全国56人に会ってきた」(ヨシモトブックス)がある。