河村勇輝インタビュー@前編 20歳になった河村勇輝が、横浜ビー・コルセアーズの一員として再びBリーグのコートに戻ってきた…

河村勇輝インタビュー@前編

 20歳になった河村勇輝が、横浜ビー・コルセアーズの一員として再びBリーグのコートに戻ってきた。昨シーズンは16試合の出場ながら随所で光るプレーを見せ、新人賞ベストファイブにも選出。次世代を代表する若手プレーヤーの筆頭として、あらためて存在感を示した。

 そしてこの1年で、河村はさらに精悍な顔つきになった。坊主頭の時期を終えて髪の伸びたスターポイントガードは、ひとりのバスケットボール選手として"現在地"をどう見ているのか。



1月のBリーグ月間MVPに選出された河村勇輝

---- 昨年末に特別指定選手として、今季も横浜ビー・コルセアーズへ加入となりました。しかし、加入早々に新型コロナウイルスのオミクロン株の感染拡大で試合が中止となるなど、練習もままならない状況だったと思います。ストレスは感じていませんか?

「そうですね。でも、練習ができない期間などを経て、あらためて『バスケットができる環境は当たり前じゃないんだ』というふうに感じました。『自分はやっぱりバスケットが好きなんだな』と感じる期間にもなったので、今プレーができていることはすばらしいことだと思っています。

 もし試合ができたとしても、相手選手との接触もありますし、自分たちのチームから出る可能性もあるので。毎日、怖いという気持ちはありますが、感染対策を怠らずにやっている感じです」

---- 温泉が大好きだと以前から言っていますが、最近行く余裕は?

「いや、ないです。コロナ、めちゃくちゃ怖くて。Bコル(ビー・コルセアーズの略。以下同)もコロナで10日間練習ができなかったこともあったので、絶対にコロナにはかからないように、チームとしても感染対策をしっかりやっていきたいなと思っています。なので温泉は、今はちょっと我慢ですね」

---- 特別指定選手3年目ですが、今季ここまで平均22分の出場で得点(平均11.5)やアシスト(平均6.2)など、昨季から数字を大幅に伸ばしています。アシスト数は前の2年と比べてほぼ倍増です。一方で、2Pシュートが増えて3Pの試投数は減っています。こうした数字をどう見ていますか。

「昨シーズンはペイント周りでの得点があまりなかったので、(東海)大学へ戻ってからペイント周辺からのシュートや、そこで決めるドリブル、ドライブ、シュートといったテクニックの部分をだいぶ練習してきました。それがすごく自信になっています。リングをアタックすることをひとつの武器にできた1年間だったと思っているので、そこは今後も生かしていきたいと思っています。

 3Pの部分は、昨シーズンや三遠(ネオフェニックス)の時と比べてアテンプト(試投数)自体が少なくなっていて、確率も低くなってしまっています。ただ、自分がチームに求められていることはドライブだと思うので、自信を持ってやれているからこそフィットしているところです」

---- 河村選手の一番の武器は、やはりスピードを生かしたドライブだと思います。2Pが増えたのは、そこにある意味で立ち返ったということでしょうか。

「それはあると思います。自分のスピードやドライブ、コートの中を縦横無尽に駆け回るところは、相手からしたすごく嫌なはずです。そういった意味でも、『自分のスタイルはなにか?』というのを再確認できてきたと思っています」

---- 昨シーズン、そして今シーズンの加入直後は「2ガード(PGふたりが同時にコートに立つこと)」での出場が多かったですが、今は河村選手1枚で出ています。チームの信頼の表れでしょうか。

「そうですね、高校の頃から2カードで(司令塔としての)役割を分担しながらやってきましたが、東海大学に入ってから大倉颯太選手(昨年2月に前十字じん帯と半月板を損傷して長期欠場)のいない間、ずっとひとりでPGをやってきたので。そういった経験がすごく生きていると思います」

---- Bコルの青木勇人HC(ヘッドコーチ)から、自由度は高くやらせてもらっている感じでしょうか。

「はい。戦術的なことは言われることもありますが、本当に自由にやらせてもらっているので、すごく感謝しています。でも、全然プレーには満足してないです。欲を言えば、もっと3Pのアテンプトだったり、確率のところもしっかりと上げていきたい。

 また、簡単なターンオーバーをなくしたり、スピードだけではなくゲームの流れのなかで緩急をもっとつけなければいけないとも思っています。まだまだ満足できていないですが、昨シーズンに比べて自分の特徴やプレースタイルは確立できていると思っているので、すごくやりがいを感じています」

---- PGとしてはやはり、ゲームコントロールを重視しているのですね。

「アシストが増えているのは、クリエイトできている部分が増えてきているからだと思います。ファウルドローン(ファウル誘引数)も増えてきていて、となれば相手チームもこちらにプレッシャーをかけにくくなりますから、うまくファウルを使いながらやれている感覚はあります。

 そういうところをゲームコントロールと言えるのかはわからないですけど、相手の強みを消すという部分で自分のプレーができていると思っています。(テンポの速い)トランジションの部分と(遅い)ハーフコートオフェンスでゲームの流れを感じ取り、緩急をもっとつけていきたいです」

---- Bコルでは2シーズン目ですが、練習やオフコートで昨シーズンよりも自分らしく振る舞えていますか。チームメイトたちと冗談などを言い合ったりしているのでしょうか。

「昨シーズンとメンバーはあんまり変わってないですし、みなさん気さくで話しやすい先輩ばかりなので、本当にめちゃくちゃすぐに(今シーズンも)馴染めました。自分の扱い方をすぐ感じ取ってくれるので、すごく居心地いいチームです。自分がイジられることもありますし、自分もイジったりできる関係性なので、先輩方にすごくいい雰囲気を作ってもらって本当に感謝です」

---- 誰がどういう感じでイジってくるのですか。

「イジってくるのは、誰ですかね......年齢が近いという意味ではPG/SGキング開(専修大学4年の21歳。昨年12月にチームとの選手契約を発表)と仲がいいのですが、それは大学でも対戦することがあったりしたので。

 あとは、PG生原秀将選手だったり、SF森川正明選手はすごくイジってきてくれます。シュウさん(生原)はキャプテンで、森川さんは日本人のなかではチームで一番年上の選手なので、すごくコミュニケーションが取れていると思います」

---- 今シーズンはどういうテーマを持って、なにを成し遂げたいと考えていますか。

「自分のパフォーマンスというより、やっぱり勝ちたいです。チームとして勝ち星をつけたいという気持ちが本当にすごく大きくて。そのためには、今やっているプレースタイルをしっかりと続けていくことが大事だと思います。

 HCからはアグレッシブにドライブをして、キックアウトだったり、ペイントエリアへのドライブだったり、アグレッシブなディフェンスの部分を求められているので、そういったところをしっかりやる。あとは、試合に出ている時は流れを変えられるように、チームメイトに声をかけることを心がけていきたいです」

(後編につづく)

【profile】
河村勇輝(かわむら・ゆうき)
2001年5月2日生まれ、山口県柳井市出身。福岡第一高校時代はウィンターカップ2連覇など4度の全国タイトルを獲得し、高校3年時に特別指定選手として三遠ネオフェニックスに加入。2020年1月には千葉ジェッツ戦でデビューを果たし、B1史上最年少(18歳8カ月23日、)出場記録を更新する。2020年4月、東海大学に進学。同年12月に横浜ビー・コルセアーズの特別指定選手としてプレーし、2021年12月に再び入団が発表された。ポジション=ポイントガード。身長172cm、体重68kg。