北京五輪のフィギュアスケート女子シングルは、2月15日にショートプログラム(SP)、17日にフリーが行なわれる。日本は坂本花織、樋口新葉、河辺愛菜の3選手が出場。2014年ソチ五輪に出場したプロフィギュアスケーターでタレントの村上佳菜子さん…

北京五輪のフィギュアスケート女子シングルは、2月15日にショートプログラム(SP)、17日にフリーが行なわれる。日本は坂本花織、樋口新葉、河辺愛菜の3選手が出場。2014年ソチ五輪に出場したプロフィギュアスケーターでタレントの村上佳菜子さんに各選手の見どころについて語ってもらった。



北京五輪、女子シングルに先立ち、団体戦に出場した坂本花織

【坂本花織は演技の質で勝負】

村上佳菜子 昨年末に行なわれた、北京五輪代表の最終選考会を兼ねた全日本選手権の女子は、本当に激戦でした。あの戦いを勝ち抜いて五輪代表に選ばれた3人が、2大会連続出場の坂本花織選手と、念願叶って初出場となる樋口新葉選手、そして次世代の若手である河辺愛菜選手です。

 これまでの全日本では、SPで2位から5位までが1点差のなかにいたことはなかなかなかったと思います。そんななか、あれだけプレッシャーのかかった試合ですばらしいフリーを滑りきった3人が日本代表に選ばれたことについては、誇らしいですし、応援していきたいですね。

 まず坂本選手は、4年前の平昌五輪前までは大きい大会をあまり経験することなく、いきなり五輪の代表になって怖いもの知らずの体当たりで試合に向かっていきましたが、そこからの4年間はいろんなことを経験してきました。北京大会に向け難しいジャンプにチャレンジするのかしないのかということもあったなかで、大技ジャンプを回避する選択をしました。

 今季の全日本選手権はパーフェクトな演技でGOE(出来ばえ点)加点を狙ったすばらしい演技で優勝し、五輪の切符を勝ちとりました。4年前と似た構成で滑っていると思うかもしれないですが、技術がすごく上がっています。ジャンプだけでなく、ステップや、スピード感あるパワフルな滑りというのが彼女の魅力だと思いますが、そこにもちゃんとスピードをコントロールして安定感が出てきました。さらに、スケーティングの質はすごく上がってきているので、パーフェクトな演技で無敵と言われているロシア勢に立ち向かっていってほしいなと思っています。



北京五輪フィギュア女子シングルの見どころを語った村上佳菜子さん

【樋口新葉はパッション溢れる演技に期待】

 次の樋口選手。懇意にしているというのもあって、五輪代表になったことがすごくうれしかったです。4年前、五輪に向けて全日本までコツコツ頑張ってきたけれど、代表が決まる大事な試合でプレッシャーの壁を越えられずにミスが出てしまい選ばれなかったので、すごく落ち込んでいたんです。

 そのあとの4年間は、彼女にとって計り知れない苦しさがあったようですし、悔しい気持ちから立ち直るまでにとても大変な時期もあったと思います。逃げ出さずに北京へ向かって一日一日歩んできたからこそ、この一番大切なシーズンにトリプルアクセルが安定し、その努力が報われたシーズンになっているんじゃないかと思っています。

 昨年末の全日本ではプレッシャーのかかる大会なのに楽しみながら滑っていました。やはり大きな壁を乗り越えたからこそ見える景色だと思います。プレッシャーのかかるところで楽しみながら滑れたからこそ、人一倍かける思いが強かった五輪での演技が楽しみです。あとは、体の底から湧き上がるパッションの演技が、樋口選手の一番好きなところなので、そこを思う存分に披露してほしいなと思います。

【河辺愛菜は強心臓で挑む】

 それから、フレッシュな勢いが止まらない河辺選手は、ジュニアの頃からずっとチャレンジしてきたトリプルアクセルが強みです。前回大会の坂本選手と同じような感じで主要国際大会のデビュー戦が五輪となると思うので、とにもかくにも怖いもの知らずで、新しいものを見ながら、楽しんで、スポンジのようにいろんなことを吸収してきてほしいなという気持ちです。

 河辺選手は、紀平選手が足の調子がよくなくて欠場した大会(GPシリーズ2大会)に代わって出場し、そのチャンスをしっかりものにしたことで五輪代表につながったわけですが、それも実力だと思うし、きっとメンタルはすごく強いんだろうなと思います。だから、これからの成長にも期待ですし、この五輪を彼女がどう今後に生かしていくかというところまで、とても楽しみにしています。

 日本勢がメダルを獲得するには、ロシア勢の大きな壁が立ちはだかっています。特に15歳のカミラ・ワリエワ選手(※ドーピングを巡る問題で出場可否は未定)はシニア1年目で世界記録の更新をずっと続けていますから、誰にも止められないという感じではあると思います。

 でも、そこに立ち向かっていく日本選手たちにもそれぞれの魅力があります。とにかく一番は、ミスをしないでどれだけクオリティの高いジャンプ、スピン、ステップをして、GOEを稼げるかというところだと思います。言うのは簡単ですけれど、とても大変なことです。まずは自分自身のベストなパフォーマンスを見せてほしいと思います。

 今のフィギュア女子はすごい時代になりました。平昌大会からまたガラッと変わりましたよね。女子選手が4回転を跳ぶということはかなり強い体幹と筋力が必要です。軽さはもちろんあるとしても、4回転を跳ぶとなると相当な筋力トレーニングも行なっていると思います。そういう筋肉があるからこそ、軸がブレずに速く回れるのでスピンもさらに美しさが増します。また、レベルをとるためにはステップを踏みながら体全体を使います。ワリエワ選手はどんなに体を使っていてもブレずに、下半身と上半身とでまったく違う動きができるというのは、やはり4回転を跳ぶための筋力を作っているからこそできるのだと思います。

 今まではジャンプばっかりだった時代もありましたが、そこを経て、今はジャンプ込みでトータル的にレベルが上がっていると思います。日本勢も今できることを美しくパーフェクトに発揮してくれることを期待しています。

【プロフィール】
村上佳菜子 むらかみ・かなこ
プロフィギュアスケーター。1994年、愛知県生まれ。フィギュアスケート選手時代には、ソチ五輪出場(2014年)や四大陸選手権優勝(2014年)などの成績を残す。2017年に引退後は、プロフィギュアスケーターやフィギュアスケート解説者として活躍。タレントや女優として数々のテレビ番組にも出演中。