テレビ画面越しに、泣き続ける姿が痛々しかった。 北京五輪の新種目、スキージャンプ混合団体が7日に行われ、日本は高梨沙羅（25）が失格でポイントを取り消された影響もあって、4位に終わった。・今すぐ読みたい→「ネガティブの塊」高梨…
テレビ画面越しに、泣き続ける姿が痛々しかった。
北京五輪の新種目、スキージャンプ混合団体が7日に行われ、日本は高梨沙羅（25）が失格でポイントを取り消された影響もあって、4位に終わった。
2日前の個人ノーマルヒルで4位の高梨。期待された金メダルには五輪3大会目でも届かず、失意を胸にしまいこんで迎えた団体戦。1本目の日本勢1番手で103メートルの最長不倒をマークし、久々の笑顔を見せた。1本目2位につけ、チームを勢いづけた、かに見えた。1本目を飛んだ後、スーツの検査が行われ、規定違反が発覚。失格が伝えられた高梨は泣き崩れた。
高梨が獲得したポイント124.5点はカウントされず「0点」となった。男女2人ずつ、4人の合計点で競う団体戦。日本チームは前半、男子ノーマルヒル金メダリストの小林陵侑ら3人だけの成績だったが、 オーストリア、ドイツにも失格者が出て全10カ国中8位に入り、8チームによる後半戦に進んだ。
違反ショックから50分後、スーツを代えて2本目を飛ぶ高梨の目は真っ赤だった。記録は98.5メートル。着地後に手で顔をおおい、カメラに向かって謝罪するように頭を下げた。チームメートのジャンプを見つめる間、スタッフに肩を抱えられて立っているのがやっとだった。
猛烈な追い上げを見せた日本は4位。勝負に「たられば」は禁物だが、もし高梨の無効になったポイントが加算されていれば、優勝したスロベニアに次ぐ銀メダルだった。個人4位とは、わけが違う。チームに迷惑をかけた。メダルを逃す敗因になった。責任のすべてを背負い込んだ高梨の涙は、いつまでも止まらなかった。
日本の横川朝治ヘッドコーチは、試合後に経緯を説明した。「スーツの太ももの場所が（規定より）2センチ大きかった。個人戦と同じスーツだった。選手は僕らの用意したスーツを着てそのまま飛ぶ。スタッフのミス」と高梨をかばった。スーツが大きいと浮力を得られるため、厳しい規定がある。通常、試合前にスタッフが選手の体を計測してスーツを決めるが、同コーチは「世界中が（規定の）ぎりぎりを狙っているのは事実。そうしないと勝てない。標高の高さや寒さも影響した」。ノルウエーにも違反が出て、優勝候補4チームに失格者が出るという大波乱の団体戦となった。
高梨には、心ない言葉が浴びせられてきた。個人戦でメダルを逃し、SNSで「メイク批判」がトレンドワードに。「メイクしている暇があれば練習しろ」。ノーメイクだった中高生時代から活躍してテレビに出る機会が多いだけに、メイクして試合に臨む現在の姿への違和感を指摘する声は後を絶たない。注目度が高い五輪で、話題がさらにクローズアップされた形だ。
W杯通算最多61勝の大エースも、五輪で力を発揮できないジンクスと戦ってきた。ギリギリの精神状態になるまで自らを追い込み、4年に1度しかない大舞台でまたも結果を出せず、団体戦では足を引っ張った。追い打ちをかけるようなメイク批判騒動。「五輪には魔物がいる」とよくいわれるが、試練続きの高梨の心はもうボロボロだろう。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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