野球では無名の神奈川県立藤沢清流高校に、いま話題の"二刀流"がいるという。 彼の名は木島直哉(左投左打)。185センチ、89キロの大型選手だ。チームのなかにいても、頭ひとつ抜けていて、まさに大谷翔平(エンゼルス)を彷彿…

 野球では無名の神奈川県立藤沢清流高校に、いま話題の"二刀流"がいるという。

 彼の名は木島直哉(左投左打)。185センチ、89キロの大型選手だ。チームのなかにいても、頭ひとつ抜けていて、まさに大谷翔平(エンゼルス)を彷彿とさせる。

 大型左腕だけに、ボールに角度があって、球質もいい。加えてコントロールもある。そんな逸材がいればチームは強くなる。




1年秋からチームの主軸を担う藤沢清流の木島直哉

 

【こんな逸材が入学してくるとは】

 もともと藤沢清流は、毎年地区大会で結果を残すことができず、仮に勝ち上がって県大会に出場できたとしても1、2回戦で敗退してしまう弱小チームだった。それが2018年夏の南神奈川大会でベスト16。翌年春の県大会では強豪・慶応高校に2対0で勝利するなど、ベスト8進出に進出し、創部初めて夏の県大会のシード権を獲得した。

 当時、中学生だった木島は名古屋の軟式チーム・FBクラブで「4番・一塁」として活躍しており、慶応撃破のニュースを知り「高校野球は神奈川で」と、藤沢清流への進学を決めた。父親の東京転勤もあり、東海地区の強豪校のスカウト網に引っかからなかったことが、藤沢清流としてはプラスに働いた。

 藤沢清流の榎本正樹監督は、木島の魅力についてこう語る。

「まさかこんな逸材が入学してくるとは......でした。左投げということと、大きなサイズが魅力です。バランスよくゲームをつくれる投手で、バッティングもすばらしいものを持っていて、将来はチームの柱になるということは、入学時から容易に想像できました。とにかく壊さないように、本人とコミュニケーションをとってやっています。この冬は躍動感と力強さを求めての練習がメインでした。しっかり育てて、上のステージでできるようにと思っています」

 1年夏は、コロナ禍の影響で独自大会だったこともあり3年生中心のメンバーで戦ったため、出場機会はなくベンチを温めるだけだった。その後も1学年上に経験ある投手がいたので、1年秋、2年春は「4番・一塁」として出場することがほとんどだった。

 以前はライナー性の当たりが多かったが、新チームになってから打球が上がるようになりホームランが増えた。また、得点圏打率は練習試合を含めると5割を超えており、勝負強い打者として邁進中だ。

【横浜隼人戦の好投で一変】

 一方、投手のほうだが、本格的に投げるようになったのは昨年の秋季大会から。地区大会を勝ち上がり、4回戦で横浜隼人と対戦。この試合で木島は、抜群の投球を披露した。伸びのあるストレートを中心に相手打線から凡打の山を築き、8回まで横浜隼人打線を1点に抑えた。試合には敗れたが、木島は大きな自信を得た。

「結果的に負けてしまいましたが、隼人打線をなんとか抑えることができました。チームとしても『やれる』と思いましたし、自分のなかでも『上(の世界)でやれるのではないか』と自信になりました」

 木島のピッチングは、真っすぐで追い込み、変化球を内外に投げ分け、内野ゴロに打ち取るのが基本だ。変化球はスライダー、カーブ、ツーシーム、チェンジアップと多彩で、今はスプリットの習得に励んでいるという。

 まだ経験不足の感は否めないが、試合を重ねるたびにスケールアップしているのがわかる。ピッチングについて、木島は次のように語る。

「基本はストレートで押すこと。真っすぐを待たれていても、あえてそれで押して詰まらせる。コースを間違えないようにして、強くしっかり投げ込む。腕を地面に叩きつけるように振っています。三振をとりにいくのではなく、内野ゴロを打たせるピッチングを心がけています」

 自身の将来については、こう抱負を語る。

「大学や社会人で自分を試してみたいです。そこで『これならいける』と自信がつけば、プロにも挑戦したい。そのためにもまずは球速アップです。瞬発力を鍛え、ピッチングに幅ができるようパフォーマンスを上げていきたい」

 この冬は、榎本監督が日本体育大で学んだトレーニング学に基づき、ウエイトのビッグ3(ベンチプレス、スクワット、デッドリフト)に、短い距離のダッシュ、ジャンプなどを繰り返した。

 横浜DeNAの稲嶺茂夫スカウトは、木島についてこう語る。

「バッティングがいいですよね。投手としてはサイズのわりにややスピード不足なので、この冬のトレーニングでどこまで増すかでしょうね。こういう選手はひとつのきっかけで大化けする可能性がある。能力的には面白い存在です」

 神奈川の無名公立校に現れた"二刀流"は、どんな成長を見せてくれるのか。春の訪れが待ち遠しい。