「チームを勝たせるゴールを決められなかった」----準決勝で先制点、勝ち越しゴールを決めた植木理子(日テレ・東京ヴェルデ…
「チームを勝たせるゴールを決められなかった」----準決勝で先制点、勝ち越しゴールを決めた植木理子(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)は悔しそうに語った。

今大会、なでしこジャパンのなかで最も成長した姿を見せた植木里子
なでしこジャパンはAFC女子アジアカップの準々決勝でタイに7-0で大勝し、早々にワールドカップ出場権を手にしていた。比較的楽なグループリーグで戦い、最終戦の韓国戦は力が拮抗したが、それでも日本にはまだ余裕があった。感覚としては準決勝の中国に対しても同じで、ポゼッションは日本が支配していた。
ボランチからの展開をケアされ、攻撃のスイッチを入れても2本目3本目の決定的なパスはとおらず、攻撃のテンポも上がらない。うまくくさびが入っても、そこからタテへのボールはひっかかる。相手の好守備だけでなく、日本の粗さも目立っていた。
それでも植木は2度、中国ゴールをこじ開けた。26分に宮澤ひなた(マイナビ仙台レディース)の速いクロスに、得意のヘディングで後ろにコースを変えた難しいゴールは待望の先制点。2点目は追いつかれた延長で見せた勝ち越し弾。長谷川唯(ウェストハム・ユナイテッド)のフリーキックが壁を越えて落ちてきたところをダイビングヘッドで押し込んだ。
しっかりと試合を締めてさえいれば、植木が理想として追い求めている"チームを勝たせるゴール"を挙げる役割は果たせていたはずだった。その後、終了間際に追いつかれ嫌なムードを残したままPKに入り、流れは中国へ。女子アジアカップ3連覇の道はここで途絶えた。攻守、ゲームコントロール、ベンチワーク......未熟さが目立つ戦いから殻を破るまでに至らず、ディフェンディングチャンピオンは準決勝で姿を消すことになった。
【目指すゴールの形はひとつ】
今大会で希望となったのが植木の成長である。5ゴールはチーム最多で途中出場となったベトナム戦以外のすべてでスコアをマークしている。大量得点が多かった今大会だが、植木がもたらしたゴールは特に意義深い。
最初のゴールは池田太監督に代わって以降なでしこジャパンが最初に挙げたメモリアルゴールであり、連続ゴールの口火を切ったもの。韓国戦で見せた開始32秒でのゴールは、その後の日本の戦いを有利に進める絶対的な要素となった。出場権獲得のかかった準々決勝のタイ戦では、ドリブルから豪快に決めて、実力を証明してみせた。そして準決勝の2ゴールは言うまでもない。
2019年の女子ワールドカップの最終メンバーに選ばれた植木がケガで代表から離脱したのは、すでにフランス入りした後のことだった。
「悔しくて受け入れられなかった。帰国後も夜中の2時、3時に目が覚めて泣いている日々でした」
自身が一番の目標にしていた世界大会でのプレーはすぐ目の前だった。そこから2年、U-20時代にともに戦った池田監督のもとで再びなでしこジャパンに戻ってきた。この2年、持ち前の"ナニクソ精神"で苦手だった攻撃の作りの面やボールを収めるプレーも自分なりに鍛え上げてきた。
新生なでしこジャパンの初海外遠征では決定力不足に苦しめられ、1分1敗ノーゴールに終わった。初戦のアイスランド戦後に体調を崩し、早々にピッチから遠ざかってしまった植木だったが、自分自身の責任のようにこれを捉えていた。決定力は簡単に身に着くものではないからこそ、試合勘を徹底的に磨かなくてはならない。今大会ではコンディションもよく、一戦ごとにゴールへの嗅覚が鋭くなっていったのは数字が示す通りだ。
植木には常に目指すゴールの形がある。それが植木の言う「ゴリゴリのゴール!」だ。
「ベレーザだとごっつあんゴールとか最後に触ってゴールとかが多いんです。個人で崩してとか、苦しい時間帯に打開して決めるっていうのはチームのやり方とは違うかもしれないけど、FWとしては絶対に必要なことだと思っています」(植木)
今大会ではこの想いが詰まったゴールの連続だった。
岩渕真奈(アーセナル)が大会前にPCR検査で陽性反応が出て隔離措置を受けた影響で、万全のコンディションまで戻す時間がなかった。エース不在の穴を埋めるだけでなく、肩を並べるところにまで成長してみせた植木だが、本人は準決勝後半のプレーを大きく悔やむ。
「自分には後半にシュートチャンスが何本かありましたし、そこで決めていれば延長PKにはならなかった。まだまだ未熟さを痛感した大会でした」(植木)
「チームを勝たせるゴールは決められていない」と何度も繰り返した植木。ゴール数ではなく、チームを勝利に導くゴールを決めるのが仕事だと、今後も自分自身に問い続けていくのだろう。まだ22歳。植木が見せた今大会のパフォーマンスはなでしこジャパンが得た確かな光だった。