外野守備は内野手に比べればあまり優劣がつかないように思える。しかし安打の多くが外野へ飛ぶことを考えれば、外野守備は実は非常に重要だ。優秀な外野手はシーズン中に何度もチームを救う。■チームを救う好守連発、守備範囲の広い外野手は? 外野守備は内…

外野守備は内野手に比べればあまり優劣がつかないように思える。しかし安打の多くが外野へ飛ぶことを考えれば、外野守備は実は非常に重要だ。優秀な外野手はシーズン中に何度もチームを救う。

■チームを救う好守連発、守備範囲の広い外野手は?

 外野守備は内野手に比べればあまり優劣がつかないように思える。しかし安打の多くが外野へ飛ぶことを考えれば、外野守備は実は非常に重要だ。優秀な外野手はシーズン中に何度もチームを救う。

 野手の守備範囲を表す指標にRF(Range Factor)がある。本来は野手の守備機会(補殺+刺殺)を出場イニング数で割って9をかける。つまり9イニングごとにいくつの打球をアウトにしたかを示す値だ。しかしNPBでは野手の出場イニング数を発表していないため、簡易的に守備機会を出場試合数で割ったRFGを算出することが多い。守備位置によって異なるがRFGが2.0を超えれば守備範囲が広いと言える。

 またMLBでは外野の守備記録を左翼、中堅、右翼に分けて発表しているが、NPBは外野でひとくくりしている。しかし3つのポジションは、求められる能力、技術も微妙に異なる。今回は出場記録から外野手を左翼、中堅、右翼に大まかに分類して、外野手の守備ランキングを出した。

 以下は2016年の両リーグのRFGランキング。(※規定試合数以上。ただし、先発出場が少ない選手、左翼、中堅、右翼に固定できない選手は除外。データは筆者独自計算に基づく)

【パ・リーグ】

○左翼 RFG
中村晃(ソ) 2.07
西川遥輝(日) 1.98
角中勝也(ロ) 1.94
栗山巧(西) 1.66

○中堅 RFG
秋山翔吾(西) 2.17
柳田悠岐(ソ) 2.11
陽岱鋼(日) 1.87
駿太(オ) 1.73
岡田幸文(ロ) 1.50

○右翼 RFG
島内宏明(楽) 1.88
清田育宏(ロ) 1.60
岡島豪郎(楽) 1.54
糸井嘉男(オ) 1.51

 左翼には守備範囲が狭く外野守備を得意としない選手を起用することが多いが、ソフトバンクは中堅にずば抜けた守備範囲の柳田がいるため、俊足で守備もうまい中村晃を左翼に起用している。中村のRFGは群を抜いている。これもこのチームの強みとなっている。

 中堅では西武の秋山とソフトバンクの柳田がハイレベルな競い合い。この2人は打撃だけでなく、守備力でも傑出している。一方、かつて守備範囲の広い外野手として知られた糸井(現阪神)だが、RFGで見る限り守備力に陰りが見える。

■セ・リーグは…

【セ・リーグ】

○左翼 RFG
筒香嘉智(De) 1.57
バレンティン(ヤ) 1.43
高山俊(神) 1.44

○中堅 RFG
坂口智隆(ヤ) 2.22
大島洋平(中) 2.13
丸佳浩(広) 2.02
桑原将志(De) 1.83

○右翼 RFG
雄平(ヤ) 1.91
梶谷隆幸(De) 1.79
平田良介(中) 1.75
鈴木誠也(広) 1.69
長野久義(巨) 1.52
福留孝介(神) 1.49

 パに比べてセの左翼手の守備範囲が狭いことがわかる。スラッガーが守るポジションになっている。一方、中堅はレベルが高い。一昨年オフにオリックスを自由契約になり、ヤクルトに移籍した坂口は打撃だけでなく、外野守備でも大きな戦力になっていることがわかる。右翼では、かつては守備の名手という評価があった阪神、福留の数字の悪さが目立つ。

 今季はどうだろうか。4月28日までの数字で見てみよう。

【パ・リーグ】

○左翼 RFG
中村晃(ソ) 1.87
西川遥輝(日) 1.70
岡島豪郎(楽) 1.39
田代将太郎(西) 1.36

○中堅 RFG
島内宏明(楽) 2.05
柳田悠岐(ソ) 1.96
秋山翔吾(西) 1.95
宮﨑祐樹(オ) 1.21

○右翼 RFG
駿太(オ) 2.32
木村文紀(西) 1.70
ペゲーロ(楽) 1.68
上林誠知(ソ) 1.18

 左翼守備は相変わらずソフトバンクの中村晃が優秀だ。中堅には昨年、右翼で好守備を見せた島内がコンバートされ、柳田、秋山の競争に割り込む働き。右翼ではオリックスで打撃開眼した駿太が守備でも好成績を残している。

■躍進目覚ましいDeNA桑原

【セ・リーグ】

○左翼 RFG
筒香嘉智(De) 1.77
バレンティン(ヤ) 1.68
高山俊(神) 1.00

○中堅 RFG
坂口智隆(ヤ) 2.20
桑原将志(De) 2.14
大島洋平(中) 1.87
丸佳浩(広) 1.38
糸井嘉男(神) 1.29
立岡宗一郎(巨) 1.23

○右翼 RFG
平田良介(中) 2.09
雄平(ヤ) 1.77
長野久義(巨) 1.50
福留孝介(神) 1.50
梶谷隆幸(De) 1.47
鈴木誠也(広) 1.46

 左翼の顔ぶれは変わらず。中堅では相変わらずヤクルトの坂口が素晴らしい守備範囲を誇っているが、DeNA桑原の躍進も目覚ましい。数字を見る限りでは糸井の中堅はやや厳しそうだ。右翼では平田の数字が目覚ましい。

 RFGは、打撃成績が良いと向上する傾向があるように思われる。バットで乗ると外野守備も乗るということかもしれない。あまり注目されないが、外野守備からもNPBの「今」が見えてくるのだ。

広尾晃●文 text by Koh Hiroo