特別指定選手制度により渋谷VS横浜の一戦で対戦が実現 冬場のBリーグは秋と冬にない魅力がある。それは特別指定選手の活躍だ…
特別指定選手制度により渋谷VS横浜の一戦で対戦が実現
冬場のBリーグは秋と冬にない魅力がある。それは特別指定選手の活躍だ。
特別指定は13名の登録制限を超えて、2名まで別枠で登録できる制度。卒業間近の大学4年生がこの制度を使って契約するケースが一般的で、大学3年生以下の選手が“インターンシップ”的に活用する例も多い。米須玲音(現日本大1年)や後述の河村勇輝(東海大2年)のように、大学入学前からB1のコートに立った選手もいる。
2月2日のサンロッカーズ渋谷×横浜ビー・コルセアーズ戦では、“福岡第一高の同級生対決”が実現した。
小川麻斗(日本体育大2年)は176センチ・77キロのシューター。昨季もライジングゼファー福岡の特別指定でコートに立ち、B2ではあるが1試合平均16.5分のプレータイムを得ていた。今季はB1渋谷でチャンスを掴んでいる。
河村は172センチ・68キロのスピードスター。高3の全国大会を終えた直後、小川より1年早く、2019-20シーズンに三遠ネオフェニックスで衝撃的なB1デビューを飾っていた。昨季と今季は横浜の一員として試合に出場しており、すでにプロ3シーズン目だ。
小川と河村は福岡第一高のダブルガードとして、2018年と19年のウインターカップ連覇に大きく貢献している。大学2年生、20歳になった2人による直接対決が、2日の墨田区総合体育館で実現した。秋の関東大学リーグで対戦しているものの、プロでは初の顔合わせだ。
河村がまずコートに入った。第1クォーター残り5分27秒のタイムアウト明けに起用されると、直後のオフェンスで早速レイアップを沈める。渋谷のエースキラー・関野剛平を振り切る鮮やかなドライブだった。
小川も第2クォーター開始と同時にコートに入った。マッチアップの相手はもちろん河村だ。小川は負けじと残り8分43秒に3ポイントシュートを沈め、直接対決では先手を取った。
小川はコートイン直後のやり取りをこう振り返る。
「(軽い感じにやや高いキーで)『よろしくね?』みたいなことは言われました」
河村もこう述べていた。
「コートに入った時は(低くて太い声音で)『おう』みたいな感じでした」
それぞれの口真似がよく似ていて、2人で過ごした時間の長さが伝わってきた。
河村は「高校の時よりレベルアップしている」
河村は1試合平均で20分以上のプレータイムを得ている 主力だが、2日の試合では小川のプレータイムも10分を超えた。
渋谷の伊佐勉ヘッドコーチ(HC)は言う。
「河村とプレーさせたらBリーグが盛り上がるんじゃないか、福岡第一の井手口先生も喜ぶんじゃないかとは思っていました。(小川は)堂々と10分プレーしてミスもない。すごい収穫のある試合だったし、いい経験になったと思います」
小川は試合前の準備と思いをこう振り返る。
「高校からやっているので河村のクセはなんとなく分かっているんですけれど、高校の時よりレベルアップしています。(河村が26点を挙げた)秋田戦だったり、ビデオを見返して準備をしていました。スケジュールを見返した時に、2月のこの日に(直接対決が)あると知って、ワクワクもあったんですけどビックリしました」
河村は小川について、こう口にする。
「彼がプロレベルというのは知っていたし、いずれ(B1で)マッチアップするだろうなとは思っていました。だからそんなに驚きはなかったですけど、高校の時から一緒にやってきたチームメートなので、一つ上の舞台でマッチアップできて嬉しいです」
伊佐HCは河村のプレーと、対応をこう説明する。
「河村はみんなが思う以上に速い感じでした。抜かれないように、特にビッグマンはクッションを置いて(対応しよう)と話をしました。そこからファウルにはならなかったですけど、速いしテクニックもあるので、結果的にスコアにつながりました」
河村が見せた強みがゴール下へのドライブだ。ビッグマンが俊敏な彼に食いつけば逆を取られて切れ込まれる、ファウルを与える危険性が高い。渋谷は“間を取る”対応に切り替えたが、河村はアジャストしてじっくり自分のタイミングでプレーしていた。河村は21分21秒の出場で、13得点2アシスト5リバウンドを記録している。
今季の河村はドリブルでペイントエリアに切れ込み、ゴールの近くから決めるシュートが目立つ。
「ドライブしてからの得点が今年はすごく増えてきて、自分の強みにしています。ビーコルはシューターが多いので、クリエイトする上でドライブは必要です。このチームの中で必要なプレーはドライブと、ドライブからのキックアウトだと思っています」
2人が思い描く日本代表入りへのビジョン
試合は渋谷が99-84で制した。小川は10分33秒の出場で5得点。今季2試合目のメンバー入りだったが、ステップアップを果たした。
「出た初っ端に3ポイントもしっかり決められたし、『自分もやれるぞ』とアピールできたのかなと思います」(小川)
小川は自らの今後について、こう述べていた。
「(代表入りについて問われて)8年後のロサンゼルス五輪は、1、2年はBリーグで活躍して、韓国リーグだったり海外にも行けたらなと考えています。今は渋谷で多くを学んで、試合も出られるように練習からアピールすることを考えています」
河村はトム・ホーバスHCが率いる日本代表でのプレーを思い描いている。
「トムさんはトランジションの速いスタイル、3ポイントを求めていると聞いています。自分のスタイルに合っているのではという気持ちがあるので、Bリーグでしっかりアピールしたい。ただ代表へ入るには3ポイントシュート、ゲームコントロールのところを、もう少しやっていかなければいけない。たくさんの経験を得て、選出されるように日々頑張っていくしかないと思っています」
試合後のコメントからは、彼らが直接対決を堪能した様子が伝わってきた。もちろん彼らの成長に関わってきた指導者の喜びは、おそらく2人以上だろう。ファンにとっても良い思い出となるに違いない、20歳の若者の“再会劇”だった。(大島 和人 / Kazuto Oshima)