1月25日(現地時間。以下同)、ブルックリンで行なわれたネッツ戦でのロサンゼルス・レイカーズのプレーを見たファンは、今…

 1月25日(現地時間。以下同)、ブルックリンで行なわれたネッツ戦でのロサンゼルス・レイカーズのプレーを見たファンは、今後の逆襲を予感したかもしれない。

 昨年12月中旬に左膝を捻挫し、17戦を欠場したアンソニー・デービスがこの日、久々に復帰した。レブロン・ジェームズ、ラッセル・ウェストブルック、デービスというレイカーズの"ビッグ3"が久々に顔を揃えたのだ。


レイカーズの

「ビッグ3」(左から)デービス、レブロン、ウェストブルック

 試合は、レブロンのロブパスをデービスがアリウープで押し込む鮮やかなプレーからスタート。その後も、33得点を挙げたレブロン、15得点で援護したウェストブルックらの働きでレイカーズが常に試合を優位に進めていく。敵地にも数多く集まったレイカーズファンの前で、106-96で圧勝してみせた。

「(デービスに)何ができるか、みんなすぐにわかったはずだ。試合開始直後、少し遅めのタイミングでロブパスを出したが、彼はダンクで決めてくれた。戻ってきてくれたことにエキサイトしているよ」

 試合後にレブロンも上機嫌でそう述べ、スーパースター軍団はついに上昇気流に乗っていくかと思えた。

 しかし――。結局のところ、2021-22シーズンのレイカーズの迷走はまだまだ続きそうな気配だ。

 ようやくビッグ3体制に戻ったかと思った矢先、今度は左膝の痛みを訴えたレブロンが1月27~30日の3試合を欠場。その3試合は全敗し、19年目を迎えたレブロンの健康状態にも不安の声が上がる結果となっている。

 レイカーズは30日のアトランタ・ホークス戦を終えた時点で24勝27敗と負け越し、ウェスタン・カンファレンスの15チーム中9位。もうシーズンの折り返し地点を過ぎたのだから、こう言い切ってしまっていいだろう。レイカーズは「リーグ最大の期待外れチーム」だと。

 これほどまでの苦戦は"サプライズ"だとしても、今季のレイカーズが少なからず苦しむことは、ある程度予想できたことではあった。オフの間から進めてきたチーム作りは、疑問が残るものだったからだ。

【すべての懸念材料が現実に】

 ロースターには37歳のレブロン、32歳のウェストブルック、37歳のカーメロ・アンソニー、35歳のドワイト・ハワード、33歳のディアンドレ・ジョーダン、36歳のトレバー・アリーザといったベテランが並び、主力で20代前半なのはテイレン・ホルトン・タッカーくらいと高齢化が顕著だ。

 また、2年前にファイナル制覇を果たした際には固いディフェンスが強さの根幹だったにもかかわらず、アレックス・カルーソ、ケンテイビアス・コールドウェル・ポープ(以下、KCP)といった守備の能力が高いロールプレーヤーたちを残留させなかったことも意外だった。

 何より、昨オフ、すでにキャリアの"下り坂"に差しかかったウェストブルックを獲得したトレード(※)は、チーム内外で論議を呼び続けてきた。

(※)カイル・クーズマら3選手と2021年ドラフト1巡目22位の指名権を放出し、ウィザーズからウェストブルックとドラフト2巡目指名権(2024年、28年)を獲得。

 ボール独占傾向のあるウェストブルックは、レイカーズでは絶対的な存在のレブロンとフィットしないのではないか。昨季最後の6週間は平均23.0得点、14.0アシスト、13.5リバウンドと爆発的な数字を残したとはいえ、体力的にも下り坂の選手を、チームに必要なディフェンダー、シューターたち、さらにドラフト1巡目指名権を手放してまで獲りにいく必要が本当にあったのか。

 蓋を開けてみれば、案の定、今季は囁かれていたすべての懸念材料が悪いほうに出ている印象がある。加齢ゆえにチーム全体がスローになり、ディフェンシブレイティングではリーグ16位と守備も停滞。ウェストブルックは平均ターンオーバーでリーグワースト2位と持ち味を発揮できておらず、攻守両面で強引なプレーばかりが目立っている。

 冒頭で「ビッグ3が揃えば」という話をしたが、実際には今シーズン、レブロン、デービス、ウェストブルックの3人が揃った16戦でも9勝7敗。今季の彼らのゲームを何戦か見れば、スペーシングに問題があり、ロースターのバランスが悪いのは誰の目にも明白だ。

【圧倒的な強さは手に入らない】

 もちろん停滞はウェストブルックだけの責任ではなく、「32歳の元スピードスターが、後半戦で適応していくのではないか」という期待の声もなくはない。また、レイカーズにはほかに希望を抱かせる要素もある。

 大黒柱のレブロンは1月27日の76ers戦で離脱するまで、直近の18戦ではすべて25得点以上、28戦中20戦で30得点以上と絶好調だった。前述どおり、ここでの故障離脱は不安材料ではあるが、逆にいい休養になる可能性もある。

 さらに、故障から復帰して以降のデービスがいい状態に見えるのも心強い。2シーズン前の優勝の原動力になったレブロン、デービスという2人のスーパースターさえ元気なら、レイカーズには常に伸びしろが残っている。

「『楽観できる』と言い続けているのには理由がある。これまでは3人(レブロン、デービス、ウェストブルック)がほとんど一緒にプレーできていなかった。私たちには向上の余地があるし、(復帰後の)デービスのプレーを見ればそれが強く感じられる。彼らの守備面の多才さを生かして相手をストップし、オープンコートでプレーできれば、私たちは危険なチームになる」

 フランク・ボーゲルHCのそんな言葉どおり、たとえ下位シードでもポストシーズンに進出すれば、レイカーズは"プレーオフで誰も対戦したくないチーム"になるかもしれない。1年でもっとも大事な時期に、「レブロンと勝負したい」と考える選手はほとんどいないはずだ。

 ただ......もともとレイカーズの目標は"危険なチーム"になることではなく、"支配的なチーム"への昇華だった。そして、どんな楽観論者でも、彼らが今季中にその強さを手に入れることは想像できないだろう。

 交換要員に乏しい現状で、2月10日のトレード期限までの大きな補強も期待できそうにない。更迭の噂が流れるボーゲルHCの首をシーズン半ばに切っても多くは変わらないはずだ。

【誰がウェストブルックを望んだのか】

 ウェストブルックはおそらく、現時点でシックスマンの役割がベストだが、今季年俸4000万ドル以上の選手にそんな起用法を納得させるのも難しい。総合的に、今のレイカーズにとって、ウェスタン・カンファレンスの「2強」と目されるフェニックス・サンズ、ゴールデンステイト・ウォリアーズを撃破することは「至難の業だ」と言わざるを得ない。

「このチームになぜウェストブルックを加えようとしたのか、そのアイディアがどこから出てきたのかはわからない。(補強策に)レブロンも一枚噛んでいるのかもしれないが、そうだったとすれば、あれほどバスケットボールIQの高い選手がなぜそう考えたのか、どうしても解せない」

 1月下旬、イースタン・カンファレンスの某チームのスカウトが残したそんな言葉に、多くのファンが頷くのではないか。結局のところ、昨夏にレイカーズがまとめたひとつの大型トレードに話は戻るのだ。

 あそこでウェストブルックではなく、同じくトレードの噂があり、よりレイカーズにフィットすると見られていたバディ・ヒールド(サクラメント・キングス)を獲得していたら? それほど大がかりな改革に臨むのではなく、カルーソ、KCPを残して従来どおりのチーム作りをしていたら?

 常にスーパースターを中心に動くNBAでは、主力選手がチームの補強策に発言権を持つことは珍しいことではない。だとすれば、もともとこのトレードを望んだのはレブロンだったのか。あるいはチームフロントの意思か。

 その答えはわからないが、真相はどうあれ、このままいけばウェストブルックを獲得した移籍劇は「チームの混乱を誘発した動き」として語られていく可能性は高そうだ。