ようやくスムーズに回り出したなでしこジャパン 2022 AFC女子アジアカップに参戦中のサッカー女子日本代表が30日、タ…
ようやくスムーズに回り出したなでしこジャパン
2022 AFC女子アジアカップに参戦中のサッカー女子日本代表が30日、タイとの準々決勝に臨み、菅澤優衣香の4ゴールを含む大量7ゴールを奪って勝利。来年開催される女子ワールドカップの出場権を獲得した。元日本代表FWで2015年ワールドカップ(W杯)カナダ大会準優勝メンバーの解説者・永里亜紗乃さんはタイ戦をどう見たのか、解説してもらった。
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試合後のスタッツが示すとおり、日本がタイを圧倒した試合でした。7-0という大差での勝利でしたが、決定機の数を考えるともっとたくさんの得点が入ってもおかしくない展開だったと思います。
日本が攻守において素晴らしかったのは間違いありません。相手に何もさせなかったのは単純な力の差だけでなく、日本が本当の意味でのチームになってきたからでしょう。選手同士の会話が増えてきた印象もありますし、ピッチ外でコミュニケーションを密に取れるようになってきたことがピッチ内に好影響をもたらしているのでしょう。
グループリーグの3試合は格下相手に日本の強さを見せられたとは言えない内容でしたが、タイ戦は実力差通りのゲームができました。同じ準々決勝で優勝候補のオーストラリアが韓国に敗れてしまったという番狂わせもありましたし、勝つべき試合にしっかりと勝ったことは一つの収穫です。
この試合が今大会初出場となった岩渕真奈選手は、ディフェンスラインの背後を狙う動き出しで攻撃の起点になりました。FWのプレーヤーがそういったランニングを繰り返してくれると、2列目やボランチの選手は空いたスペースへ入っていきやすくなる。得点こそありませんでしたが、中心選手として攻撃のアクセントになってくれました。
その岩渕選手と相性の良さを見せたのが、この試合では右サイドハーフの位置に入っていた長谷川唯選手です。前線でアグレッシブに動き出せる岩渕選手と、その動きに合わせてプレーを選択できる長谷川選手のイメージが合致した時、ものすごく高いレベルでコンビネーションを展開できます。
長谷川唯の最大出力は日本の大きな武器
ただ、気になることがあります。長谷川選手は良いプレーと悪いプレーの波が大きすぎて、現時点ではコンスタントに能力を発揮しているとは言えません。彼女にしかできないプレーでチャンスを作った次のシーンでは、どこか集中力を欠いたようなミスをしてしまう。
実質的に勝負を決めた2点目の場面では、日本のパスワークの中心に背番号14がいました。周りの選手をタイミング良く使うことで攻撃のスピードが上がり、たくさんの選手が絡んでゴールになりました。そういったシーンをもっと数多く作れれば言うことなしですが、実際にはミスで流れを止めてしまうことも少なくない。
彼女が交代した後半、猶本光選手が同じ位置に入りました。猶本選手は単独で打開するプレーよりも、時間を作りながら周囲と絡んでいける選手。なでしこジャパンが世界一に輝いた時の宮間あやさんにプレースタイルが近いのかなと。この試合でも効果的なプレーで日本の攻勢を下支えしていました。
長谷川選手の最大出力は日本の大きな武器です。ファン・サポーターから人気があって、メディアからの期待値もすごく高い。だからこそもっと上のステージを目指してほしいですし、必要不可欠な選手に成長してもらわなければ困るのです。
7得点入ったことも大きいですが、攻撃面では個々が特徴を発揮していたと思います。菅澤優衣香選手は得点が入りそうで入らないモヤモヤした雰囲気を吹き飛ばす先制点を自分の形で決めてくれましたし、植木理子選手は持ち前の突破力を生かしてゴールネットを揺らしました。
とはいえ課題もあって、やはり最終局面におけるクロスの精度はまだまだ物足りない。右サイドバックの清水梨紗選手が良い形でオーバーラップを仕掛けていましたが、なかなかクロスが合わない。大量得点差がある試合では問題として表面化しないだけで、1点を争う拮抗したゲームでは結果を左右しかねない明確な課題です。
準決勝の中国戦ではボランチの活躍に期待
これらに注目しながら、準決勝ではボランチの選手の活躍に期待しましょう。今大会、組み合わせを変えながら多くの選手を起用しているポジションです。コンスタントにプレーできる選手が多い印象で、それぞれの選手がさらにバージョンアップしたところを見せてもらいたいと思います。
長野風花選手は先制点につながった縦パスが特徴になりつつあります。攻撃のスイッチを入れる役割を担い、その質を上げてもらいたい。タイ戦で3点目を決めた隅田凜選手は相手のペナルティエリア内に侵入することで存在感を発揮しているので、もっとゴールに絡めるようになれば次のステップへ進めます。林穂之香選手はもともと持っている高い能力に守備の力強さが加われば文句なしでしょう。それぞれの選手がスキルを伸ばし、特徴と呼べるような武器を持つことで、チーム力アップにもつながります。
準決勝の相手は中国です。思わぬところで足元をすくわれてしまう可能性もあるのがサッカーの怖さですが、アジアカップ3連覇を目指すうえでは通過点でしかありません。目標と目線はもっと高い位置にあるはず。オーストラリアが敗退した今、優勝は至上命令です。
ポイントはマイボールの時間の過ごし方。ボールを失った際の切り替えは徹底されている印象ですが、あえて遅らせる判断をすべき場面もあります。そういった意味でもボールを持つ時間が長くなる格下相手とのゲームでは、どれだけ効果的な攻撃をできるか、フィニッシュで終われるかが鍵になります。
タイ戦と同じように普通に戦えば勝てる相手なので、したたかな戦いができるかに注目すると同時に、期待したいです。(THE ANSWER編集部)