Mリーグ女流雀士インタビュー(3)伊達朱里紗@後編 Mリーグ2021で並み居る歴戦のツワモノたちを向こうにまわし、強烈な…

Mリーグ女流雀士インタビュー(3)
伊達朱里紗@後編

 Mリーグ2021で並み居る歴戦のツワモノたちを向こうにまわし、強烈な輝きを放っているのがプロ歴2年半の伊達朱里紗選手だ。昨年末時点で個人ランキングでトップに立ち、Mリーグ史上初の10万点超えの最高スコアを叩き出している。今季KONAMI麻雀格闘倶楽部の新メンバーとなった伊達選手に、Mリーグでの未来像などを聞いた。

「麻雀アニメを見てハマり、声優からプロ雀士に」

   ※   ※   ※   ※   ※



伊達朱里紗(だて・ありさ)1991年5月10日生まれの30歳

---- 伊達選手が初めてトップを取った10月22日の対局で話題になったのが、伊達選手が親番で役満のツモリ四暗刻(スーアンコウ※)をテンパイしながら、他家の当たり牌を掴んだ時に勝負を降りたことでした(※=4つの面子をすべて暗刻で揃える役)。

「打っている時は、掴んだ5萬が危ないと思っていてもアガリ牌だとは知らないから、終わってから確認して、本当にホッとした感じでしたね」

 10月22日の第1戦で伊達選手が対局したのは、EX風林火山・二階堂亜樹選手(日本プロ麻雀連盟)、KADOKAWAサクラナイツ・岡田紗佳選手(日本プロ麻雀連盟)、セガサミーフェニックス・魚谷侑未選手(日本プロ麻雀連盟)。

 トップ目の伊達選手が親番の南3局1本場8巡目に、3着目の岡田選手から5萬・8萬待ちのリーチが入る。11巡目に伊達選手の手は役満48000点のツモリ四暗刻テンパイに。ヤミテンで押していくも、15巡目で岡田選手のアガリ牌の5萬を掴むと、手を崩して放銃を回避した。

---- どうして岡田選手のアガリ牌がわかったのですか?

「それは違うんです。ビタ止めだと言われますけど、違うんですよ。手にした危険牌が絶対に当たるとは思ってなくて。あくまで私は状況が見合っていないから、この牌は押さないと考えただけで」

---- 親の役満をテンパイして勝負を降りられる人は多くはないと思うのですが、伊達選手が自分の手役に酔わずにクレバーに判断できるのはなぜでしょう?

「結局、麻雀の目的からブレなければ、あの判断はできると思うんですね。点棒を一番持って半荘を終わるのが目的であって、四暗刻をアガるのが目的ではないので。あの時点で私はトップ目だったので降りる選択肢があったから、それをしただけです。

 もし負けている状況での親番なら、絶対に降りなかったと思いますよ。そうしたら放銃していたわけで。半荘でトップに立つために複雑に絡み合った選択肢からベストな判断をする。そこが麻雀の難しさですけど、おもしろさだとも思います」

---- この局は2着目だった二階堂選手がアガって一時逆転されますが、次局で二階堂選手が岡田選手に放銃。伊達選手が再度トップ目で迎えたオーラスで二階堂選手が仕掛けて、最終的に二階堂選手が岡田選手から2着確定のアガリをしました。どんな心境でしたか?

「試合展開がすごくツイていて、結果的にトップになれたという感じでした。もう最後の局は(二階堂)亜樹さんがツモるか、私から直撃でアガると、私は順位をまくられていたので、とにかくホッとしたというのが大きかったですね」

---- そこから約1カ月後、再びすごい対局を見せました。11月18日の第2試合ではMリーグ記録の10万5500点のトップを獲得します。それまで同じチームの佐々木寿人選手(日本プロ麻雀連盟)が9万8200点で持っていた最高スコアの記録を更新しました。

「打っている時はベストを尽くそうと思っていて。途中で点差は気にしたんですけど、「集中力を切らさない」と目の前の一局一局に臨んでいたら、気づいたら10万点を超えていたっていう感じで」

---- 流れに乗った、ということですか?

「私は流れを気にしないんです。麻雀は偶然の繰り返しだと思っていて。配牌がどんなに悪くても、麻雀の神様に恥ずかしくないように、目の前の一局を一生懸命やるようにしていて。それが、たまたま結果になったというだけですね」

---- 2021年の対局を終えた時点で個人ランキングのトップに立ち、最高スコア記録もつくりました。デビューシーズンの前半戦を振り返ってください。

「出来すぎだし、ツイてるなって(笑)。あんまり特別なことをしているつもりはないですね。今まで培ってきた感覚で『これはしたほうが得』『これをすると損』というのを繰り返しているだけで」

---- 前半戦の活躍ぶりで知名度も高まったと思いますが。

「あまりそういう自覚はなかったんですけど、ラーメン屋で食べていたらうしろから『伊達さんですよね、Mリーグ見ています』と声をかけられて。食べ終わる頃にまた別の人からも『10万点を取った時、ここでラーメンを食べながら見てました!』って声をかけられて(笑)。大きな舞台に出ていることを、ラーメン屋であらためて自覚しましたね」

---- 対局そのものとは関係ないことですが、伊達選手は試合後の一礼を終えると、ストローを口にして水を飲むアクションが恒例儀式なっていますよね。

「私、ドライマウスなんですよ。喉がすぐに乾く症状があって(笑)。それを実況の日吉さん(辰哉/日本プロ麻雀連盟)がイジり出して、最近は完全に意識してやっています(笑)」

---- もともとの経緯はどういうものなんですか?

「2021年3月にあった第1期桜蕾戦(おうらいせん)で、優勝が決まった時も水を飲んでいたんですね。それを麻雀雑誌の漫画家さんが『伊達のウイニング水飲みじゃあ』って言ってくれて、それをファンの方たちが喜んでくださって。私は口が渇くから水を飲んでいただけなんですけど、みんなに言われるから飲まなきゃってなってきて(笑)」

---- もうひとつ、声優をされていると「ポン」や「チー」と鳴く時の声色も気を遣われているのですか?

「アハハハ。Mリーグはマイク音量が大きいから、私はイヤなんですよ(笑)。1戦目のあとに『鳴いた声がカワイイ』と言われちゃって。私は麻雀に集中していただけなのに、そこをイジられると気になるじゃないですか。だから2戦目は目立たないように声を低くして鳴きました。目立たないように(笑)」

---- 渋谷ABEMASのエース・多井隆晴選手(RMU)がリーチをかける時に、ふだんと違う低い声を出すのも同じ理由なんでしょうかね。

「アハハハ。違う気がします(笑)」

---- "ミスターMリーグ"と言える象徴的存在の多井選手が初年度のシーズンMVPになり、翌年は魚谷選手、昨年は佐々木選手が個人スコアトップに立ってMVPに輝きました。シーズンMVPをいやでも意識してしまうかと思うのですが。

「意識しちゃいますけど、さすがに気が早いですからね。トップ選手の集まったMリーグで前半戦のような結果が続くとは思っていないので。ただ、今だけはちょっとだけ「ヤッタネ!」って気持ちは抱きつつ(笑)。勘違いせずに残りの試合も自分にできることだけ精一杯やって、それで結果がついてきたら最高だなって思います」

---- 最後に伊達選手らしさとは、どういうところにあるか教えてください。

「どんなに劣勢でも最後まであきらめず、気持ちが折れないようにと心がけていて。たとえ選択した判断が裏目に出たとしても、決定した瞬間は自分が得だと思った選択なのだから、揺れないようにしようと思っています。

 麻雀は打っているとメンタルがやられちゃうことがあるんですが、メンタルをやられないようにするには、実力と勉強を積み重ねたものが自信になると思っていて。とにかくすごく勉強して、自分の実力を積み重ねて、メンタルが揺れないように頑張っているので、そこを見てください!」

(第4回につづく)

【profile】
伊達朱里紗(だて・ありさ)
1991年5月10日生まれ、兵庫県出身。声優を目指して上京し、2013年より声優事務所「81プロデュース」に加入。2014年に麻雀を題材としたアニメ『咲-Saki- 全国編』への出演をきっかけに麻雀に本格的に取り組み、2019年4月に日本プロ麻雀連盟所属のプロ雀士になる。2021年、KONAMI麻雀格闘倶楽部からドラフト全体3番目指名を受けてMリーガーとなった。