ダービーで引き分けたマドリード勢 前節バルセロナが破れレアル・マドリーが引き分けたことでレアル・マドリーとバルセロナの勝ち点差が「3」と開き、アトレチコ・マドリーが引き分けセビージャが勝ったことで両者の差は「1」と縮まった。エイバルとソシエ…


ダービーで引き分けたマドリード勢
 前節バルセロナが破れレアル・マドリーが引き分けたことでレアル・マドリーとバルセロナの勝ち点差が「3」と開き、アトレチコ・マドリーが引き分けセビージャが勝ったことで両者の差は「1」と縮まった。エイバルとソシエダの勝利はEL出場権争いを激化。オサスナは勝利し残留に一筋の希望を残したが、スポルティングは敗れ一歩後退した。

 スポルティングのソシエダ戦における1-3の敗戦にはスコア差以上に無力感が漂った。「選手たちのやる気不足ではないか?」という質問が監督に飛んだほど。残留するチームはモラルから崩れる。選手の態度からは諦めとか絶望感とかが明らかにうかがえた。そのスポルティングがレアル・マドリーを迎えるのに、ホームのファンの後押しが不可欠になる。もし勝ち点を得れば大きなモラルの注入になり、最後の踏ん張りも期待できるかもしれない。欧州CLバイエルン戦を経て臨むレアル・マドリーは、ローテーションをしてメンバーを落としてくるだろう。モラタ、イスコ、コバシッチ、ハメス、デニーロの出番である。ジダンのチームは前節アトレチコ・マドリーと最後に引き分けた。徒労感が漂う勝ち点2の喪失は、圧力とラインを下げ守りに入ったことで生まれた。ジダン監督の安全策が裏目に出た格好だ。

 マドリッドダービーでの引き分けはアトレチコ・マドリーの特徴を表したものだった。押し込まれてもGKオブラクを中心に懸命に防戦、決して諦めずカウンターでの得点機を生かした。シメオネの交代策も土壇場での同点に大きく貢献した。サウールに代えコレアを入れたことはともかく、劣勢でフェルナンド・トーレスに代えて守備的MFのトーマスを入れる采配には首をかしげた人も多かったのではないか。だが、トーマスが入り中盤が数的に優位になったことで相手からボールを取り上げることに成功。コレアの絶妙のアシスト、グリースマンのフェイントを入れて相手GKを飛びこませてからポストぎりぎりに流し込む、技ありシュートを生んだ。CLを含め8試合負け知らずのシメオネのチームに脅威になるとすれば、オサスナのゴールゲッター、セルヒオ・レオンだ。昨季22ゴールで2部リーグ得点王の彼は、得点感覚で傑出しながら先発で起用されない不思議な采配の犠牲になっていたが、レガネス戦では自ら誘ったPKで同点ゴール、アングルの無いところからGKを頭上に突き刺さる強烈なボレーで勝ち越しゴールを決めた。これで10点目。最下位オサスナが奇跡を起こすにはセルヒオ・レオンの爆発しかなく、二度と先発から外れることはないだろう。


ソシエダに手痛い一敗を喫したバルセロナ(写真:Getty Images)

 指揮官の采配が裏目に出た
 バルセロナ対ソシエダは大敗か好ゲームか興味が分かれる。前節は今週のCLユベントス戦に選手の気が行っていたのか、マラガにあえなく0-2で敗戦。GKカメニの奇跡的なセーブ、マラガにうまく守られたこともあるが、気になったのはカウンターに対する守備の脆さ。マスチェラーノを右SBにしCBをウムティティとマチューと組ませたのは、失点した前半でマチューを下げたことでわかる通りルイス・エンリケ監督の失策だった。アンドレ・ゴメス、デニス・スアレスはまたも機能せず。ネイマールは馬鹿げたイエローカード2枚をもらい、この試合は出場停止になる。ソシエダはスポルティングを3-1と問題なく破った。相手のマークミスを突いて先制すると、後はボールを回して時間を使いつつ守備のギャップを作って相手ゴールに脅かす得意の形だった。バルセロナとソシエダのプレースタイルは共通している。だからボール支配をめぐる好ゲームになる可能性もあるし、個人技で上回るバルセロナがボールを取り上げてソシエダを無力化してしまう可能性もある。1つ確かなのはソシエダの監督、バルセロナB監督経験のあるエウセビオが、ボールを譲ってカウンターに出るなどの策を弄することがないこと。正面からぶつかる策が吉と出るか凶と出るか。

 バレンシア対セビージャは、本来ならリーガ4、5番手を争う看板カードなのだが、バレンシアが中位に低迷していることで、例年とは趣が異なる。だが、セビージャの足を引っ張ることが喜びの1つであるバレンシアが手を抜くことは決してないだろう。おりしもボロ監督が率いるチームは3連勝。暫定監督だがこのまま来季の指揮を任せていいのでは、という声が出るほど調子を上げている。上昇の鍵は2ボランチのパレホ、メドラン、トップ下のカルロス・ソレールの中盤センターラインの安定。20歳のカルロス・ソレールは下部組織出身で繊細なボールタッチだけでなくゴール(3点)もある。冬の移籍市場で加入したザザも前節グラナダ戦では2ゴールを決めた。運動量とボールへの激しいアタックに定評があるFWで、決定力が上がれば攻撃を引っ張る存在になるだろう。セビージャはデポルティーボを4-2で破って5試合未勝利から脱した。しかしリードを2度追いつかれ、明らかなPKの笛が2度吹かれないなど、CBラミをケガで欠きパレハがミスを連発する守備は不安定なまま。今週末も大量得点、大量失点の大味な、いやスペクタクルな試合を演じそうな予感がする。

 ベティス対エイバルは、明暗がはっきり分かれる者同士の顔合わせ。ベティスは3連敗中、エイバルは3連勝中。ベティスはラス・パルマスに1-4で大敗した。5バックで守備を固めたはずが、中盤の数的不利(3対5)を突かれて良いようにパスを回され失点した。ゴールは相変わらずベテランで疲れが見えるルベン・カストロ頼み、ケガから復帰したホアキンも元気がない。セバージョスだけがレベルの違うテクニックと向上した運動量で気を吐いている状態が続く。エイバルはセルタを敵地で破り、欧州カップ戦出場権争いに名乗りを上げた。乾不在の間に起用されたベベが2試合で1得点のほか、抜群のスピードと強烈なミドルシュートで左サイドでアクセントになっている。誰が出ても活躍できるのは、頑張れば機会は与えられる、絶対的なレギュラーはいない、というポジティブな緊張感ゆえ。よって今週末は乾は納得のベンチスタートとなるだろう。それが乾も評価するメンディリバル監督の公平な采配というものだ。

《文=木村浩嗣》