Mリーグ女流雀士インタビュー(2)高宮まり@前編 各チーム90試合で争うレギュラーシーズンの約6割を消化したMリーグ20…
Mリーグ女流雀士インタビュー(2)
高宮まり@前編
各チーム90試合で争うレギュラーシーズンの約6割を消化したMリーグ2021。8チームのうち上位6チームが進出できるセミファイナル(3月21日〜)を目指し、熾烈な争いが続いている。
そのなかで今季の前半戦、主役とも言える躍動を見せたのがKONAMI麻雀格闘倶楽部だ。選手入れ替え規定が新たに導入されたなか、今季から加入した伊達朱里紗(日本プロ麻雀連盟)と3シーズン在籍したEX風林火山を退団して麻雀格闘倶楽部に加わった滝沢和典(日本プロ麻雀連盟)の活躍で、今季のMリーグを大いに盛り上げている。
ただ、これから佳境を迎えるなかで、創設時からエースの佐々木寿人(日本プロ麻雀連盟)とともにチームを牽引してきた高宮まり(日本プロ麻雀連盟)の爆発は不可欠だろう。その高宮選手に麻雀プロとなった経緯やMリーグの魅力などを聞いた。
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高宮まり(たかみや・まり)1988年11月8日生まれの33歳
---- 麻雀を始めたキッカケを教えてください。
「中高生の頃に読んでいた"くらたまさん"(倉田真由美)や西原(理恵子)先生のマンガに麻雀が登場して、『やってみたいなぁ......』と思ったのが最初でしたね。麻雀プロという仕事を知ったのも、くらたまさんの『だめんず・うぉ〜か〜』に登場する"ヨーコ会長"がキッカケでした」
---- ヨーコ会長こと渡辺洋香プロ(最高位戦日本プロ麻雀協会)は、2002年に初代女流最高位になったプロ雀士ですね。その影響で麻雀を始めたのですか?
「いいえ、高校時代はまわりに麻雀をやる人は誰もいなくて(苦笑)」
---- 今回、高宮選手の取材をするにあたって資料を調べたのですが、ネットには麻雀プロ以前の情報がほとんど出てこなくて。それが意外にも身近に高宮選手の同級生がいまして、聞いたところでは高校時代は生徒会の活動をされていたそうですね。
「高校1年の頃は生徒会の書記をしていました。高校3年の頃は文化祭の実行委員長をやっていましたね」
---- その真面目な女子高生がどうやって実際の麻雀と出会ったのですか?
「真面目だったかどうかはわからないですけどね(笑)。最初は20歳を過ぎた頃にネット麻雀で覚えて。その1カ月後くらいにバイトを探していたら、麻雀店が募集していたので、『ここでバイトしたら麻雀のルールも覚えられて一石二鳥だな』っていう軽い気持ちで働き始めたんですよね」
---- 当時は雀荘にどんなイメージを持っていたんですか?
「怖いとか怪しいとかは全然なくて。お気に入りのマンガを描く先生方が好きな麻雀を打つ場所、くらいの感じでしたね(笑)」
---- そこが麻雀プロへの入り口でもあったわけですね。
「その雀荘にプロ雀士の方がいて、私もプロになりたいなぁと思って。働きだして半年後くらいにプロテストを受けて、22歳になる年にプロ雀士になりました。こうして振り返るとトントン拍子にプロになったように聞こえますけど、当時の日本プロ麻雀連盟のプロテストは筆記、面接、実技のあとに半年の研修期間を経て最終試験だったので、合格が決まるまではすごく不安だったのを覚えています」
---- そこまで麻雀にハマった理由はなんだったのですか?
「うーん、なんだろう。勝負が好きというよりは、新しい何かを知るのが好きで。それで麻雀に夢中になった感じでしたね」
---- プロ雀士になってからは順調だったのですか?
「2010年にプロになって、当初は少しずつ麻雀が強くなればいいなぁくらいに思っていたんですよね。それがテレビ対局などにすぐ呼んでいただいたりしたので、早々に麻雀の世界にどっぷり浸かった感じでした。それからの日々を振り返れば、あっという間な感じです」
---- 2018年にMリーガーになりますが、プロ雀士としての最初の飛躍はいつでしたか?
「女流モンド杯で初優勝したのが、最初の転機だったと思います」
女流モンド杯とは、テレビ対局の最高峰リーグである『モンド麻雀プロリーグ』のタイトルのひとつ。女流プロによる『女流モンド杯』、50歳未満の男性プロ雀士による『モンド杯』、50歳以上の男性プロ雀士による『名人戦』がある。3つのカテゴリの優勝者は、『モンド王座決定戦』で前年度モンド王座決定戦の優勝者を交えて年間チャンピオンを争う。
---- 初めてのタイトル獲得の気持ちは今でも覚えていますか?
「どうだろう? 2013年のことですからね。初出場だったので最初は緊張したのかなぁ。『頑張ろう!』と思っていたことしか覚えていないですね(笑)」
---- 緊張するタイプですか?
「まったく(笑)。でも、プロになって初めてのテレビ対局で清水香織さん(日本プロ麻雀連盟)と同卓した時は、けっこう緊張しましたね。オーラがすごいなぁって」
---- 清水プロは女流雀士として初めて王位に就いたのをはじめ、数々のメジャータイトルを獲得した女流雀士のレジェンドですが、Mリーグでも沢崎誠選手(KADOKAWAサクラナイツ/日本プロ麻雀連盟)や近藤誠一選手(セガサミーフェニックス/最高位戦日本プロ麻雀協会)、多井隆晴選手(渋谷ABEMAS/RMU)など、多くの麻雀界のビッグネームと対戦されています。どんな心境なのでしょう?
「うれしいし、楽しいですよね。ふだんの対局で他団体の方と当たることは少ないですし、沢崎さんは同団体ですけど階級もプロになった期もだいぶ違うので、同卓する機会はほとんどなくて。貴重な経験ですし、実は一生懸命です(笑)」
---- そのMリーグについてですが、高宮選手は1年目から参戦されて今年で4年目になります。この4年間でMリーグに感じる変化はありますか?
「それはたくさんありますね。初年度はみんなが手探りな感じでしたからね。でも、試行錯誤しながら、4年目になって麻雀をされる方たちには浸透し、多くの方に見てもらえている実感もあります」
---- 打ち方も変化している?
「私の打ち方は、1年目と2年目からでは大きく変えましたね。1年目は打点の高さよりも相手より先行する手組みを優先させていました。2年目からは打点とのバランスを心がけるようになりましたね」
---- その理由を教えてください。
「所属団体のリーグ戦やテレビ対局など、ふだんやっている試合は半荘4回のトータルで勝敗が決まるので、その4回のなかで点数をまとめる打ち方ができるんです。だけど、Mリーグは半荘1回勝負。そこで勝ちきるっていうのは難しいので、先行することを優先させました」
---- それを変えたのはなぜですか?
「Mリーグは赤ドラや裏ドラが入っているので、打点が高くなる傾向にあるんですよね。相手の打点が高くなる可能性があるなかで、自分の手牌にドラも赤もない状況で仕掛けていって押しきれればいいですけど、そうじゃない場合はリスクだけになるので。今はいい待ち、高い打点、相手に押し返されても後悔しない手づくりを心がけています。
---- Mリーグでの高宮選手はリーチを多用されるのも、そういった理由なのでしょうか?
「そうですね。連盟での試合はほとんどリーチをかけなくていい手組みをするんですけど、Mリーグは裏ドラもあるので意図的に変えていますね。本当に強い人になれば『ルールが違っても打ち方は一緒だよ』と言われるかもしれないですが、私はまだその領域にはいないので。
ただ、そればかりになっても勝てないので、点数状況をメインに考えて押し引きをするようにしています。それで結果が悪くても、打牌選択のプロセスでブレたり、後悔することがないように心がけています」
(後編につづく)
【profile】
高宮まり(たかみや・まり)
1988年11月8日生まれ、茨城県出身。2010年にプロ雀士となり、現在は日本プロ麻雀連盟に所属する。152cmと小柄ながら攻撃的な雀風で人気を博す。グラビアアイドルとしても活動中。2018年、KONAMI麻雀格闘倶楽部からドラフト2巡目指名を受けてMリーガーとなった。