かつては世界の頂点に立った。その後、なでしこジャパンは五輪出場権を逃す悔しさを味わい、地元五輪を終えた後、再び新たなス…

 かつては世界の頂点に立った。その後、なでしこジャパンは五輪出場権を逃す悔しさを味わい、地元五輪を終えた後、再び新たなスタートを切った。現在、ワールドカップ出場権とアジアの頂点を目指してインドで戦う日本女子代表をサッカージャーナリスト・後藤健生が考察する。

■手放しで喜べない大量得点での連勝

 インドのムンバイを中心に開催されている女子アジアカップに出場している日本代表(なでしこジャパン)が、ミャンマーに5対0、ベトナムに3対0と連勝して準々決勝進出を決めた。

 ただ、ミャンマーやベトナムとはチーム力の差があるので、大量得点での勝利も当然の結果。むしろ、あれだけボールを握り続け、チャンスを作り続けている中、2試合で8ゴールというのは物足りなささえ残る試合だった。2試合とも、相手が元気な前半は1得点のみに終わっている。

 決定力についての不安は大会前から指摘されていた。

 昨年11月のオランダ遠征では、1戦目ではアイスランドに0対2で敗れ、2戦目となったオランダ戦は、相手がほとんど国際試合の経験のない若手選手を並べていたにもかかわらず、0対0の引き分け。2試合連続で無得点という結果に終わってしまったからだ。

■攻撃のリズムが単調になった理由

 最大の原因は、準備不足だ。

 昨年の東京オリンピックで準々決勝敗退となった後、高倉麻子前監督が退任し、新たに池田太監督が就任したが、準備期間が短かったうえに新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあって十分な準備ができなかったのだ。今大会に向けても準備合宿は行ったものの、海外組とは現地での合流となってしまった。

 準備不足は明らかである。

 さらに、今大会では各国とも新型コロナウイルスの感染に脅かされ、日本が対戦したベトナムも大きな影響を受けていたし、開催国のインドは感染症拡大の結果、チームを編成することができず、2戦目以降を棄権してしまった。

 そして、日本チームでは攻撃のエース格である岩渕真奈がイングランドから現地入りした直後のPCR検査で陽性と判定され、隔離を余儀なくされてしまった。その後、陰性が確認されたためベトナム戦の翌25日からチームに合流できることになったが、この間、岩渕はチームのトレーニングに参加できていない。

 実際の試合内容を見ても、まだまだだ。チームの立ち上げからあまり実戦をこなしていない現状では仕方のないことだが、攻撃のリズムが単調で、守りを固める相手を崩しきれないもどかしい展開が続いている。

 ベトナム戦では、菅澤優衣香田中美南という日本が誇るストライカー2人を並べたが、点取り屋タイプの2人が同じタイミングで飛び込んでしまった。

■再現性が高かったミャンマー戦での2得点

 ただ、ミャンマー戦では奇麗な形で5ゴールを奪った(そのほか、ゴールポストやクロスバーに嫌われたシュートが3本あった)。

 1点目は膠着状態だった前半22分。GKの山下杏也加のパントキックが右サイドの長谷川唯に渡り、長谷川からの長いクロスを植木理子がドンピシャのヘディングで決めたもの。ボールを持って攻め続けてもなかなか崩しきれなかったのだが、GKからの長いボールが渡ったことでゴール前にスペースができた。

 後半立ち上がりの2点目はサイドバックの清水梨紗からのくさびを受けた宮澤ひなたが相手のMF1人をかわして植木に付け、植木がワンタッチではたいたボールを受けた長谷川が抜け出したもの。さらに、3点目は猶本光の直接FKがクロスバー下に当たってゴールイン。4点目は、右サイドでつなぎ、交代でピッチに入ったばかりの成宮唯が持ち込んでシュートコースを作ってファーサイドを正確なシュートで射貫いた。そして、後半のアディショナルタイムには左サイドから遠藤が入れた強いパスを長谷川がワンタッチで処理して相手DFを外して、GKの肩越しに浮かせて決めた。

 セットプレーも含めて、それぞれ異なったパターンでのゴールが生まれたのは将来につながるだろう。中でも長谷川唯が決めた2得点は再現性の高いパターンであり、将来への道筋が見えたような気もする。

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