Bリーグ群馬が賛同した小児がん支援「レモネードスタンドプロジェクト」 2021年12月11日、太田市運動公園市民体育館で…
Bリーグ群馬が賛同した小児がん支援「レモネードスタンドプロジェクト」
2021年12月11日、太田市運動公園市民体育館で行われたバスケットボール・Bリーグの群馬クレインサンダーズ―信州ブレイブウォリアーズ。この日、会場の入場口近くに立つ黄色のテントでは、小児がん患者の支援を目的としたチャリティー活動を行う地元高校生らが、試合に向かう観客に寄付を呼び掛けていた。
黄色いテントは、ぐんま国際アカデミーに通う生徒たちによるチャリティー活動「レモネードスタンドプロジェクト」のブースだ。このプロジェクトは、同校中高等部11年生(高等部2年)の松岡優さんが、アメリカで広まっていた「レモネードスタンド」活動に着目したことから発案。
当初は、自分にできる範囲内で行うつもりだったが、多くの人にこの活動を知ってもらいたい想いから、自ら企画書を持って企業に働きかけ、地元Bリーグチームの群馬クレインサンダーズ、チームオーナーである株式会社オープンハウス、そして太田市に工場を構えるポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社の賛同を得られ、スタートした。
松岡さんたちのレモネードスタンドは、群馬クレインサンダーズのホームゲームの際、会場の外で月1度のペースで開催。1本200円でレモネードを販売し、すべての売上金と集まった募金を小児がん支援に寄付する。
「ぐんま国際アカデミーの皆さんがこのような活動をしているというのは、今回僕も初めて知ったこと。こういう活動は、より多くの方たちに知ってもらうべきです」
と話すのは、この日、松岡さんら高校生とともにレモネードスタンドで募金を呼び掛けた、地元・群馬県太田市出身の元プロ野球選手、斎藤佑樹さんだ。2か月前、11年間の現役生活を終えた斎藤さんはポッカサッポロフード&ビバレッジから「レモネードスタンドプロジェクト」の話を聞き、「僕の発信する力でどこまでお手伝いできるかは分からないが、少しでも役に立てれば」と駆けつけた。
「僕が高校生の頃にそういう活動に取り組んでいなかったので、彼らを見てすごく素晴らしいなと思いましたし、だからこそ、これからの僕の人生においても、彼らを見てすごく勉強になりました」(斎藤さん)
斎藤さんの言葉に「本当に温かくて、優しかった」と松岡さん
「斎藤さんから『一人でも多くの患者を救えるよう、仲間と一緒に頑張って』という言葉をいただきましたが、本当に温かくて、優しかった。こんな有名な選手が来てくれるほど注目されているんだと改めて感じたし、これからも頑張ろう、とモチベーションが上がりました」
と、松岡さん。だが、今後の支援活動への取り組みについて問われた斎藤さんのコメントからは、むしろ彼らから刺激を受けた様子がうかがえる。「僕にできないことはたくさんある。でも僕にしかできないこともあるはず。想いを持ってやりたいので、早く見つけていきたい」(斎藤さん)
「うちの学生は社会貢献に対しての意識がとても高い。その中でうまい出会いがあり、皆に応援してもらいながら進んでいき、非常にうれしく思っています」
この日、群馬クレインサンダーズのレプリカユニフォームを着て、声援を送る清水聖義太田市長の姿があった。清水市長は松岡さんが通う、ぐんま国際アカデミーの理事長も務める。
「ボランティア活動や社会貢献というのは、自尊心を高揚させ、自分自身に自信がつき、勇気が湧いてくる。誰かのために動くことは、生徒たちにとってもいい経験になっていると思います」(清水理事長)
同校では2017年、一人の女子生徒の呼びかけにより、「女子高生ヘアドネーション同好会」が誕生。抗がん剤治療や放射線治療などで、毛髪を失った子どもに無償で提供する医療用ウィッグの材料となる髪を寄付する活動がスタートした。この時も大手かつらメーカー、アートネイチャーが同好会の活動に賛同。ウィッグを無償で作ってくれることになり、現在では全国各地から髪の寄付が届く。
「彼ら(松岡さんら)はある意味、ラッキーです。いざ、社会貢献しようと思っても多くの場合、恵まれた環境はなかなか整わない。しかし、企業から理解を得られ、一般の方々も巻き込めるいい会場が見つかりましたから」(清水理事長)
学校側としては今後、レモネードスタンドプロジェクトをどのようにサポートしていくのか? その問いに対し、「あまり大人が口を出さず、彼らは勝手に自分でやっていくのがいいんじゃないかな」と清水理事長。
「例えば、ヘアドネーションの活動も何とかしようという小さな声から始まり、今では全国から支援が届くようになった。レモネードスタンドプロジェクトも同じように、だんだんと広がっていくと思いますよ。だいたいうちの生徒たちは、自分でストーリーを作り、結論までもっていくのが得意。どうしても助けて欲しいというときは助けますが、今後もうまい具合に続けていけるんじゃないですかね」(清水理事長)
清水理事長「街としてもいい回転が生まれている」
「小児がんにはサポート、支援が必要だということをもっと多くの人に知ってもらいたい」。高校生の心のなかに生まれた想いの渦が、仲間を、企業を、アスリートを巻き込んだ。今、その想いは波紋のようにスポーツを楽しむ人々に広がり始めている。
「地元チームの応援で会場に訪れた足で、ジュース一杯飲むことで、自分も社会貢献ができる。そのことで、みんなが喜びを持ってくれるので、街としてもいい回転が生まれていると思います」(清水理事長)
試合後、家路に就く観客の姿もまばらになった頃、出口から真っすぐテントに向かう一人の観客の姿があった。その女性は募金だけすると、高校生が差し出したレモネードを丁重に断り、おじぎをしながら足早に去っていった。
「ありがとうございました!」。暗くなった冬空に、学生たちのはつらつとした声が響いた。(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)
長島 恭子
編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)、『つけたいところに最速で筋肉をつける技術』(岡田隆著、以上サンマーク出版)、『走りがグンと軽くなる 金哲彦のランニング・メソッド完全版』(金哲彦著、高橋書店)など。