1選手にコロナ陽性判定、10日間の隔離生活を強いられるも仙台89ERSに2連勝 バスケットボールのBリーグはコロナ禍の2…

1選手にコロナ陽性判定、10日間の隔離生活を強いられるも仙台89ERSに2連勝

 バスケットボールのBリーグはコロナ禍の2021-22シーズンを、B1は22チーム、B2は14チームの体制で戦っている。B2からはB1ライセンスを持つ上位2チームが昇格する規定だ。

 ファイティングイーグルス名古屋がB2東地区首位、全体最高勝率と走っている。開幕前には昨季のB2得点王アンドリュー・“スクーティー”・ランダルを筆頭に、複数の有力選手を獲得していた。他にもエヴァンスルークは帰化選手で、11月のワールドカップ予選に出場している日本代表のビッグマン。石川海斗は終盤の勝負強さで知られるB2最高のポイントガードだ。少なくとも“足し算”で考えれば、優勝候補の筆頭に挙げられるメンバーを揃えていた。

 昨季まではオーナー企業・豊田通商で仕事をしながらプレーする選手がおり、練習の時間帯も夜だった。それが今季は全選手が競技に専念する体制に切り替わっている。また元千葉ジェッツのカルバン・オールダム氏をアシスタントコーチに迎えるなど、オフコートの体制が強化されていた。

 しかしチームは1月に入って、厄介なトラブルに見舞われた。越谷アルファーズ戦を終えた6日、選手の1人に新型コロナウイルスの陽性判定が出た。残りの選手やスタッフも「濃厚接触者」として10日間の隔離生活を強いられる。コンディションの維持が難しいなか、FE名古屋は1月22日の仙台89ERS戦を迎えていた。仙台はFE名古屋にとって東地区のライバルだ。

 FE名古屋は隔離期間を終えた1月17日に活動を再開していた。川辺泰三ヘッドコーチ(HC)は明かす。

「(隔離期間は)家にしかいられないので、体育館の器具を持っていく、足りないものは購入して送る対応をしました。トレーナーやチームドクターと相談をして月火に練習をやって、水曜日をオフにしました。身体を起こす練習に2日、相手の対策に2日。まったく準備はできていませんでした」

 昨季のFE名古屋は、新型コロナウイルスの感染者を出さずにシーズンを乗り切った。だから今回はクラブにとっては初めての隔離生活対応だった。木曜から本格的な練習を再開したものの、練習中には通常だと考えられないほどパスミスが続出。フリースローも「20本中14本くらい外す」(川辺HC)状態だったという。予定よりフリースローのメニューを増やして、チームは土曜の試合に臨んだ。

ディフェンス中心のチームだからこその強み

 他チームの経験を生かして事前に備えていた選手もいる。石川は説明する。

「僕は元々、家の一部屋をトレーニングルームにしています。バイクがあるし、スケートの滑るやつもあるし、懸垂もある。昨シーズンに熊本でコロナが出た時に、その環境がないと体力が落ちてしまうと分かった。コロナのためだけではないですけど、いつ何どきそういうことがあってもいいように部屋を作りました」

 川辺HCは振り返る。

「体力より感覚が一番ブレるなと思いました。最初は天王山くらいの気持ちでしたけれど、10日間の隔離となったので……。まずできるだけ選手を使う、怪我なく……というところにかなり移行しました」

 そんな状態で迎えた22日の仙台戦だが、FE名古屋は仙台を95-69と一蹴してみせた。ランダルが26得点、ジェレミー・ジョーンズが19得点、エヴァンスルークが15得点とスコアが各選手に分散。“守備から速攻”の形がハマり、得点も伸びた。ベンチ入りした12選手が全員コートに立ち、得点を決める理想的な展開だった。

 石川は胸を張る。

「オフェンス中心のチームならば(感覚のズレが)大きく関係すると思うんですけど、僕らはディフェンスに重きを置いてやっている。身体が動けばディフェンスはできます」

 FE名古屋が多用するラインアップはエヴァンス、ランダル、ジョーンズの3ビッグ。エヴァンスは203センチ、ランダルが198センチ、ジョーンズは201センチとバスケット界の基準では“スモール”なビッグマンだ。ただこの3人はサイズのハンデがありつつ、インサイドの守備やリバウンドでいい仕事をしていた。

 川辺HCは説く。

「ウチはそもそもディフェンスのチームなので、そのインテンシティは相当高く求めています。リバウンドとルーズボールにダイブすること、ボールマンへのプレッシャーをしっかりかけること、コンタクトのあるディフェンスをすることをチームルールにしています。彼らはそれを愚直にやり続けていますし、機動力があるからこそフットワークで守れる。特にJJ(ジョーンズ)は元々ディフェンスのいい選手です。ゴンザガ大でも4番をやっていて、思っているよりビッグマンにつける」

 この3人の守備における強みはウイング、ガードまでほぼすべての相手につけること。マークのスイッチ(受け渡し)をしてもミスマッチが起こらず、相手はズレを作れない。

「スイッチは多くなるんですけれど、しっかりそこから対応できています。今のバスケットはピックからのズレを作るプレーが主流だけど、スイッチを上手に使うと(相手は)それができない」

今季のFE名古屋は特定の選手が無理をする必要がない

 FE名古屋の編成を開幕前に見て、気になっていたポイントが攻撃時の“ボールシェア”だった。例えばランダルや石川は「自分でズレを作って自分で決める」能力を持ち、ボールをかなり長く持ち続けるタイプ。しかし今のFE名古屋はそんな異能の持ち味を損なわず、それでいてボールをスムーズに動かす、シェアするオフェンスを実現できている。

 川辺HCは振り返る。

「ランダルとはむちゃくちゃ喋りました。ただ彼もボールをシェアして、全員で戦いたいと言っていたし、そういうバスケットがいいことも分かっていた。システム理解度が上がってきて、ボールシェアと攻め時を理解してもらえています」

 石川は説明する。

「周りから見たら今まで『石川はずっとボールを持っている』『ランダルがずっと攻めている』と思われていたかもしれません。でも『そうしなければいけない』というのがあって、そうやっていました。僕が攻めることもできるけれど、まずは味方を活かすことが重要だと思っています。スクーティー(ランダル)はもちろん攻められるし、相馬卓弥という3ポイントのスペシャリストもいる。他にもいい選手はたくさんいます」

 今季のFE名古屋はズレを作る、守備を外に拡げられる“個”が揃っているため、特定の選手が無理をする必要がない。つまり強引なオフェンスをする必要がない。

 相手側から見ると、守備の狙いを絞れず、ボールに食いつかざるを得ない。だからFE名古屋がいいフロアバランスで、ボールを滞りなく動かせば自然とズレは生まれる。そしてすでに空いた状態なら、どの選手も楽なシュートを放てる。

 FE名古屋は23日の第2戦も74-69で制して仙台に連勝し、現在26勝4敗。能力のある人材が噛み合った結果が、この圧倒的な戦績だ。B1昇格はアリーナ、ライセンスの問題解消という別の要素が絡んでくるが、間違いなく彼らはB2制覇の最短距離にいる。(大島 和人 / Kazuto Oshima)