J2有力クラブの補強を査定する「J2のミカタ特別編」第3回は、昨シーズン4位のV・ファーレン長崎、J1から降格した大分…
J2有力クラブの補強を査定する「J2のミカタ特別編」第3回は、昨シーズン4位のV・ファーレン長崎、J1から降格した大分トリニータを取り上げる。どちらもJ1で実績のあるブラジル人選手を獲得し、J1昇格への意気込みを編成で示している(#1、2のうち2)。
■大分は主力ほぼ残留で戦力充実
J1からJ2へ降格した大分は、昨年末の天皇杯で決勝まで勝ち上がった主力がほぼ残留した。16年から6シーズン指揮した片野坂知宏監督はガンバ大阪の指揮官となったが、後任の下平隆宏監督は柏レイソルと横浜FCを指揮し、19年には横浜FCをJ1昇格へ導いた。西山哲平ゼネラルマネージャー(GM)は、前監督のもとで構築した「ボールを保持しつつ戦術的に相手を崩す、戦術的に守る」という方向性を維持発展していく人材として、「下平監督が適任と判断した」と説明する。
下平監督は今シーズンの陣容について、「昨シーズンから28人残ってくれた。片野坂前監督が築き上げたチームの骨格を担う選手が残ってくれたのは心強い」と語る。「そして新たに2人の外国籍選手と5人の新加入選手を迎えて、本当にいい陣容を揃えてくれたと思っている」と満足気に話す。目標はもちろん、1年でのJ1復帰である。
チームの骨格を維持することができただけに、補強はピンポイントとなっている。大きなニュースはエドゥアルド・ネットの獲得だ。16年から18年途中まで川崎フロンターレに、18年途中と19年は名古屋グランパスに在籍したボランチである。経験と実績を持った33歳は、チームの大きな支えとなっていくだろう。
ブラジル人FWヴァンデレイ・サムエルも合流する。西山GMによれば、「21歳と将来性豊かな選手で、184センチの長身を生かしたヘディングと、振りの速い左足のシュート」が特徴とのことだ。21年シーズンはヴィトーリアで公式戦51試合に出場し、10得点をマークしている。
2人のブラジル人については、来日がいつになるか。オミクロン株による感染拡大により、外国人の新規入国は停止されている。下平監督のもとでチームを再構築していくだけに、早期の合流が望まれるところだ。
■エンリケ・トレヴィザンに代わるCBは?
指揮官のサッカーを知る選手もやってきた。16年から18年にかけて、柏レイソルで下平監督と共闘した中川寛斗が京都から完全移籍してきたのだ。「155センチでサッカーをやっていて、大分のフィロソフィである『観ている人に感動を与えるサッカー』を、僕がこの体格で一生懸命ボールを追ったりゴールを決めたりということで体現できると思う。最初の1試合目からピッチに立って、しっかり結果を残すことに集中していきたい」と力強く語る。
Jクラブからの加入はもうひとりいる。鹿島アントラーズでプロデビューを飾り、昨シーズンはジェフユナイテッド千葉でプレーした伊東幸敏だ。リオ五輪世代のひとりでもある28歳の右サイドバックで、タイミングのいい攻撃参加から得点機を演出する。
現状で不足があるとすれば、エンリケ・トレヴィザンに代わるCBか。FC東京へ移籍したこのブラジル人CBは、昨シーズンのリーグ戦28試合に出場している。3バックと4バックでは必要なCBの枚数が変わり、現状で枚数に不足はない。そのうえで言えば、日本人選手のレベルアップが必要になっていきそうだ。
■前大宮監督の岩瀬氏がヘッドコーチに
【補強充実度】 B 既存の戦力が整っていただけに、そもそも補強の規模はコンパクトでいい。そのなかで、J1での実績を持つエドゥアルド・ネット、下平監督のサッカーを知る中川を獲得したことは評価できる。エンリケ・トレヴィザンに代わる外国人CBは欲しいところだが、「B」の評価でも十分の戦力が揃っている。
【J1昇格可能性】A 保有戦力から判断すれば「A」だ。下平監督は19年に横浜FCをJ1へ導いた実績を持つ。新任の岩瀬健ヘッドコーチは17年に下平監督が率いる柏でヘッドコーチを、20年には片野坂前監督のもとでヘッドコーチを務めた。昨年は大宮の監督を務めている(5月で解任)。下平監督と前監督のサッカーを、さらにはJ2の戦いを知る人材だ。あとは、保有戦力が計算どおりの数字を残せるか。昨年のJ1では町田也真人の8得点がチーム最多だったが、J1昇格争いに加わるには60点以上が目安となるだけに、2ケタ得点を記録するFWの登場が待たれる。