スペイン・バルセロナで開催されている「バルセロナ・オープン・バンコサバデル」(ATP500/4月24~30日/賞金総額232万4905ユーロ/クレーコート)。   ◇   ◇   ◇ 2年前のバルセロナは、ラファエル・ナダル(スペイン)…

 スペイン・バルセロナで開催されている「バルセロナ・オープン・バンコサバデル」(ATP500/4月24~30日/賞金総額232万4905ユーロ/クレーコート)。

   ◇   ◇   ◇

 2年前のバルセロナは、ラファエル・ナダル(スペイン)がその衰弱ぶりを露呈した大会だった。彼はフォアハンドを振り切ることすらできずにファビオ・フォニーニ(イタリア)に敗れ、すっかり自信を失った様子で「恥ずべきプレーをしてしまった」と頭を抱えた。

 昨年のバルセロナでの彼は復調のサインを見せていた。モンテカルロでの優勝で気分をよくし、用心深さを見せながらもいいプレーをし始めたうれしさをにじませていたナダルは、錦織圭(日清食品)の猛攻を交わして2週連続でタイトルを獲得。その一方で、1ヵ月後には手首の故障に苦しみ、もっとも愛するグランドスラム大会である全仏の途中棄権を余儀なくされた。

 そして今年、ナダルはよりはっきりとした復調のサインを見せている。ロジャー・フェデラー(スイス)に敗れはしたが全豪で準優勝し、モンテカルロでは史上初の同一大会での10度目の優勝を遂げ、何より故障から回復した。今のナダルの全仏に向けての野望は、より強い色を帯びている。

 それでもナダルはいつも通り、「僕は未来を占う予想はしない。それは単なる仮説であり、結局のところ何の意味も持たない」と言う。

 「僕はただ、毎日ベストを尽くすよう努めているだけだ。言うまでもなく、モンテカルロで優勝できてすごくうれしいよ。10番目のタイトルというのは誰にとっても特別なもの。今季いいスタートを切ることができて、毎週、毎日を享受している。僕は満足しているし、自信を持っている。僕はやっと、(ここ数年)至りたいと思っていた位置に立つことができたんだ。ただ未来に何が起こるかはわからない。モンテカルロからロランギャロスへのすべての大会は、僕にとって特別な意味を持つ」

 ナダルはまた、好転しつつあると思ったところで故障に泣いた昨年を振り返り、「昨シーズンに起きたことは非常にシンプルだった」と話した。

 「僕はシーズン初めにラケットのストリングスを変えたんだが、以前のストリングスに戻すまでプレーレベルを上げることができなかった。そのあとは故障してしまい、オリンピックではまったく準備をしておらず、痛みがあったから、あそこまでできたのが不思議なほどだった。全米では手首が痛くてもうプレーできなかったから、プレーをやめて回復に徹しなければならないときがきたんだと悟った」

 「それから僕はトレーニングを開始して今、ここに至った。昨年には、もちろん疑念を感じた瞬間もあったが、疑念は人を考えさせ、努力をさせるから、いいものでもあると思う。もし僕が肉体的にも精神的にも健康なら、ことはいい方向にいくと僕にはわかっているんだ」

 ナダルはこれからさらに調子を上げていきたいとする気持ちをにじませながら、こう続けた。

 「常に誰にでも上達の余地はある。人生に完璧なんてものは存在しない。スポーツの世界ならなおさらだ。僕はオーストラリアでいいプレーをしていた。そして今、別のサーフェスの期間がきた。今季は優勝するチャンスがたくさんあったが、そのときに僕よりもすぐれていた選手に対して接戦の末に敗れた。僕はただ、いい仕事を続け、故障を避けて健康を保ちたい。いい日もあれば悪い日もある。それが人生だ。そして悪い日にも勝てる選手が、よりよい継続性を持つことができるんだよ」

 ナダルはまた、モンテカルロの決勝を振り返り、「決勝ではすべてを正しくやることができた。あれは僕が今年プレーした中でももっとも完成度の高い試合だったと思う。ドライブ、バックハンド、またサーブの調子もいつもよりよく、相手を思うように動かすことができた。このレベルをキープできるよう祈るよ」と、最大級の手ごたえと次への希望を口にした。

 「何をすべきかはわかっている。たとえ、ことが期待したようにいかなくとも僕は大丈夫だ。勝とうが負けようが、それが僕を揺るがしはしない。僕は感情的にとても安定した人間なんだ。僕は地に足をつけていたい。もしここで、ことが計画通りにいかなくても、それは僕が全力を尽くさなかったからではないだろう」

(テニスマガジン/ライター◎木村かや子)