大坂なおみが、グランドスラムに帰って来た――。 今季グランドスラム初戦である全豪オープンの1回戦で、第13シードの大坂なおみ(WTAランキング14位/1月17日づけ、以下同)は、カミラ・オソリオ(50位、コロンビア)を、6-3、6-3で破…

 大坂なおみが、グランドスラムに帰って来た――。

 今季グランドスラム初戦である全豪オープンの1回戦で、第13シードの大坂なおみ(WTAランキング14位/1月17日づけ、以下同)は、カミラ・オソリオ(50位、コロンビア)を、6-3、6-3で破り7年連続の2回戦進出を決めた。



全豪オープン初戦、時折笑顔も見せていた大坂なおみ

 20歳のオソリオは、元ジュニア世界ナンバーワン(2019年9月)で、昨年4月にWTAボゴタ大会(コロンビア)でツアー初優勝した急成長中の若手選手だ。今回が全豪オープン本戦初出場だったが、失うものは何もないという姿勢で、思い切りのよいプレーで大坂に挑戦した。

 だが、セカンドサーブをベースラインの内側からリターンしたり、ドロップショットを織り交ぜて前後に揺さぶるオソリオに対して、大坂は、「いつも若手とプレーすることはタフだったりするけど、正直それほど自分を悩ますほどではなかった」と振り返り、実力と経験の差をまざまざと見せつけた。大坂は、ウィナーを19本決め、ミスは28本で多かったものの、地力が明らかに勝っていた。

 現在の大坂にとっては、体力やテニスの技術云々よりも、当面はやはりメンタルの安定が一番の課題になっていくだろう。

 2021年シーズンには、うつ症状に悩まされていることを告白し、テニスから少し離れると語るなどメンタルヘルスが心配された。

 今季、全豪オープンの前哨戦となるWTAメルボルン大会で約4カ月ぶりとなる実戦復帰を果たした大坂は、テニスを再び楽しむことを自身のテーマとして掲げている。

「今季の大きな目標はただ一つ。結果や内容にとらわれないで楽しむこと。たとえ負けても、自分のできることにトライしてコートをあとにすることです」

 さらに、プレスルームで泣かないことも目標に挙げた大坂は、コート上で再びテニスを楽しめる方法を模索しているところでもある。

 もともと結果やランキングなどを気にするタイプの人間だと自己分析する大坂だが、今はどのぐらいテニスを楽しめているのだろうか。

「私の場合、あまり深く考えないようにしています。そのことを考えると、いろいろと疑問が湧いてしまいます」

 楽しもうと意識しすぎて、逆にそれが重荷になってしまっては本末転倒だが、大坂は、勝ち負けに自分の幸せの価値を置いてしまわないようにしている。そして、テニスを楽しむために、小さな目標を立てるようにし、日記も毎日つけるようになった。さらに、今回のオーストラリア遠征では、お香とキャンドルを購入。毎朝お香を焚いて、瞑想をルーティーンとしている。

「すごく落ち着く気がするんです。テニスとは関係ないことですが。小さな目標を立てるのはいいことです。私にとって、テニスが楽しいと思えるようになってきたのは、このおかげです」

 もちろん大坂は、ディフェンディングチャンピオンとして自身初の全豪2連覇に挑むことを意識し、「少し緊張しています。ディフェンディングチャンピオンの肩書きを背負うことになりますからね」とプレッシャーがあることも受け止めている。

「3回ほどディフェンディングチャンピオンを経験していますが、一度もタイトルを守ることができていないですね。もちろんプレッシャーはあります。でも私は、この大会に参加して、いいプレーをしたいだけです。そうすれば、きっといい結果が得られると思います。さらに先へ行くことができる。もし負けたとしても、それはそれでいいんです。そこから学び、練習を続け、そして進化できればいい」

 ランキングはトップ10から落ちてしまっているが、本来の実力を発揮できれば、上位進出はできるはずだ。ただし、トップ選手同士の高いレベルでの試合になった時に、大坂のメンタルがどのぐらい持ちこたえられるかがポイントになるだろう。

 2回戦では、マジソン・ブレングル(54位、アメリカ)と対戦する。2013年に、大坂は、ITFロックヒル大会で一度負けているが、ツアーレベルでの対戦はない。

 今後、「テニスが楽しい」と心の底から思える感覚を取り戻せれば、彼女のメンタルが安定し、本来の実力も最大限に発揮できるようになるはずだ。大坂の復活ののろしが全豪オープンで上がるのか引き続き注目していきたい。