年末年始を通じて、「新」国立競技場には多くのサッカーファンが足を運んだ。東京オリンピックのメイン会場になるなど多目的で…

 年末年始を通じて、「新」国立競技場には多くのサッカーファンが足を運んだ。東京オリンピックのメイン会場になるなど多目的での使用が可能だが、サッカー観戦にも向いているとサッカージャーナリスト・後藤健生は考える。一方で、気になる点もある。新国立競技場の魅力と問題点をひも解く。

■優勝を見届けたスタジアム

 今シーズンの天皇杯全日本サッカー選手権大会の決勝は例年の元日開催ではなく、2021年12月19日に行われ、後半のアディショナルタイムに槙野智章が劇的な決勝ゴールを決めた浦和レッズ大分トリニータを破って優勝を遂げた。

 舞台となったのは、東京オリンピックのメインスタジアムとして使用された“新”国立競技場だった。

 その後、国立競技場では12月29日に第100回全国高校サッカー選手権大会の開会式と開幕戦が行われ、さらに年が明けて1月の8日には同大会の準決勝、10日には決勝戦が行われ、青森山田高校が圧倒的な強さを発揮して優勝を遂げた。

 つまり、年末年始にかけて国立競技場ではサッカーの試合が4試合行われたことになる(関東第一高校に新型コロナウイルス感染の陽性者が出たため、同校が準決勝への出場を辞退せざるを得なくなり、準決勝の第1試合が中止となってしまった)。

 新型コロナウイルス感染症の影響で一昨年から「無観客試合」も経験したサッカー界だったが、昨年12月の天皇杯決勝ではフルに観客を入れられるようになり、5万7785人の観客が集まった。さらに、高校サッカーの決勝戦でも4万2747人の観客が入った。コロナ禍前の2020年の元日には、2019年11月に完成したばかりの国立競技場で初めてのスポーツイベントとして開催された第99回天皇杯の決勝(ヴィッセル神戸鹿島アントラーズを下して優勝)での観客数が5万7597人だったから、昨年12月の決勝はそれを上回ったということになる。

■オリンピック用の特別仕様からの変更点

 僕も、もちろん、年末年始に国立競技場で行われた全試合を観戦した。

 新国立競技場で行われた2回の天皇杯決勝は第99回大会も第100回大会も観戦しているから、今シーズンの年末年始が「国立競技場初体験」というわけではなかった。しかし、2021年の夏に東京オリンピック・パラリンピックが開催されるまでは国立競技場はオリンピック用の特別仕様となっていた。その後改装されてから初の観戦というわけである。

 たとえば、東京オリンピック前の国立競技場の記者席はメインスタンドの1層目に設置された仮設のものだった。そして、東京2020大会が終了した後、国立競技場は改装されて記者席は3層目に移動した。

 1層目では視点が低すぎて試合を俯瞰的に見ることができず、かなり見にくかったのだが、最上層からは十分に俯瞰的に見ることができた(もっとも、ピッチまでの距離が遠すぎて背番号が見にくかったが)。

■さまざまな建築的な特徴

 さて、国立競技場のスタンドからはサッカー(やラグビー)の試合はどのように見えるのだろうか? そんな興味があったので、高校サッカーの準決勝と決勝の時、僕は記者席ではなく2層目のスタンドの座席で観戦してみた。

 結論的に言えば、この国立競技場は陸上競技場としては非常に試合が見やすい良いスタジアムのようだ。

 国立競技場は、たとえば木材が多量に使われているといった建築的な特徴がある(木材の使用は設計者である隈研吾氏の得意分野である)。その結果、スタンド全面を覆う重厚な屋根はかなり重量感のあるものであるのにかかわらず、木材が使用されていることで鉄骨むき出しの場合に比べて圧迫感を感じないですむ。

 そうした木材の使用や自然の風や光の取り込み方など、建築的にはさまざまな特徴がある。

 しかし、ここでは「スタンドからサッカーの試合が見やすいかどうか」という視点に限って考えてみたいと思う。

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