新年の東京に初雪が降り、まだその寒さが残る10日、成人の日、D.LEAGUE(Dリーグ)今年初の戦いとなるラウンド5が今回も東京ガーデンシアターで行われた。今ラウンドは、一席ごとに空席をキープしながら…

新年の東京に初雪が降り、まだその寒さが残る10日、成人の日、D.LEAGUE(Dリーグ)今年初の戦いとなるラウンド5が今回も東京ガーデンシアターで行われた。今ラウンドは、一席ごとに空席をキープしながらも4階席まで観客が入り、休日の開催とあって家族連れも多く、前回からさらに華やいだ雰囲気だ。またこの日は、昨年1月10日のDリーグ開幕からちょうど1年という、記念すべき日でもある。

毎ラウンド、見応えと厚みを増すDリーグだが、一周年、そしてセカンドシーズン12ラウンドの折り返し地点を前にして、全11チームのさらなる気合いが一挙手一投足からビシバシと伝わってくる大迫力の演技が披露され、外の寒気をものともせず冬のアリーナは熱く盛り上がった。

◆THE GREAT HEART of“8ROCKS” ブレイキン世界一のISSEI率いる熱き魂

■ダンスの上手さだけでは勝者になれない

毎度のことながら、Dリーグの取材に赴き、試合が開始され最初のチームの演技が始まると、つかみから惹き込まれるように魅入る演技の序盤から、必ず例外なくDリーガーの動きを見て「うまいなー」と唸ることになる。続く2チーム目の演技も始まり目を凝らす。やはり「うわ~!うまい!」と膝を打つ。慣れることが無いのだ。プロなのだから、上手いのは当たり前だと言ってしまえばそれまでなのだが、長年それなりに真剣に様々なダンスを見てきた筆者の目にも、Dリーガー達のダンスは極めてハイレベルで各ムーブメントのクオリティも高い。プロフェッショナルならではの“こなれ感”と“ぬけ感”が踊りにしっかりと搭載されつつ、その上で、鋭い動きで決める時にはしっかりと決めてくるという緩急ある素晴らしい仕上がりとなっている。例えば、ブレイキンのパワープレイ時に難易度が高い大技を音にぴったりと合わせて失敗なく決めてくる様などは、圧巻を通り越して、神がかっていると言いたくなる程だ。

このラウンド5は特に、年末年始をまたぎ初雪も降りしきるなか、全Dリーガーはそれぞれのナンバーを“実戦用に踊り込む”ために、いったいどれくらいプライベートな時間や営みを投げうって練習を重ねたのだろうかということに思いを馳せずにはいられないタイミングでの開催である。しかし、いや、だからこそなのか、いつにも増して全ての踊り手の全身全霊が込められていると感じられるナンバーを見ることが出来た。本当にどのチームからも隙なく上手く凄まじく、気迫に満ちた踊りが届けられた。

そして、この一年を通し、この戦いには上手いだけでは勝者になれないという“難しさ”があること、また観る側にとってはそれが“面白さ”にもなりうるということが見えてきた。1シーズン12ラウンドの長丁場を戦いきるという、ダンス・リーグならではの複雑ではあるが奥行きある高度な戦いが、ファーストシーズンを経て、さらに研ぎ澄まされて繰り広げられているということは、文化的な見地からも、エンタメ界におけるこのDリーグの価値がどんどん上がっていると言うことができるだろう。

■熱戦はDリーグの“厳しさ”が際立つ結果に

KADOKAWA DREAMS(C)D.LEAGUE 21-22

そんななか、今回もラウンド4に引き続いて首位争いを繰り広げたのが、KADOKAWA DREAMSとFULLCAST RAISERZだ。

KADOKAWA DREAMSは、毎回ブルーのスポーツジャケットで舞台に登場し、ジャケットを脱ぎ捨て演技に移っていくのだが、今回は前回クリスマス・イブに演じられた、女性はドレス、男性は燕尾服で正装したコスチュームとは打って変わって、全員が色とりどりの中性的なジャンプスーツに早変わり。円陣を組み、手に持っていたラインストーンのお面を顔に被ったダンサーから、順々に機械仕掛けのような不思議でコミカルな動きが始まり、細かなリズムを全身で刻みながら繰り出すムーブメントと、まるで3Dの映像のように展開する立体的で美しすぎるフォーメーションで観客の目をしっかりと釘付けにした。このヒップホップの“ニュースクール”とでも言うべき振り付けは、観ているこちら側も思わず一緒にリズムをとって動いてしまう躍動感に富み、またドリームスの新たな魅力を打ち出しながら、チームの多様性とスキルの高さを充分に表現し、ジャッジポイント72.5の最高点を獲得した。

一方のFULLCAST RAISERZは、いつもの男気にさらに力強さが上乗せされ、まさに拳を突き上げた反骨精神が具現化されたような、闘志あふれるド直球なナンバーでクランプの真髄を踊りきった。演技後、レギュラー・エンターテイナージャッジのテリー伊藤氏が「いつにも増してやんちゃなRAISERZだった」と言っていたが、あばれまわっているように見せながらも実は緻密なフォーメーションが組まれたダンスに、観る者はまるで街のギャングの闘争のさなかにいるようなアドレナリンいっぱいのリアルな高揚感に包まれた。また、クランプというジャンルが内包するひとつのテーマともいえるFAMという概念をカルチャーとして伝えたいという思いが込められた今ラウンドの彼らの踊りには、FAM、即ちファミリーとして、ひとつになって団結して戦う力の美しさが確かに宿り、光を放っていた。

FULLCAST RAISERZ(C)D.LEAGUE 21-22

Dリーグ以前は、ダンスのジャンルとしては日本ではいま一つマイナーだったクランプだが、最近はSNS等でも取り上げられるようになったというのもRAISERZの功績に他ならない。前出のテリー伊藤氏は「もっとRAISERZの持ち味を出していい、僕は演出家だから、観客の『見たい』という欲求をいつも考えるんだけど、今回も演出としてTシャツをやぶって肉体を出してもよかった」と言っていた。RAISERZとしては「出し過ぎを自粛した」とのことだったが、たしかに今回のナンバーで全員がTシャツを脱ぎ捨てていたら、会場も配信を見ているファンも「待ってました!」とばかりに熱狂したに違いない。

結果的にジャッジポイント71.5で僅差の2位となったとFULLCAST RAISERZだったが、やはりオーディエンスポイントで最高点の20点を叩き出し、KADOKAWA DREAMSを逆転し優勝を飾った。前回のラウンド4でも同様の展開でDREAMSはジャッジポイント1位から優勝の座をRAISERZに奪われているため、エンタメ界では人気も強さのバローメーターというDリーグの闘いの厳しさが際立つ結果となったが、ラウンドはまだ折り返し地点、ぜひ両チーム共に、競合チームとして今後も突き進んで行って欲しい。

■的を得た愛あるジャッジ…TAKAHIRO氏の名解説もハイライト

dip BATTLES(C)D.LEAGUE 21-22

他チームも、三味線の音に合わせて踊り、昔から忍者がこんなアクロバティックな踊りを踊っていたのでは?と思わせてしまうクールな和の世界観で会場を沸かせたdip BATTLES。高速でヘッドスピンをしながら頭でジャンプするという超人技を見せたRYOSPINと、音にぴったり合わせ床で回り続けるベビーウィンドミルを繰り出したISSEIを有するポジティブエナジーと運動量が尋常でなかったKOSE 8ROCKS。妖艶さと共に、内に強く秘めたるパワーや哀しみを情緒たっぷりに届けるBenefit one MONOLIZ。華があり、“ダンサーの格好良さ”と自分たちの魅せ方を熟知していると感じさせる現在総合1位で王者の風格漂うSEGA SAMMY LUX等々。本当にすべてのチームがダンスの上手さやスキルに留まらず、それぞれの持つ個性にまで磨きがかかり、ラウンドを経て彼らの輝きはいっそう増すばかりだ。

最後に、印象に残ったこととして、今ラウンドでゲストエンターテイナージャッジを務めた、輝かしい経歴を持つダンサー&振付家であり、大学で教鞭をとる教育者としての一面もあるTAKAHIRO氏の解説が素晴らしかったことに触れておきたい。MONOLIZを「美しい、悲しい、儚い、などの形容詞がたくさん出てくる踊り」、RAISERZを「めちゃくちゃ恰好いい! 負けて泣き、勝って泣くダンス」というように、それぞれの踊りのエッセンスを的確にとらえた言葉と共に、しっかりとジャッジの根拠となる解説を届けてくれた。出来ることなら、すべてのチームについて語られた彼の言葉を聞いてみたかった。

ゲストエンターテイナージャッジを務めたTAKAHIRO氏(C)D.LEAGUE 21-22

ダンスは見て感じて、心を動かすものではあるが、そこに的を得た愛ある言葉が紡がれた時に、より深く人々の胸に残るものとなるだろう。今回、TAKAHIRO氏の解説を聞きながら、Dリーグへの理解や、Dリーグ自体の可能性がさらに広がると感じたファンも多かったのではないだろうか? ぜひ今後のDリーグ興隆のためにもTAKAHIRO氏もレギュラージャッジとして迎えて欲しいものである。

感動冷めやらぬまま、ラウンド6も待ったなしで約2週間後の1月27日にやってくる。躍進遂げるDリーグが次回はどのような感動と驚きを届けてくれるのか、さらなる期待に胸を膨らませて待ちたい。

◆THE GREAT HEART of“8ROCKS” ブレイキン世界一のISSEI率いる熱き魂

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著者プロフィール

Naomi Ogawa Ross●クリエイティブ・ディレクター、ライター 『CREA Traveller』『週刊文春』のファッション&ライフスタイル・ディレクター、『文學界』の文藝編集者など、長年多岐に亘る雑誌メディア業に従事。宮古島ハイビスカス産業や再生可能エネルギー業界のクリエイティブ・ディレクターとしても活躍中。齢3歳で、松竹で歌舞伎プロデューサーをしていた亡父の導きのもと尾上流家元に日舞を習い始めた時からサルサに嵌る現在まで、心の本業はダンサー。